親しい友達が、みんな幼なじみみたいな厄介さをしっかり持っていたようです。私の安らげる場所は、あの方の側しかなくなりました

珠宮さくら

文字の大きさ
8 / 16

しおりを挟む

その後のことをヴィリディアンは、だいぶ後になってから聞いた。

なぜかと言うと……。


「ヴィリディアン嬢。もう、大丈夫なのか?」
「はい」


ディリッパと婚約者やヴィリディアンの友達は、ぶっ倒れたヴィリディアンを見ていたこともあり、ホッとした顔をしていた。色んな人たちに迷惑かけて、心配させたことヴィリディアンは謝っていた。

でも、ヴィリディアンは顔に出さないだけで、まだ疲れていることがあった。

カマルが返り討ちにあった後で、ハーサン公爵家も大変だった。ラジェスが、倒れたヴィリディアンを抱きかかえて帰宅したことで、大騒ぎになったのだ。ならないわけがないが。


「何があったの?」
「熱があるのに無理をしていたようです」
「なんてことなの。すぐに医者を呼んで」


医者は、過労と心労のところに風邪を引いたと診断した。

ヴィリディアンが目を覚ましたのは、倒れて2日後で、熱が中々下がらずに大変だった。

そのため、カマルがどうなったかを聞いたのは、完治してからだった。

まぁ、簡単に言うとダブラル子爵家は養子で跡継ぎにしていたカマルをあっさりと勘当した。

ダブラル子爵夫妻は、ヴィリディアンにどうにかしてもらおうとしていたようだが、ぶっ倒れていたこともあり、頼れないとなって保身に走ったようだ。

学園に通うまで、ゆっくり養生するように言われたため、婚約者のアビシェクがハーサン公爵家によく見舞いに来てくれていた。


「そんなことになっていたのか」
「勝手に私がしていただけです」


そこから、アビシェクは忙しくしていたことを話すか悩んでいるように見えた。


「アビシェク様? 何かあったのですか?」
「……兄上の具合が思わしくないないんだ」


アビシェクの兄は、1人しかいない。王太子殿下だ。病弱な方で、王太子になるのは無理だからと第2王子である弟のアビシェクが王太子になるべきだと言っていたのをアビシェクが頑なに譲らずに王太子が、第1王子となっていた。


「でしたら、王太子の側にいてください」
「……兄上は、ヴィリディアンのことを心配しているんだ。兄のことより、婚約者を気にかけてくれと言われてしまった」
「……」
「だから、ここにこさせてくれ」
「……私にできることは?」
「元気になったら、兄上の見舞いに来てくれ」


ヴィリディアンは、それに笑顔になった。


「えぇ、必ず」


そんなことを約束したのもあり、ヴィリディアンは元気になるなり王太子の見舞いに行ったのだが……。


「やぁ、ヴィリディアン」
「こんにちは。王太子殿下」
「うん。こんにちは」
「……」


ヴィリディアンは、具合があまり良くないと聞いていたのだが……。


「元気そうですね」
「うん。ヴィリディアンが、お見舞いに来てくれると聞いてね。楽しみだなと思っていたら、元気になってたんだ」
「……」
「不思議だね」
「……」


チラッと見るとアビシェクが、何とも言えない顔をしていた。


「それで、ヴィリディアン」


にっこりと笑っている王太子だったが、急に部屋の気温が下がった気がした。

あ、まずいやつだ。そう思ったのは、ヴィリディアンだけではなかった。既にアビシェクは避難していた。

ヴィリディアンは、王太子に説教されることになったのだ。それこそ、アビシェクが全部話したのかと思えば、そうではなくて倒れたと聞いてから調べさせたようだ。

王太子の説教は、中々だった。

それが始まったとわかって、アビシェクに置いて行かれたのも、ヴィリディアンは根に持っていた。根に持っていたとしても、相手は王子だ。

無視するなんてことも出来ずにいざとなったら置いて逃げる方というのが頭に残った。

更にこれまでのことで、幼なじみの時でも助けを求めて来たのを思い出し、情けないところしか見たことないなと思い始めていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

悪役令嬢は断罪されない

竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。 王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。 私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!! だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。 おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。 2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます! →続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751 →王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

処理中です...