歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

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『隠された皇女』

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「あの!」
「ん?」
「リーシーさん?」


リーシーは、息を切らして追いかけていた。


(というか、この2人なら目立つ道は通らないとか思っていたのに物凄く目立つ道を歩いているとは思わなくて、探し回ってしまったじゃない!)


なのに息を切らしたリーシーを見ても、わけがわからない顔をしていた。


「どうした?」
「こ、これ、忘れてます」
「げっ」
「若様」
「っ、す、すまん」
「いえ、それじゃ」


(さっさと帰ろう。私は、何も知らない。見ていない)


リーシーは、何も見なかったことにしようとしたのだが、若様はそうする気がないようだ。


がしっ!


「……あの、何か?」
「あ、いや、その、これは、その」


腕を掴まれて、何かを言おうとしていた。


(これ、聞きたくないと思うのは、不敬になるのよね? 空気、読んで。私は関わりたくないのよ)


そんなことを思っているとリーシーの足から力が抜けた。


「っ、」
「大丈夫か?」


若様は、痩せているように見えてリーシーを支える腕力はあったようだ。もたれかかっても、難なく支えられた。


「若様が、引っ張るからでは?」
「え? わ、悪い」
「いえ、急に力が抜けてしまって……」


そこに各地から天変地異が起きている知らせがあり、早馬で報告をしに来た者が慌ただしく皇城に入っていた。


「っ、そういうことか。ジュンユー! 彼女を運べ!」
「は?」


あまりのことに思わず、何言ってんだ、こいつ?みたいな顔をしていた。ジュンユーだけではない。リーシーも同じ顔をしていたはずだ。


(なぜ、そうなるのよ)


「皇女のところに行く」
「……彼女を連れて行くと?」
「そうだ」
「……え? いや、何で??」


リーシーは、連れて行く理由がわからなかった。天変地異が起こっているのなら……。


(私は、邪魔になるはずだ。私は……)


そう思いながら、皇城を見つめた。


「お前、知らないのか?」
「? 何をですか?」
「……天変地異が起こっていて、何とも思わないのか?」
「それは……」


リーシーは身体から、変に力が抜けた感じがしたが、今は感じない。走ったせいではなかろうか。


「居場所を求めているだけですよ」
「居場所……?」


ジュンユーは、何を言っているんだとばかりにした。


「……やっぱり、わかるんだな。ジュンユー」


何度も言われればジュンユーもわかる。運ぶ気でいれば、リーシーに嫌そうな顔をされた。それをされると好みの女性でなくとも、傷つく。


「いや、何で運ばれる前提なんですか。走ります」
「ちょっとの間だ。門をくぐるのに具合を悪くしたのを見つけたと言って、中で侍医に診せると言って通る」
「……」
「できる限りぐったりしろ」


(そう言われてもなぁ。ジュンユー様の婚約者に申し訳ない)


そんなことを思いつつ、渾身のぐったりを披露した。いつもの加減をすっかり忘れた。


「可哀想にすぐにお通りください」
「おい、今はそれだけじゃ」
「だが、どう見ても、死にそうじゃないか」


門番たちは、そんな話をしてリーシーがいても通してくれた。

そこからしばらく、ジュンユーに運ばれていたら……。


「リーシーさん、それ、死んだふりになってます。息はしていてください」


リーシーの渾身の演技にダメ出しを食らったが、本当に具合悪く見えたのか。物凄くいい人だったのか。

すぐに通してくれたのは、若様の身分証のおかげもあったようだ。


「死んだふりは、もういいぞ」
「違います。渾身のぐったりです」
「なら、そこまでじゃなくていいから、しがみついておけ。走るぞ」
「ちょっ、私、走れます!」


ジュンユーに抱っこされたままは嫌だと暴れた。


「わっ、ちょっ、危ないから待って。怪我させたくない」


そう言って、おろしてくれた。ジュンユーは、そういう人のようだ。


(自分の足で立つって、こんなに違うのね)


トントンとつま先を地面につけた。足の感覚も問題ない。ならば、さっきの力が抜けたのは、なんだったのか。


「いや、だが、後宮まで、だいぶあるぞ」
「? 何、言ってるんですか。皇城の陛下の側に行けばいいんですよ」
「……そこに皇女がいると?」
「そうですよ」
「「……」」
「?」


リーシーは、なぜわかるのかがわかっていなかった。しかも、あっちと指さしたのは、確かに皇帝の執務室だった。


「行くぞ」


もう、会話しても理解の範疇を超えるとなり、3人は走り出した。

リーシーたちが走っていると色んな情報が飛び交っていた。


「陛下の近くにいるっていうのは、本当みたいだな」
「あれ? 疑われてました?」
「いや、だって……」
「?」
「いや、何でもない。転ぶなよ」


そう言って彼が思いっきり転んだのは、内緒にしておく。

リーシーとジュンユーは、必死に明々後日の方を向いた。若干、ジュンユーが肩を震わしていたから、笑っていたのだろう。


「痛っ!」
「行くぞ」


お付きに八つ当たりして再び走り始めた。


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