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エピローグ
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しおりを挟むファバン国で大昔に皇帝に娘が生まれた。
その皇女たちは、それぞれ色んなことに秀でていて、心がとにかく透明で、それを体現したかのように美しい女性として成長した。
心が美しいからこそ、姿形も美しい。まるで、天女のような娘となり、皇帝も、2人の母親も、その国の国民みんなが、自慢していた。
あまりにもそっくりな見た目から、いつしか双子のようと言われていたのが、双子と呼ばれるまでになり、そしてあまりにも似すぎているが故に争いの火種となってしまった。
どちらの母たちも、自分の娘こそ、一番だと思うようになり、娘たちが相手の娘と仲良くするのを良く思わなくなり、遠ざけようとしたのだ。
片方は、それで母が人を悪く言うのが見ていられなくなり、その通りにしたいと言うのにもう片方も、それに納得した。その前にお互いが幸せになることを願った。
2人には不思議な力があって、それが叶うまで終わらないものとなったが、その時はこのあと待ち受ける悲劇によって、この誓いのような願いが呪いのようにつきまとうことになるとは思いもしなかった。
もっとも、2人はこれを呪いとは思うことはなかった。そのおかげで、相手が幸せになるまで終わらせられないことにある意味、おかしなことに意地になっていた。
「絶対に幸せになってもらわなければ」
「彼女こそ、幸せになるべき人なのよ」
本当に想い合っているからこそ、幸せになってほしいのだ。自分より幸せになってほしいが、それでは終わらない。
どちらも幸せにならねば、心が引き裂かれるように痛む。だから、どちらも幸せになるために2人は生まれ変わり続けた。
歴史の中で、幾たび生まれ変わっても、どちらかが皇女でなければ、上手くはいかなかった。
なにせ、国民が皇女のために祈りと感謝を捧げているため、それに応えなければならなかった。
「やめてくれと言うわけにもいかない」
「自分たちと周りをみんなが幸せにしたら、誰かに頼らなくとも幸せになれるのに」
でも、どちらも皇女だと知れ渡れば、これもまた最初と同じようになった。
そんな中で、皇女なのを隠して皇子となったこともあったが、上手くいくことなく、その時は皇子たちが争い皇帝となるための権力争いに巻き込まれて殺されることになった。
だから、どちらかが隠れる必要があり、もう一方は上手く生き延びて街を良くした。
「次こそは、会えずとも、幸せになってほしい」
「一目も会えずとも、彼女に幸せになってほしい」
そんな2人の強い思いと願いによって、幸せに近づいていると思いたかった。離れて行っているようでいて、自分たちが犠牲になって悪く言われようとも、よく言われようとも、2人の願いの本質はお互いが幸せになること、それだけだった。
そのことを2人以外が知らないことで、勘違いとすれ違いが起こっているのだが、それを正そうとしてもあまりにも歴史が歪められてしまっていて、本当にあったことが、嘘のようになってしまい、語り継がれるものが真のようになってしまって、益々2人の幸せが遠のきかけていた時に1人が母と父の皇女の両親になりたいと思う者の娘となり、もう1人が残された歴史からどちらも犠牲になった者として、どちらのことも悪くはない皇女として、自分が産んだ娘を守り、そしてもう1人の皇女をも守ろうとした。
それによって、悲恋のように見えて、2人は想い人と幸せになれた。
そこにたどり着くまでにどれだけ生まれ変わってきたことか。
それすら、ファバン国の者で知る者はいなかった。この2人もまた、今回は出会うことも、話すこともできなかったことで、これまでのことを思い出すことができなかったが、それでも周りが束の間と言える時間を幸せだと思えた。
でも、そのことをちゃんとわかってくれる者は一握りしかいなかったが、2人は確かに幸せになれた。
お互いが幸せになれたら、それでよかったでは終われない。2人が幸せにならねば、終われない。終わらせられないとして、この皇女たちは必死に生まれ変わり続けていた先で、出会えないまま終わることなっているが、悲恋のようであって、生まれ変わり続けた先の未来に希望が必ずあることをこの2人だけは信じていた。その絆を残したい。
とある親子が、こんなことを言っていた。2人の皇女が亡くなった話を聞かされたのだ。幼さが残る子供たちには納得いかない終わりだった。
「父様。これのどこが幸せなの?」
「ずっといられないのに幸せなんて変だよ」
父に皇女たちの話を聞いていた子供たちが、ムッとして不満そうにした。
「そうか? ずっと一緒にいられたからって、幸せとは限らないぞ。始まりには、終わりがつきものなんだ。終わりがなければ、どんな物語も始まらない。次が始まるために終わらせることも必要なんだ」
そんなことを言って子供たちに語る男は、優しい目をしていた。
皇帝は、2人の妹の墓参りをしていた。
「何もしてやれなかった」
「陛下。少なくとも、こちらの皇女様は、あなたに幸せにしてもらわなくとも、自分で幸せになるか心配する必要はないとお答えになられるかと」
「……そうか。そうだな」
皇太子の時から一緒にいる護衛の言葉に皇帝は笑った。
もう1人の皇女とは、後宮でそれなりに会う機会もあったのに頼られたこともなかった。
「どちらも、幸せにしてもらうのではなくて、幸せになるために奔走していたな」
こんな風に情けない顔などしてはいなかった。生まれ変わり続けても、たとえ言葉を交わすことがなくとも、変わらず幸せであり続けようとはせずに相手を気遣い続けた。
「そんな風に皆がなれたら、犠牲になる者もいなくなるな」
誰かを犠牲にしなければ保てない国より、皆がそれぞれを背負って負担すればいいのだ。
そんな思いを残された皇帝は、それを使命として国を変え続けた。
各国で天変地異が横行して、ファバン国でも起こり始めていくことになっても、ここではなく別の場所で生きられるように彼の後の皇帝たちは準備を続けた。
それによって、国が沈むことになっても多くの国民が他に移り住むことができた。
その要となっていたファバン国を皇女たちが、不思議な力で守り続けていたことを知る者は少なかったが、それでも生まれ変わっていない時でも、生まれ落ちている時でも、2人の皇女は自分たちが幸せになることを願いながらも、無意識のうちに皇族として、役目を続けたからこそ、多くの者が助かることになった。
だが、その頃には、2人の皇女がそこに関係していたことを知る者はいなくなっていた。
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