姉が年々面倒になっていくのを弟と押し付けあっていたのですが、手に負えない厄介者は他にいたようです

珠宮さくら

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留学を終えて家に早めに戻ったシュリティは、色んなことに驚くことになった。


「え? お姉様が勘当された……??」
「……白々しいね」


戻ったら、弟が凄い顔をしてシュリティを見て、そんなことを言って来た。

そんな顔も目もされたことは一度もなかった。もう何を信じていいかわからない。そんな風に見えた。


「え? いや、白々しいって、ラケシュ。私は……」
「何も知らなかったなんて言わないよね? あの人の話、いつも聞いてたの姉さんじゃん」


あの人。チャーヤのことを姉だと思いたくないかのように他人行儀な呼び方をラケシュはしていた。

そんな呼び方をシュリティは、留学する前まで聞いたことはなかった。まるで、自分の姉は、シュリティしかいにいないかのように見えた。

それが。あまりにも痛々しく見えてシュリティは弟が心配になってしまった。


「? 友達と出かけた話のこと?」
「はぁ? 友達なわけないだろ!? 婚約者のいる子息と出かけてたんだよ!!」
「っ!?」


弟が激怒している理由が、シュリティは最初は全くわからなかった。

よくよく聞けば、チャーヤが弟妹たち聞かせていたのは、友達と出かけた話ではなくて、婚約者のいる子息とデートしていた話だったようだ。


「ちょっ、待って! 異性となんて出かけていたなんて知らないわよ!!」
「……」
「名前すら聞いてなかったし」
「……」


じと~っと恨みがましい目を弟は、シュリティに向けていた。

こんな目で弟に見られる日が来るとは思っていなかった。そんなことをする姉だと思われていたことにショックでもあった。


「お姉様は、なんて言ってたの? 私に全部話したとでも言ってたの?」
「……」


腹を立てているラケシュに強く言い返すことなく、柔らかな声音で尋ねた。すると、少し落ち着いたように睨むのをやめて俯いた。


「……ううん。そもそも、あの人、婚約者のいる子息と浮気している気がなかったんだ」
「は……?」


ラケシュは思い出すのも嫌そうにしながら、勘当されたチャーヤのことを話してくれた。シュリティが、本当に知らないようだとわかったからかも知れない。

こんなことで、嘘をつかないのを弟は知っていたからだろう。全部を仕組んでいたら、こんなタイミングで戻って来たりしない。

シュリティが留学してから、ラケシュは姉の思っていた方向ではない。予想外の方向に進んでいたようだ。

それこそ、ラケシュも最初のうちは、留学はシュリティの仕返しだと思っていた。そこまでは、まぁ自分もシュリティに厄介な姉を任せっきりにしていたから、仕方がないかと思っていたが、数日で音を上げたくなるくらいの酷さだったのには、驚かされたようだ。

姉は、こんなのに付き合わされていたのかとラケシュがげんなりしたのも、すぐだった。それでも、弟に対して、毎回見捨てたなとシュリティはそのことで怒らなかったのもあり、仕方がないと思っていたようだ。

それが、ある日、とんでもないことが起こったのだ。


「チャーヤ! お前は、なんてことをしてくれたんだ!!」
「っ、いきなり、何ですか?」


両親が珍しく揃って帰って来て、チャーヤに付き合わされていたラケシュも久々に両親を見て何だ?と言う顔ををした。説明もなく、怒鳴りつけたのだ。

滅多なことでは、顔をあわせても挨拶すら返さない両親に姉弟は、何事だと思ったのも無理はない。


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