空のない世界(裏)

石田氏

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外伝・劇場版(風) 山吹色の世界

05

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 結局、ホタルの行方はわからず、捜索願いが出された。我が子が行方不明に泣き崩れる両親に、皆は言葉を失っていた。
 山吹はというと、あの後病院に運ばれ、のちに目を覚ました。しかし、今までの記憶は全くないと言った。
 鎧武者は、しばらく姿を消したいと言って、刀から再び鎧武者の影を表し、消えていった。鎧武者曰く、自身は不死身なんだと。
 街に姿を表した色ありの少女、クマベラはそのまま逃走し、姿を消したらしい。しかし、驚いたのはmaximumが日本にいつの間にか来ていた点である。アメリカは日本との友好関係の証しとして、色ありの少女の出現率の高い日本にmaximumを送ったらしい。アメリカの騒動でおきたmaximumの改良型と言うが、真紀にとっては今でもゾッとする物だった。
 このmaximum後期は、世界の紛争地帯にも送られ、色なしの少女を兵器に使う反勢力軍の鎮圧にも使われていった。



                            +  +  +


 ここはとある病室ーー

 コンコン

山吹の病室にノックがなった。
「誰だろう?」
「お見舞いじゃないの?」
同じくお見舞いに来ていた真紀が言った。
 しかし、扉を開け表れたのは知らない男の人だった。大人のスーツを着た男性の隣に見馴れた知人の姿もあらわれた。
「さくらさん!」
「見舞いに来たよ!」
「よろしいんですか、お仕事は」
「それはいいの。それより、真紀ちゃん。ちょっといい?」
「はい、何ですか」
そう言って、真紀はさくらにつられて病室を出た。
「あの、何ですか?」
「山吹さんのご家族について分かったの」
「ふきちゃんの家族!?」
「山吹さんのご家族は行方不明になっていた。山吹さん自身も家族のこと記憶になかったからね。でも、少し気になって、こちらで調べてたの」
「じゃあ、さっきの人は役所の人か何か?」
「そうね」
 その頃、病室では山吹の家族のことを聞かされていた。別にそれ事態驚くことも悲しくなることもなく、ただあまり実感がないのか、記憶がないせいなのか、聞いても何も感じなかった。それでも、山吹にとっては知らない過去を知れたわけで、全てを言い終えたスーツの男性に山吹はお辞儀をする。
「教えて頂きありがとうございます」
最初の言葉がお礼だったことに、男は驚いた。






 ガラッ

真紀は男とすれ違う感じで病室に入った。
「どうだった?」
「うん、私の両親はすでに亡くなっていたみたい」
「あっ・・・・ゴメン」
「あっ、いいの。私にとって、真紀ちゃんは私の家族みたいなものだし。それが今も変わらないと知れて良かったの」
「ふきちゃん・・・・」
「勿論、真紀ちゃんは私の妹ってことで」
「えぇー、私妹なの。いや、お姉ちゃんでしょ」
「あら、じゃあお姉ちゃんに聞こうかしら。私がいない間もちゃんと家事はやってるのかしら?部屋の掃除はいつやったのかな?」
「いや・・・・その・・」
「どうやら私はお姉ちゃんじゃなくて、真紀のお母さんみたいね。なら、ダメな子にお仕置きしなくちゃね」
「いやいや、お仕置きは嫌ですお母様」
「早くこちらに来て尻出しなさい」
「まさかの尻叩き!?ごめんなさい、ちゃんとやりますから」
土下座して謝る真紀に、山吹はひそかに笑う。





外伝・山吹色の世界     完

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