存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら

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兄が言うには王太子と姉は周りにひた隠していたが、昔から相思相愛の仲だったようだ。

確かに王太子も、兄には劣るが美男子で姉と並んで歩けば、美男美女に見えるだろう。

でも、兄と一緒の時の姉の方が、もっと輝いて見える。王太子は、なんというか、私からしたら姉の婚約者にはイマイチな気しかしない。

その点、マルティナはそんな王太子と丁度よく見える。つまりは、マルティナはそんな感じの見た目の令嬢ということだ。


「そうなんですか? でも、何で隠しているんですか?」


私は、隠す理由が見当もつかなかった。すると兄は苦笑していた。


「あぁ、そこからなんだな。王妃と母上があまり仲がよくないんだ」


それを聞いて私は目をパチクリさせた。この家で母の話題はあまりされない。好き勝手なことをして、5人の子供がいるとは思えないほど、奔放にして過ごしているからだ。

だが、それで子供たちが不平不満を口にしたことがないのは、居なくとも対して影響がなかったからだ。

父が、そんな母を放置しているのも、言っても聞き入れはしないと思っているからのようだ。

そもそも、風邪を引いた子供たちの側に絶対に近づかないようにするのに。自分が風邪を引くと、家族なのに見舞いにも来ないと騒ぎ立てるのだから、おかしな人だ。

そんな風に夫婦生活が破綻しているようで、5人の子持ちなのだから謎だが、数年に一度だけ新婚の頃に戻るように盛り上がるせいで、こうなっているのを耳にしたことがある。

多分、本当のことなのだろうが、そのせいで離婚しないのだとすると我が家がどれだけ特殊なのかと思ってしまうのも無理ないと思う。

っと、そうではなかった。王妃と母のことに話を戻そう。


「……それ、初耳です」
「あまりとは、優しい言い方だと思ってくれていい」
「……よほど何ですね」


だが、そんな風に母親同士が仲良くないのもあり、気軽に婚約することは叶わないとして、泣く泣く一度は別れたようだ。

姉の涙は、男性たちが黙っていなさそうな破壊力というか、効力がありそうだ。

でも、それを正しく理解するのは至難の業だろう。現に私は、身内なのにこのザマだ。


「別れたんですか?」
「そこまで、仲良くないんだ。今は、もっと酷い」
「……」


だから、別れたのだが、離れようとしても駄目だったようだ。

お互い婚約者ができるまでと言うことで内緒で付き合っていたと兄に聞いて、色んなことにびっくりし過ぎてしまった。

それこそ、誰にもバレずに付き合っていたようだが、王太子の側近をしている兄が気づかないわけがなかった。

それでも、気づいていながら、兄は誰にも知られないように上手く妹と王太子の恋愛を隠していたようだ。

隠し続けても、それが幸せな結末にならなくとも、束の間であろうとも幸せな状況を長く保ちたかったようだ。

どんなに母親に似ていても、王太子の婚約者になるのは難しいと思ったのだろう。そんな王妃にとって、仲良くない女にそっくりな令嬢だ。

どんなに王太子が婚約したいと言っても、王妃がどんなことをしてでも、婚約てまきないようにしていたはずだし、母も同じくどんなに娘が婚約したがっていても、あの女の息子でしかないのだ。婚約させまいとして、大変なことになるのは明らかだとして、婚約は夢のまた夢と思っていたようだ。

それでも、淡い希望は持ち続けていた。それをぶち壊したのが、マルティナだと言うのだ。

元より叶わない想いだとわかっていたはずなのに不思議だと思っていたら、マルティナは姉が王太子と付き合っているのを知っていて、それを王妃に告げ口して取り入って、王太子と婚約したというではないか。

初耳のオンパレードに私は、熱がぶり返しそうになっていた。頭の中が大忙しになっていた。


「マルティナが、そんなことを……?」
「そうだ。お前の幼なじみは、ジュリエッタを踏みつけて王妃に気に入られ、更にはジュリエッタのことを誤解させるようなことを王太子に言い続けて、疑心暗鬼にさせたんだ」
「っ、」


幼なじみの要領の良さは昔からよく知っていたが、そんな風に人の気持ちを踏みつけるだけ踏みつけて、更には利用できる者を利用して、姉の心をズタボロにしたとは思わなかった。

それを耳にするたび、兄は王太子に姉のことを誤解させまいとしていたようだが、王太子が最終的に信じたのはマルティナだったようだ。


「お姉様」
「お前の具合の悪いのを気にしていたが、会うとどうしてもお前の幼なじみの顔がチラついて駄目だったようだ」
「……そうでしょうね」


幼なじみとは、ずっと仲良くしていた。でも、そんな要領の良さを発揮するとは思わなかったのだ。そんなのを要領がいいとは言わないのかも知れない。

あれは、本心からだったのだ。

“あの令嬢が、王太子と婚約するなんて、世も末ね”


確かにそうだ。兄の言葉を聞いて、姉が嫌味なことを言うのにショックを受けてしまったが、問題は幼なじみだったのだ。

私がマルティナと仲良くしているから、言えなかったのね。……悪いことをしてしまったわ。

でも、そんなマルティナにコロッと騙されたのだとしたら、その程度ということではなかろうか。


「だから、私も側近を辞めることにした」
「……そうなんですね」


だから、私のところに顔をよく出してくれる余裕があったようだ。

それもそうだろう。側近とは言え、兄があれこれ言っていたのも信じはしなかったということなのだ。

相思相愛なはずの令嬢の言葉だけでなくて、長年側近をしているというのに王太子が信じたのは、マルティナだったのだ。

そんなのの側近を続けたいと思うわけがない。私だって嫌だ。姉を悲しませておいて、別の女にころっと騙されて、そちらを信じるのだ。二度と信用したくない。


「そもそも、母上の機嫌が悪いままだったからな」


兄がぼやくのを聞いて、私が思ったのはこんなことだった。


「お兄様に話しかけるのがめっきり減ったのって……」
「それだ。やはり、あれはあからさすぎたからな」
「大人気ないですね」
「そうだな。それにジュリエッタは振り回されたようなものだが、コロッと騙されるようなのと婚約しても、あっさりと浮気されそうだから、婚約する前でよかったようにしか私には見えないんだがな」
「私も、そう思いますけど。お姉様の気持ちを思うと……」
「腹が立つよな」
「えぇ、物凄く立ちますね」


なんて言いながら、兄もヒートアップして王太子のことをボロクソに言い出し、色々溜まっていたようだ。

私も、マルティナのことで要領がいいと思おうとしていたが、散々な目にあったことを思い出して、やっぱり要領がいいとは違うなと思うようになった。

そんなことをしたのが悪かったのか。熱が上がって、お見舞いが家族でも禁止となったのは仕方がないと思う。


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