歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

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『隠された皇女』

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ハオランの兄が色々と掛け合ってくれたから、子供たちが1日1食でもまともなご飯を食べられるようになった。

リーシーの父の料理屋以外でも、賛同して食べられるように工夫してくれるところも増え始めた。

それなのにあの子たちは、ちゃんと仕事を見つけて働いているのだ。その子たちの中に親がいるなら、その親が情けないと言われ始めている。

それで恥をかいたとかで、ここに乗り込んで来て余計なことするより、その分の金を寄越せとたかりに来たのは、リーシーの父親や常連の強面に説教されて、ビビり倒して来なくなった。

それどころか、大人である親が情けないと働けと連れ出されて、渋々働き始めている者もいる。


「すげぇのが、常連になったな。お嬢」


強面の男性は、しみじみとそんなことを言ってきたのに苦笑せずにはいられなかった。

ここに他の客がいたら、あんたが言うことじゃないと言っているところだ。


(皇太子なら、あんまり関わりたくないな。もう、来ないで別のお店に通ってくれないかな)


リーシーは、なぜか、そんな風に思っていた。皇族に関わりたくはなかった。でも、皇女には会いたいと思っている矛盾が、リーシーにはあった。


(わけのわからない感情だわ)


そんなことをあれこれ考えながら、リーシーは考えるのをやめた。


「そうだね。……あれ?」
「どうした?」
「あー、若様の忘れ物みたい。義父さん!」
「あ? どうした?」
「ねぇ、これって」
「っ、落としてったのか。抜けてるな」


義父は、元武官をしているから身分に応じた通行証は、それなりに知っている。リーシーも、ジュンユーの婚約者の爆弾が投下されていなければ気にもしていなかった。


「……どうしよう」
「届けてやるしかねぇな。知り合いでもなきゃ、これがないと、あそこを出入りする時に捕まる可能性もある」
「っ、私、ちょっと追いかけて来る」
「お嬢、俺も着いてくか?」
「平気!」


(てか、着いて来られたら、バレる)


ちらっと義父を見て小さく頷いて、こう言った。


「お前は、裏の建て付け悪いの直してくれ」
「は? こないだ直しだろ?」
「更に建て付け悪くなってんぞ」
「っ、」


そんなことを言われて、んなことねぇだろと見に行って、マジかよ。これ、俺じゃねぇぞとブツブツ言っているのにリーシーの義父は、ため息をついた。

そこにジンリーが現れた。


「あら、リーシーは?」
「客の忘れもん届けに行った」
「忘れ物?」


ジンリーは首を傾げたので、腰を抱き寄せて耳元で話すと驚かれた。抱き寄せたことでも、耳元で話したことでもなく、ジンリーは別のことに驚いていたのだが……。


「っ、おい! 人に戸を直させといて、いちゃついてんなよ!」
「あ? 空気読めよ」
「てめぇーは」
「その人、リーシーのこと、聞いてきたの?」
「……いや、どっちかつうーと飯目当てだ。お付きの奴は、婚約者のことを相談しに来てる」
「……」


ジンリーは、不安そうな顔をした。でも、そんなわけないと思っていたら、あの若様とお付きと一緒にリーシーが皇城に入って行ったと駆け込んで来た常連の言葉にジンリーが気を失いかけた。


「ジンリー!」
「リーシーが、そんな」
「迎えに行って来る」
「私も行くわ」


それを止められはしないと顔を見て、夫はわかった。何が何でも連れ戻すという顔をしていた。

こうなったら、何を言っても聞かないのは、昔からだ。

それに無害だと思っていたが、これが罠だったのなら、リーシーを連れ戻すために暴れ回ることもやぶさかではない。


「俺、みんなに声かけて来る!」


強面やここに駆け込んで来た常連は、大慌てで出て行った。


「あの子に何かあったら……」
「わかってる。俺がぬかった。んな、連中には見えなかったんだ」
「なら、皇城で何かあるのよ」
「……そうか。なら、益々、迎えに行ってやらないとな」
「そうね。……私に何かあっても、あの子をお願いね」
「んなこと約束させんな。どっちも、守ってみせる」


リーシーは、とんでもない忘れ物を届けに行っただけなのにそれを忘れた人物によって皇城の中にいたのは、計画されたものではなかった。

わざとではないが、彼はこの国に最善のことを無意識にしてしまっていただけだったが、これがわざとだと認定されたら、リーシーの義父に恐怖を植え付けられるところだったことを彼は知ることはなかった。


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