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それから、ヴィリディアンは留学先で新しい婚約者ができた。この国の王太子だ。
そのまま、お妃教育が始まったため、留学が延長されることになった間にヴィシャ国では、色々とあった。
「え? 王太子の婚約者が、亡くなった……?」
「君の友達ではなかったか?」
「っ、えぇ、友達です。でも、どうして?」
「……あちらの王太子が風邪を引いたのを看病していて、婚約者が風邪を引いたらしいが、王太子が同じ風邪ならと自分の処方されていれ薬を婚約者に渡したのが、特殊なものだったようなんだ」
「……」
それを聞いてヴィリディアンは、わざとではないかと思ってしまったが、葬儀や告別式にヴィリディアンは出席したが、どうにも王太子が何かしたようには見えなかった。
あれが、演技だとしたら……。いや、やっぱり、本気で亡くなった婚約者を大事にしていたのだろう。
「ヴィリディアン。戻ってたのね」
「えぇ」
「……あの子、しばらく前までヴィリディアンに会いたがっていたのよ」
「私に? どうして?」
久しぶりに会った友達にそんなことを言われて、驚いてしまった。
「あなたが、王太子と婚約したかったんじゃないかって気にしていたのよ」
「は? え? 何で??」
そんな風に思われていたとは思わなかった。物凄く驚いてしまった。
「最近は、やっぱり勘違いだったってわかったみたいだけど」
「……」
なんか、複雑なことを言われた気がする。どう見ても王太子は、急死した彼女の死を嘆き悲しんでいる。
あれだけ大事にされていたのなら、疑うことはないはずだが。
だが、話すなんてもうできない。ヴィリディアンが、友達に言いたかったのは、そんなことではない。言わなくてよかったと思う反面、言っていたら、こんなことになっていなかったのではないかと思えて、ヴィリディアンはモヤモヤしたまま、留学先に戻った。
ハーサン公爵家でも、ヴィリディアンのことを気にかけてくれている家族に優しくされれば、されるほどにしんどくなってしまい、お妃教育で忙しいからと戻ることにした。
もっとも、ずっとは行っていられないから、延長されたギリギリまでいて、戻って来ることになるが、それまでは今回のことは不慮の事故だと思うことにした。
戻ったヴィリディアンに王女は、自分の親友を亡くしたかのように寄り添ってくれ、婚約者の王太子も同じだった。
王妃も、王太子をからかうのを控えながら、ヴィリディアンを気遣ってくれて、国王も若い頃に親友を亡くしたことを話してくれたりした。
学園でも、同じように大事な友達を亡くしたヴィリディアンが気を遣うような優しさを見せないようにしながら、気にかけてくれていた。
それにすっかり慣れた頃に留学を終えて戻ることになったヴィリディアンは、とんでもないことになるとは思いもしなかった。
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