親しい友達が、みんな幼なじみみたいな厄介さをしっかり持っていたようです。私の安らげる場所は、あの方の側しかなくなりました

珠宮さくら

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ラジェスが婚約した令嬢の祖国ではなく、別の国にヴィリディアンは留学していた。

色々ありすぎて、ヴィリディアンは人間不信気味になっていた。無理もないが、王太子のことを友達にもヴィリディアンはできなかったし、養父母にも、義兄にもできなかった。

みんな、病弱だったのが治ったと思っていて、ヴィリディアンが知ってしまったことを話しても、すぐに信じる人はいなかったのだ。

それに友達が、王太子と婚約したのに水をさせるわけがなかった。

……それを見越して、王太子がヴィリディアンの友達を選んだのではないかとすら思っている。


「ヴィリディアン様、ご一緒にお茶でもどうですか?」
「いえ、私……」


暗い顔をしているのか。留学してから、色んな人たちに声をかけられていた。

養子とは言え、ハーサン公爵家の令嬢とお近づきになりたいのもいるようだが、気にかけてくれている令嬢の誘いを断るのは大変だった。


「王女殿下が、ご気分がいいとおっしゃっているんです。あなたのことも、気にしておられたから、ぜひ紹介させてほしいの」
「王女殿下が?」


最近、婚約者を事故で突然亡くした王女は、部屋に閉じこもっていた。

幼なじみ同士で、相思相愛だったらしい。

そんな王女が、色々あったヴィリディアンのことを耳にしたようだ。確かに数カ月の間に目まぐるしいことがあった。でも、誰も死んではいない。

ヴィリディアンの心が壊れそうになっているだけだ。

そんな状態で、ヴィリディアンは王女に会った。お互い、壊れそうなことが手に取るようにわかった。

お互いに何があったのかをざっくり話すはずが、いつの間にか全部をさらけ出していた。

2人っきりで、お茶をしながら話すまでになるのは、すぐだった。


「ヴィシャ国の王太子って、病弱って聞いていたけど、最低すぎるわ。それにその弟も、2人して、ヴィリディアンを何だと思っているのかしら」


プンプンと王女は怒っていた。

幼なじみや男爵令嬢だったのやら、実家の跡継ぎになった子息のことやら、王女は自分のことのように怒っていた。

ヴィリディアンは、そこまで怒ってくれたのは初めてだなと見ていた。

逆に王女の話す亡き婚約者の話にヴィリディアンは、号泣した。


「ヴィリディアン。そんなに泣かないで」
「ううっ」


泣きすぎて、王女に慰められてしまったほどだ。あんなに泣いたことはない。

そこに王太子が、妹を心配して現れたのだが……。


「ど、どうした?」
「お兄様! ヴィリディアンが、泣きやんでくれないの」
「お前まで、つられて泣くな」
「……何をしているの?」
「は、母上。それが……」
「可哀想に王太子にいじめられたの?」
「なっ、」


違うんだとわたわたする王太子を面白がる王妃と王女と色んなことにびっくりして、泣きやんだヴィリディアンがいた。


「っ、あ、こ、これを」


泣きやんだヴィリディアンに王太子はハンカチを押し付けるように渡してきた。

これが、留学先で出会った王太子との初対面だった。


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