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陰謀
フロレンツィアの奇行
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「君はヴェンデルガルト嬢を嫌っていたのではないのか? わざわざ見舞いに来るなんて、どういう心境の変化だ?」
「あら。私はあなたの婚約者で未来の皇妃。誰にも優しくするのは当然ですわ。けどジークハルト様も段々とあの魔女令嬢の虜になっているようなので、私から彼女に身の程をわきまえろと躾けておこうと思いましたの」
フロレンツィアの言葉は、最初と最後が合わない。よく見れば、彼女の瞳が少し揺れている。酒に酔っている時と似ていた。
「ヴェンデルガルト嬢は、体調が優れない。君の様なうるさい人と今は、絶対に会わせる訳にはいかない」
「そんなにも具合が悪くいらっしゃるの?」
「答えるつもりはない」
探る様なフロレンツィアの言葉に、ジークハルトは無表情で首を横に振った。そうして、彼女を拒絶する様に顔を背けた。
「君のメイドは何処だ? さっさと屋敷に帰るといい。取り敢えず、ここから離れてくれ」
「フロレンツィア様!」
二人が言い争っていると、彼女の執事が現れた。今日は、メイドを連れていないようだ。
「分かりましたわ、明後日は我が家でパーティーがありますから、用意の為帰ります。ジークハルト様にも招待状を送りましたよね? 忘れず出席して頂きます。私をエスコートして下さいね」
「――忘れていた。すまないがパーティーは……」
「僕も行っていいかな? 勿論、ジークハルトも連れて行くよ」
断ろうとしたジークハルトを遮って、意外にもイザークが話に入って来た。フロレンツィアは、迷わずにその言葉に頷いた。
「ええ、クラインベック公爵家なら、我が家のパーティーに参加するには相応しいわ。是非いらして下さい」
執事に促され、フロレンツィアは花束を抱えたまま部屋に背を向けた。
「フロレンツィア。その花は、預かろう。ヴェンデルガルト嬢に渡しておく」
去ろうとしたその背中にジークハルトは声をかけた。しかしフロレンツィアはその言葉を無視して城を去って行った。
「あの花、どこかで見た気がする」
カールの言葉に、イザークも頷いた。
「奇遇だね、僕も覚えがある」
「ギルベルト、もしかして――」
ランドルフとギルベルトにも、覚えがあるようだった。
「ヴェンデルの部屋のテラスに鉢が置かれていた。もう枯れそうだったが、あの花に似ていた気がする」
「ジキタリスと同じで、毒の花なのか?」
ラムブレヒト公爵家の温室で栽培されていた、毒の花。温室は火事で全焼して、栽培していた証拠もない。
「北の花ではないだろう――研究員にも調べさせろ」
ギルベルトが頷いて、研究員がいる等に向かおうとしたとき、イザークが声を上げた。
「そうだ! アンゲラー王国の毒草の栽培所で見かけたんだ! 綺麗な花が咲いているからって、何人かが鉢を持ち帰らなかった?」
「そうだ、そうだよ! 確かに、あの時に見た!」
その言葉に、自分も思い出したようにカールも声を上げた。二人が見たというなら、アンゲラー王国に攻めた時に毒草を処分させた時だ。
「全部処分しろと命令したはずだ!」
ジークハルトが、思わず大きな声を上げた。カールとイザークは、その声に思わず首を竦めた。
「毒草の横の、綺麗な花が咲いている所に置いてあったんだ」
「持ち帰りたいと兵が言うから、毒とは思わなくて許してしまったんだ」
確かに見た目、毒の花とは思わない。ジークハルトはそれ以上責める事が出来なく、悔しそうに黙り込んだ。
「研究員と調べてきます。ヴェンデルの部屋を――お願いします」
ギルベルトは、足早に塔へと向かった。
部屋の手配は、ランドルフに任せた。五人の騎士団長と信用できるメイドたちしか知らない。夜中に、カールが抱えて彼女を新しい部屋に異動させた。
新しい部屋に移ってからは、異臭はしなくなったとビルギットはカールに話していた。それを聞いたカールは、ホッとした。だが、まだヴェンデルガルトの様子は悪いままだ。食事も身体が受け付けないようで、ビルギットは牛乳に蜂蜜を混ぜて飲ませていた。
ヴェンデルガルトの身体が痩せる一方で、栄養価が高く口に入りやすいものと考えたのだろう。
「また誰かが、ヴェンデルガルト様を狙っているんですか?」
カリーナが様子を見に来たカールに、心配そうに尋ねた。カールはメイドたちを心配させたくはなかったが、用心して貰う為に頷いた。
「おかしな事があれば、どんな時でもいい。俺達薔薇騎士団に報告してくれ。あと、ロルフ。俺達がいない時、ヴェンデルを護ってくれ」
「命に代えても!」
カールに敬礼して、ロルフははっきりとそう言った。
そうして今夜、ラムブレヒト公爵家でのパーティーだ。気の進まないジークハルトを連れて、イザークは自由にラムブレヒト公爵家に入って調べる事が出来ると、意気込んでいた。
「あら。私はあなたの婚約者で未来の皇妃。誰にも優しくするのは当然ですわ。けどジークハルト様も段々とあの魔女令嬢の虜になっているようなので、私から彼女に身の程をわきまえろと躾けておこうと思いましたの」
フロレンツィアの言葉は、最初と最後が合わない。よく見れば、彼女の瞳が少し揺れている。酒に酔っている時と似ていた。
「ヴェンデルガルト嬢は、体調が優れない。君の様なうるさい人と今は、絶対に会わせる訳にはいかない」
「そんなにも具合が悪くいらっしゃるの?」
「答えるつもりはない」
探る様なフロレンツィアの言葉に、ジークハルトは無表情で首を横に振った。そうして、彼女を拒絶する様に顔を背けた。
「君のメイドは何処だ? さっさと屋敷に帰るといい。取り敢えず、ここから離れてくれ」
「フロレンツィア様!」
二人が言い争っていると、彼女の執事が現れた。今日は、メイドを連れていないようだ。
「分かりましたわ、明後日は我が家でパーティーがありますから、用意の為帰ります。ジークハルト様にも招待状を送りましたよね? 忘れず出席して頂きます。私をエスコートして下さいね」
「――忘れていた。すまないがパーティーは……」
「僕も行っていいかな? 勿論、ジークハルトも連れて行くよ」
断ろうとしたジークハルトを遮って、意外にもイザークが話に入って来た。フロレンツィアは、迷わずにその言葉に頷いた。
「ええ、クラインベック公爵家なら、我が家のパーティーに参加するには相応しいわ。是非いらして下さい」
執事に促され、フロレンツィアは花束を抱えたまま部屋に背を向けた。
「フロレンツィア。その花は、預かろう。ヴェンデルガルト嬢に渡しておく」
去ろうとしたその背中にジークハルトは声をかけた。しかしフロレンツィアはその言葉を無視して城を去って行った。
「あの花、どこかで見た気がする」
カールの言葉に、イザークも頷いた。
「奇遇だね、僕も覚えがある」
「ギルベルト、もしかして――」
ランドルフとギルベルトにも、覚えがあるようだった。
「ヴェンデルの部屋のテラスに鉢が置かれていた。もう枯れそうだったが、あの花に似ていた気がする」
「ジキタリスと同じで、毒の花なのか?」
ラムブレヒト公爵家の温室で栽培されていた、毒の花。温室は火事で全焼して、栽培していた証拠もない。
「北の花ではないだろう――研究員にも調べさせろ」
ギルベルトが頷いて、研究員がいる等に向かおうとしたとき、イザークが声を上げた。
「そうだ! アンゲラー王国の毒草の栽培所で見かけたんだ! 綺麗な花が咲いているからって、何人かが鉢を持ち帰らなかった?」
「そうだ、そうだよ! 確かに、あの時に見た!」
その言葉に、自分も思い出したようにカールも声を上げた。二人が見たというなら、アンゲラー王国に攻めた時に毒草を処分させた時だ。
「全部処分しろと命令したはずだ!」
ジークハルトが、思わず大きな声を上げた。カールとイザークは、その声に思わず首を竦めた。
「毒草の横の、綺麗な花が咲いている所に置いてあったんだ」
「持ち帰りたいと兵が言うから、毒とは思わなくて許してしまったんだ」
確かに見た目、毒の花とは思わない。ジークハルトはそれ以上責める事が出来なく、悔しそうに黙り込んだ。
「研究員と調べてきます。ヴェンデルの部屋を――お願いします」
ギルベルトは、足早に塔へと向かった。
部屋の手配は、ランドルフに任せた。五人の騎士団長と信用できるメイドたちしか知らない。夜中に、カールが抱えて彼女を新しい部屋に異動させた。
新しい部屋に移ってからは、異臭はしなくなったとビルギットはカールに話していた。それを聞いたカールは、ホッとした。だが、まだヴェンデルガルトの様子は悪いままだ。食事も身体が受け付けないようで、ビルギットは牛乳に蜂蜜を混ぜて飲ませていた。
ヴェンデルガルトの身体が痩せる一方で、栄養価が高く口に入りやすいものと考えたのだろう。
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「おかしな事があれば、どんな時でもいい。俺達薔薇騎士団に報告してくれ。あと、ロルフ。俺達がいない時、ヴェンデルを護ってくれ」
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カールに敬礼して、ロルフははっきりとそう言った。
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