空のない世界(裏)

石田氏

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《第1幕》1章 名も無き世界

01

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 20XX年、日本都市である東京上空に突如、亀裂が走った。その異変に都民は徐々に空を見上げていった。写真を撮る者、Twitter等に載せる者、電話する者、それぞれの反応があった。そして、それに期待するかのように、空の亀裂は激しさを増し、遂にガラスが割れたかのように、空がパリンとガラスの欠片となって落ちていった。そして、空に残ったのは真っ黒い穴だった。真っ黒なのか、真っ暗なのか、どちらの表現が正しいのかわからないが、間違いなく今、こうしておかしな現象が起きたのは間違いない。
「なんだアレは」
「何が起こっているの?」
「おい、何かあるぞ」
「女の子?」
「え?マジかっけぇ。空飛んでるじゃん」
「人が空飛ぶわけないじゃん」
「お前の目は節穴か」
「あれ?一人じゃないみたいよ」
そこには、空を飛んでいると言うより浮いている少女が何人かいた。
一人は金髪の少女。
一人は銀髪の少女。
一人は眼鏡を掛けてこちらを見ている少女。
一人はピンクのパーカーを着ていて、イヤホンをしている少女。
一人は大剣を軽々と肩の上にのせて、何故か楽しそうにしている少女。
 そして、そのうちの金髪の少女がこの世界に語り始めた。
「この世界を滅ぼす」
冷たく、たった一言の宣言で人類の9割が死滅するとは、まだこの時点では誰一人想像できなかった。



 人類が滅びるのはあっという間で、あっさりしていて、数日であらかた人の姿を見ることはなくなった。
 日本、中国、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スイス他全てがやけ野原となった。残酷だった。大人だけでなく、年寄り、女、子どもまで人と呼べるもの全てを滅ぼしてきた。彼女らに慈悲は通用しない。そんな常識は持ち合わせていなかった。
 人は逃げるように、遠くへ行ったり、地下へと隠れようとしたが、全て見つかり、見つけては殺しまくった。
 血が辺りを撒き散らし、雨のように吹き荒れたそれは、大地を赤く染めた。金髪の少女は、それをいたく気に入っていた。
 まるで赤い絨毯だと。
 


 人がある程度残った時には、既に名もない小さな島に全員が住んでる状況だった。この場所が見つかれば、それこそ本当に人類が滅びる瞬間である。
 だが、人類が残り1割に達するまでにはたった数日だったが、それ以降は彼女らは何もしてくる気配はなかった。もう、人類が滅んだと思われているのか、それとも単にまだ見つかっていないだけなのかもしれない。
 生き残った最後の人類は、あの穴からやってきた少女達の対策を考えることにした。
 まず、あの穴だが、あそこから彼女達がやってきたということは、他の世界からやってきたと考えられる。つまり、あの穴はあちらの世界とつなぐゲートで、それを隔てる手段はないということ。気になるのが、彼女らが来てから直ぐに発した言葉が「世界を滅ぼす」だった。つまり、あの穴は彼女らの意思によってうまれたと考えるのが妥当かもしれない。なら、尚更あの穴を塞ぐ件は不可能になる。
 しかし、あの穴には人類が滅びる前に米軍が調査に成功したらしいが、あの穴からはエネルギーが発せられなかったと言う。あちらに世界はそもそもないと結論があった。つまり、何もないところから、突如産まれた。あの穴の中は虚無であり、ゲートでもなければ、逆にあの穴の中に入れば、エネルギーを持つ物質や、生物は虚無にかえる。
 突如空に出現した謎の多い穴は、『空のない世界』と言われるようになった。
 全く、穴のくせに底がない不思議な現象。解明しようがない。


 もはや諦めるしか人類には残されていないのではないのか。選択肢がない現実を受け入れろと、神様が言っているのか。
 それでも、人類ってのは諦めが悪くって、選択肢がないって言われても、自分達で選択肢を作り上げてしまう。そんな、往生際の悪い人類は、世界を滅ぼそうとしている奴らに挑戦を抱く。


 

 さて、そうと決まれば島にいる最後の人類は、あの少女達について独自の解析が求められた。そして、その集会にーー
「僕が思うに、あの少女達には独自の攻略が必要なんだと思います。あの少女達と人間の違いは、あの穴からやって来た他に、人間には持っていない特殊能力を持っていることです。そして、その能力のせいで各国の軍は簡単にやられてしまいました。普通に戦っても勝てません。しかも、今の現状では戦力も足りてません。だから、彼女らにとって有利なその能力を逆手にとる方法でいくんです。少女達によって違う能力の為、それぞれの攻略が必要になってきます。まずはーーーー」
それを聞いた皆は、覚悟を決めて、それに賛同してくれた。
「じゃあ、この作戦の指揮官は東、お前がやってくれ」
「おう、まかしたぞ!」
「頑張れよ!」
各々、歓声があがる。人類がそれで滅びるかもしれないのに、誰も自分が指揮官になることに反対する者はいなかった。
「いいんですか、皆さん」
「あぁ、この作戦を考えたのはお前さんだ。他のやつらが考えつかなかったことだ。頭のいいやつが指揮官になるのは当然のことだ。指揮官に年齢は関係ない。自信もって俺たちを導いてくれ」
「頼んだぞ、少年!」
僕は少し合間をあけ、考えてから
「分かりました。精一杯頑張らせて頂きます」
こうして、僕は指揮官となり皆を導くことになった。
 
 


 「それでは皆さん、私東が今作戦を指揮させて頂きます。まず、少女の現在の位置ですが、少女達にあれから動きはないことから、少女達が最後に行動した場所が現在地である可能性があります。そして、少女達は各自での行動で一緒に行動することがありませんでした。したがって、少女達の現在地は各自バラバラに位置し、その位置の近くに仲間の少女はいません。現在位置する少女ですが、金髪の少女は日本都市、東京。あの『空のない世界』がある場所です」
「あの場所から動いてないってことか」
「はい、そうなります。次に銀髪の少女ですが、衛星の最後の記録では宇宙にいるとのことです」
「宇宙!?空気のない場所でも生存が可能ってか」
「少女達の体の構造上、私たちと違うという可能性もありますが、それが彼女の能力である可能性もあります。銀髪の少女については後にするとして、他の少女達ですが唯一眼鏡を掛けていた少女はアメリカ、ニューヨーク州に位置し、ピンクのパーカーが目印の少女はイギリス、ロンドンに。大剣を持っていた少女は朝鮮にいます。
 さて、その少女達ですが、このまま動かないでいるとは保証できません。そして、何よりここがあの少女達に見つかり、少女達全員が集まれば、それこそ絶望的になります。ほぼ確実的に生き残ることは無理でしょう。そこで、バラバラになっている少女達を倒すには、今の現状を逃すわけにはいきません。少女達に共闘は今までありませんでしたが、それは、それ以降も望みたいところです。しかし、望んで叶えば苦労はありません。警戒は必要になります」
「備えあれば憂いなしだな」
「はい、その通りです。そして、当然攻略する少女の順番も重要になってきます。最初の少女は眼鏡の子です」



【アメリカ、ロサンゼルス】
 
 最初の攻略、眼鏡の少女攻略に、島からモリスの操縦で、小型飛行機を使いアメリカ・ロサンゼルスに来ていた。
「ロサンゼルスか。何か見る影もないな」
少女攻略戦に参加した数名の男達がアメリカの地に足を踏み入れたところだった。
 1人目は、サニエル・モリス。アメリカの陸軍であったが、国家と軍が機能しなくなってからは上官の命令で退避した。しかし、退避をしなかった上官は少女との戦いで命を落とした。今も退避したことを後悔し、上官の命令を破ってでも上官と一緒戦うべきだったと、思っている。逃げた自分は上官の命令で正当化していたのを今でも悔やんでいる。自分は臆病だとも話していた。しかし、彼のお陰で眼鏡の少女についての情報を得ることができた。おそらくは、その為に上官は退避命令を出したのかもしれない。彼、サニエルにとっては眼鏡の少女は仇になる為、少女攻略戦に参加した。
 次に、キング。同じく少女攻略戦に参加協力してくれた。ガッチリした体格で、力仕事が専門。少女達の破壊行為から逃れる際に、巻き込まれ家族を失った。まぁ、少女達に恨みを感じない者はいない。キングが参加するのは復讐だった。
 3人目アレン。基本無口だが、射撃を得意とする。別にアレンはもともと一人で、両親は病気で早くに亡くしている。大切な人を亡くした訳でもなければ、少女達に対して復讐みたいのがあるわけではない。この少女攻略戦に参加してくれたのは、「自分は戦えるから。復讐とかそういう余計な感情があると、逆に射撃に不利になる」と本人は語っていた。昔、傭兵としての経験があり、援護射撃を主にしていた。援護射撃があると、戦況は少しでも楽になるので、本当に助かっている。
 4人目にキャプラ。若く、ちょっとチャラい青年。ナイフを常に持ち歩いており、性犯罪の前科持ちである。最後の人類の中で唯一の前科持ちであるが、知っているのはこの僕だけだった。前に新聞で、小さな記事欄にあったのを覚えていただけだ。しかも、数年前であり、キャプラには悪いが、前科を内緒にする代わりに少女攻略戦に参加してもらった。彼自身は、ナイフを常に持ち歩いているだけて、内心は臆病で力も強くない。だから、この攻略戦には本当はしたくなかったはずだ。しかし、あの島に唯一の前科持ちの彼を置いとく訳にはいかなかった。まぁ、こんな時に犯罪になんて手は出さないはずだ。そんなことをすれば、島から追い出され、彼は生きていくことはできないだろう。それ以前に、前科が知られればあの島から追い出されていただろう。それでも、彼を連れてきたのは必要な処置だと思っている。それに、この作戦には勇気や力よりも、臆病を求められる。臆病でなければ、生き残れないからだ。だから、彼がこの作戦に実は一番適していたのだ。
 最後に、指揮官となった東となる。まぁ、自分の紹介は得意ではないので、ざっと言うと、僕の特徴というか、特技が記憶力だ。キャプラの件にしても、数年前の小さな記事まで記憶している人はいないだろう。結果、僕だけしかキャプラの前科は知らない。逆に他の皆が知っていたら揉め事になりかねなかった。まぁ、能力持ちの少女に対して、人間の能力(記憶力)で挑もうって話だ。
 以上が今作戦のメンバーである。
 



 そして現在、その作戦の為アメリカ・ロサンゼルスに来ていた。
 まぁ、予想はしていたが、瓦礫とかした建物しか残っていなかった。必要以上に破壊することに意味はあるのだろうか?
「世界を滅ぼす」
この言葉は、人類を滅ぼすと言ってはいなかったが、意味は同じだと考えていた。しかし、本当に世界を滅ぼすなら必要以上の破壊行動は理解できる。しかし、それで世界が滅んだことにはならない。いったいどんな手段で世界を滅ぼすと言うのか。そんな事を考えているとモリスが、周辺調査から戻って来た。
「指揮官、やはり物資の調達は無理そうです。どうしますか。いちよう他の町にも行ってみますか?」
「いえ、予想はしていました。おそらく、どこに行っても同じ状況だと思います」
それを近くで聞いていたキャプラが舌打ちした。
「ちぇっ、無駄足かよ」
「いえ、違います。いきなり本命のニューヨークに行くわけにもいかないですし、物資調達はあくまで出来たらです。本命は少女攻略。今日は長旅でしたので、どこか場所を探して野宿していきます」
その指示に、全員が納得した。



 野宿が決まった、その日の夜。誰かの声が聞こえた。寝言だろうかと思ったが、皆まだ寝ておらず、各々明日の決意を口にしていた。
  
 

 野宿から一晩があけた。
 早朝、キャプラが少し遅れて全員が集合した。
「これから、ニューヨークへ向かいます。ニューヨークへは、再びモリスさんの操縦で小型飛行機で行けるところまで行きます。そこから、ニューヨーク中心部までは徒歩になります。中心部にて、少女の姿を目視出来たら、アレンさんは射撃ポイントを探してください。射撃ポイントに到着したら、この無線機で連絡ください」
「了解」
「少女の攻略ですが、少女達にはそれぞれの能力があります。モリスさんの情報によると、眼鏡の少女の能力は、少女の周囲からは運動エネルギーがゼロになるという能力。つまり、いくら弾丸を撃ち込もうが、彼女には当たる前に、彼女の目の先で止まるだけです。重力による運動エネルギーもゼロにされる為、弾丸は地球の重力に逆らって浮いている状態に見えますが、実際には彼女周辺は運動エネルギーと共に重力も存在しないと付け加えば納得できます。
 さて、彼女の攻略ですが、彼女の能力範囲に、人が入れば人は動けなくなります。では、範囲以外での攻撃で遠距離射撃をするか?間違いなく彼女には届かない。
 誰もが、一人の少女に軍が挑めば勝てたと思われたのが、全くの惨敗にいたったのは、普通に戦っても勝てないからです。だから、人類らしく知恵を絞ります。
 まず、彼女の能力ですが、運動エネルギーにだけ限定されている。他のエネルギーまでをゼロにすることはできない。ですので、他のエネルギーで試そうと思います」
「ちょっと待ってくれ」
途中まで聞いていた、モリスが口を出してきた。
「それは、うちらもやった。毒ガスに火炎放射、放射能、どれも効かなかった」
「それは、少女らにそういった体質があったということです。勿論、他の少女達の攻略の際も考慮する必要があります」
「じゃあ、今回はどうするんだ」
「完璧過ぎる体質なんてないんだと思います。何故なら、完璧な体質は逆に他のを犠牲にしなければ成り立たないからです」
「?」
「モリスさん、私の声が聞こえますか?」
「何だ、突然。聞こえてるが」
「モリスさん。あの少女は耳が聞こえているんですよね?」
「あぁ。あいつらにはちゃんと耳があるし、聞こえていたはずだが。それがなんだって言うんだよ」
「じゃあ、我々に勝機はあります。音エネルギーです」
それを聞いたモリスは目を大きく開き、そして東が何を言いたかったのかをようやく理解する。
「分かった。俺に任せてくれ」
「キャプラさんとキングさんは、モリスさんと協力を。アレンさんは、合図と共に相手を撃って下さい。相手に銃は通用しませんが、相手の邪魔をしてくれればいいです。僕は僕ができる事を全力でやります」
「「了解!!」」
「これより、本作戦『女の子の眼鏡をいい男達がかち割りに行く!!』作戦、実行します!各自、武運を祈っています」
「その作戦名どうにかならないのか?」
モリスの突っ込みに皆笑った。これでいい。過度な緊張は不要だ。皆、臆病に逃げながら戦えば勝てる!そんな気がしてきた。




【アメリカ・ニューヨーク】

 遂にこの時がきた。瓦礫の山をこえながら着々と進む。皆の顔がさっきまでとは違い、緊張していた。
 僕は途中まで同行し、それ以降は別行動に移った。僕、東の役割は相手の捜索、発見である。他の皆はそれぞれの役割の準備に向かった。
 しかし、今思うとこんな広い範囲で相手を探すなんて、かくれんぼで言えば、終わりそうにない遊び同然だった。そう思うと少し気が楽になった。そう簡単に見つからないと分かれば足どりも速くなった。だから、
「やぁ、やっと来たわね」
その言葉に、僕の心臓はビクビクして、苦しかった。恐る恐る後ろを振り替えると、少し遠い所から、瓦礫の山の上に立っていた。それは、少女で眼鏡をかけていた。眼鏡の奥の瞳は紫色に光っていた。まるで、待ちわびたかのように見るその瞳とは逆方向に、


 走った。全力で走った。



頭の中で『走れメロス』を考えながら、全力で走った。これが、メロスの気持ちなのか。いや、ちょっと違うか。


「ねぇ、待ってよ。私と遊んでくれるんじゃなかったの?」


追いかけて来たーーー!!



 急いで、無線に連絡を入れる。
「少女発見!少女発見!至急援護頼む。追いかけられてる。若干、ストーカーに会ってる気分」
あぁ、これが女性が男性に思う恐怖なのかと。確かに、これなら一人で夜中なんて歩けないな。っと、納得している場合ではなかった。


「御免なさい、御免なさい!お願いですから、追いかけて来ないで下さい!」
「嫌~~~~」
何てしつこいストーカーなんだ!初めてだ、女性にストーカーされるの。
 僕は走りながら器用に着ている衣類を脱ぎはじめた。そして、メロスになった。
「わーお♪」
その時、何処からか弾丸が少女に向かって、しかし、その前に弾丸は彼女の近くで動きを止めた。まるで、時間が止まったかのように。
「アレンさんか」
無線越しにお礼を言っとく。
「あんた、それより何してるのさ。何故、全裸になった?」
それには答えず、そのまま撃ち続けるように指示をおくる。
「もう一つ言っていいか?さっきの無線なんだが、少女発見の所、早口過ぎて『処女発見!処女発見!至急援護頼む!』に聞こえたんだが、まさかとは思っていたが、お前が全裸になって走って叫んでるから、本当にお前……大丈夫か?」
東は無線を切って無言で走った。僕がヤバい人だと思われている。これは、現実逃避しなくては。走る、逃げる、現実から。
 さて、後ろはと言うと、バンバン撃たれてるのに関係なしに追いかけて来ていた。


東は再び無線に電源を入れた。
「モリスさん、状況お願いします。こちらは限界です」
「こちら、モリス。たった今、準備が完了しました。いつでもオッケーです」
「分かりました。アレンさんは射撃を続けながら、僕をポイントまで誘導して下さい」
「了解」
「モリスさんは、僕が近づいたのを確認したら、合図でアレをお願いします」
「こちら、モリス。了解した!」
「では、ぶっちゃけ本番お願いします!」




 それは、 一発勝負。これを失敗すれば僕らは死ぬ!この不意討ちこそが重要である。失敗すれば、同じ手は使えない。彼女は絶対次に警戒してしまう。彼女は僕が自棄になって挑もうとしたが、不意をつかれ逃げている僕にしか見えないはずだ。軍が国が負けたことにより、人類に対し過信しているはずだ。だが、人類は負けたからって諦める訳じゃない。諦めの悪い人類がいかに脅威か、彼女らはまだ知らない。
 だから、教えてやる!人類初めての反撃を!!



 俺は、直ぐ様耳を抑え、勢いよくダイビングを地面にかましながら、そのままうつ伏せになるかのように、何かを避けるように、地面に押し付けるかのように、体を低くした。
 見えないそれは、東の上を通過し、少女に激突した。物質ではない為、能力の効果を受けず、また、物質という形はない為、体にあたる感触もない。しかし、彼女は苦しんでいた。耳を必死に抑えながらも、耳から血をだし、紫色の瞳からも血の涙を出した。
 呻きながら、それでも倒れるまで普通の人間よりも長く立っていた。
 倒れたのを確認すると、僕以外の皆も確認しに集まった。
「やったのか?」
キングの質問に
「普通の人間なら今ので死んでるが。それより東は大丈夫か?」
心配して、倒れこんでいる東を起こす。
「ありがとうございます、モリスさん。まだ、耳がキンキンしてますが、直ぐに治ると思います」
「そうか、それは何よりだ」
しかし、助かったと思ったやさき、キャプラが悲鳴をあげた。その悲鳴に、また頭が痛くなったが、悲鳴のあとに聞いたその言葉で、頭が痛かったのが直ぐに治る。
「おい、起き上がってきたぞ!」
「おい、嘘……だろ!?」
僕はいったい何がおこっているのか分からなかった。


少女は立ち上がった。


「お前ら……やってくれたな。……殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」


 逃げるしかなかった、あの恐怖からは。



 何とか逃げきった僕らは、計画を見直す為、隠れ身を潜めた。しかし、今の現状は、ほぼ絶望的だった。確かに、音波砲はかなりのダメージを与えた。実際に、僕らが逃げたのに相手は追いかけようとしなかった。多分、動きも鈍くなっているはずだ。更に絶好になったと考えれば、もう一度音波砲を撃てばいい、今度こそ。
 しかし、皆のモチベーションは下がっていた。アレを食らってまだ立てるのだ。もしかすると他の少女よりも強いのか。ん?いや、まさか……
「勝てる!勝てるぞ。そもそも、いくら人間と違っているからって、あんな超人的な頑丈さはあり得ない。僕は確信した!あいつの攻略法を!」



 その攻略法とは、あの少女から離れ、そして放置することだった。



「どういう事だ?説明してくれ東」
モリスの他、皆疑問に思っていた。しかし、これが正解なんだ。
「本命は別にあるって事だ!ほら、見ろ」
そこには、無傷のもう一人の眼鏡をかけた少女がそこにいた。
「あなた達が初めてです。気付かれたのは」
さっきのとは雰囲気が違っていた。
「え?どういう事だ、東」
「あれ、あなたの武器なんですよね。人形があんなに強いとなると、あれが本物だと間違えられるなぁ。でも、実際に本物より人形の方が強いんですよね?」
「アレは私がいなければ、動かないガラクタよ」
「ですが、貴方はあの武器、人形がなければ僕たちが来る前に火だるまになってるか、毒ガスでやられていたでしょ。だから、僕たちが逃げた時、あの人形は追いかけて来なかった。アレを失う訳にはいかなかった。貴方が言うガラクタを失えば、次に失うのは貴方本人だから」
「……よく喋る人間ね。でも、私の能力を忘れていて?自慢話する為に来たのなら、もう聞いたから次は殺すわよ」
「あぁ、貴方から不意をついて人形にやったみたいにすればいいと言うことですか?そんなことをしなくても、貴方の負けです。ですので、おとなしくやられて下さい」
「殺られるのは貴方達ですよ」
そう言って手を天井に向けて、力を入れる。すると、闇色が突然周囲に現れ、それが彼女の手のひらに集まっていく。そして、黒い球体を作った後、それを膨張させ



               「          闇絶              」



 闇を解き放ち、全てを崩壊させる力。あの人形にはできない技。私の方が人形より強いという証明。のハズだった。
「あれ?」
気づいた時には、自分の体がボロボロに消えているではないか。よく見たら、少年が私の胸を刃物で突き刺していた。あぁ、それも気づかれたんですね。私の土壇場のハッタリが。
「少年、君の名前は?」
「東です」
「東……。では、東。よく聞きなさい。


    初めて人間を殺した感想はどうだった?


ソフィーナ。貴方が初めて殺した人間です。よく、覚えておきなさい」
「どういう意味だ?君らは人間じゃないんだろ?」
「人間だったんです。あの、空が現れなければーーーー」
そう言い残し、消えていった。僕はただ、呆然としているしかなかった。



 
 あの後、アメリカ・ニューヨークを後にした僕たちは新たな謎を抱えながら次なる地に来ていた。
 新たな謎とは、あの『空のない世界』からやって来た彼女らが人間だったと言う点だ。まったく、何がなんだか分からなくなってきた。そもそも、彼女らは何故、世界を滅ぼしに来たのか?その目的が分かれば、少しは頭のモヤモヤがはれるのだけれど。
「東、さっきの続きだが、どうしてあの時アイツが人形だって分かったんだよ?」
「あれは、他の少女達が武器を持っているのに、彼女だけないのはおかしいなって思って。そしたら、あの眼鏡の子の頑丈さを考えると、まぁ、後は勘かな?」
「大剣を持っている少女か。でも、他に武器を持っている少女なんていたか?」
「ほら、目の前に」
それを見て納得するモリス。
「確かにな」
そこには、(※字数オーバーの為02へ続く)


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