二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜

文字の大きさ
108 / 125
陰謀

謎の少女

しおりを挟む
 秘密に、と指示されたジークハルトの馬車は城の裏口に回った。
「ギルベルト様を呼んでくれ」
 と、頼むとジークハルトの馬車という事もあり、すぐにギルベルトが現れた。
「ジークハルト様が、フロレンツィア様の屋敷から連れ出してきた子です」
 ギルベルトが馬車の中を見ると、ジークハルトのマントに隠れるようにして病的に痩せた少女が年齢と合わないような魅惑的な下着姿で、ジークハルトのマントに隠れていた。ガタガタと震えている。その手には、手枷が付けられている。
「……白薔薇……ギルベルト、様……」
 震えながら、ギルベルトを確認するとうわ言の様に呟く。ギルベルトは安心させるように、優しく話しかけた。
「そうです、もう安心ですよ。一先ず温かなものでも飲みませんか? 服も、用意しますよ」
 そう言って手を伸ばすと、彼女はその手を受け取って気を失った。
「!? 大丈夫ですか?」
 ギルベルトは彼女を引き寄せて抱き上げる。胸が上下しているので息がある事を確認してホッとする。そのまま急いで、騎士用の医務室に向かった。
「何事ですか?」
 白薔薇副団長のエルマーが、慌ててギルベルトを追いかけて来た。そうして、ギルベルトの腕にいる少女を見てぎょっとした顔になった。
「この子は――カンナビヒ子爵家のご令嬢では?」
「知っているのですか?」
 エルマーは、頷いた。
「兄の娘と仲が良く、屋敷に良く遊びに来ていたと思います。その……痩せて人相が変わっているのと、たまにしか見なかったので確かとは言いかねます」
「とにかく、今はこのひどい状態を何とかしましょう――申し訳ないのですが、ヴェンデルの体調がよければ大変申し訳ないのですが来ていただきましょう」
 医務室のベッドに寝かせると、ギルベルトは「ヴェンデルを迎えに行きます。ここは封鎖して、誰にも話さないでください」とエルマーに指示してヴェンデルガルトの部屋に向かった。

「ヴェンデル、ギルベルトです」
 部屋の前でノックすると、しばらくして部屋のドアが開いた。もうすぐ夕食の時間なので、ヴェンデルガルトは起きていた。顔も元気そうで、この頃には自分で歩けるようになっていた。
「どうなさったんですか? ギルベルト様」
 ドアの前で部屋に入ってこないグルベルトに、不思議そうな顔でヴェンデルガルトが近付いて来た。ギルベルトはヴェンデルガルトの顔を見て嬉しそうな顔になるが、次に申し訳なさそうな顔になり頭を下げた。
「ご夕食の前に、申し訳ありません――実は、至急治して欲しい人がいるのですが」
「そうなのですね。大丈夫です、行きます」
 会話を聞いていたカリーナが、秋用のショールをヴェンデルガルトの肩に掛けた。
「夕食は、お戻りになるまで止めておきます。ヴェンデルガルト様、行ってらっしゃいませ」
 メイド二人が頭を下げた。ロルフは、ヴェンデルガルトの傍に来た。
「俺は一緒に行ってもいいですか?」
「ええ、お願いします――今は気を失っていますが、かなり衰弱しています。亡くなってしまわないように、急がせてしまい申し訳ありません」
 そういうと、ギルベルトはヴェンデルガルトを促して医務室に向かい歩き出した。ヴェンデルガルトやロルフも続いた。
「衰弱? ご病気の方ですか?」
 ヴェンデルガルトがそう質問をするが、ギルベルトは表情を硬くして首を横に振った。
「いえ――閉じ込められていたようです。それだけでなく……ひどい扱いを受けていたようなんです」
 その言葉には、ヴェンデルガルトもロルフも驚いたようだ。出来るだけ急いで、医務室に向かった。そうして着くと、ギルベルトがドアを開ける。

「何をしているんですか!?」
 ドアを開けると、少女がエルマーをベッドに押し倒して首筋を舐めていた。エルマーは必死に、彼女を傷付けないように退けようともがいている。
「ちゃんとするから、お薬下さいませ……お願いします、お願いします……」
 ロルフが慌てて、ヴェンデルガルトの目を塞いだ。ギルベルトは歩み寄ると、手枷が付いたままの彼女を後ろから抱き上げた。
「すみません、ギルベルト様。目が覚めたら、急に飛び掛かられて……」
 エルマーが慌ててベッドから飛び起きた。
「何か、薬も打たれているようですね……男に身体を与える様に、でしょうか」
 ギルベルトは気の毒そうな顔になり、彼女を再びベッドに寝かせた。しかし彼女は、「薬、薬!」と暴れている。
「ヴェンデルガルト、彼女を助けて下さい」
 ロルフが目隠しを外して、ヴェンデルガルトの前に立ちベッドに進んだ。ヴェンデルガルトは、可哀想な少女を見て泣きそうな顔で治癒魔法を唱えた。

 ようやく暴れていた少女は大人しくなり、再び気を失ったのか静かになった。


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~

猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」 王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。 王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。 しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。 迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。 かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。 故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり── “冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。 皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。 冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」 一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。 追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、 ようやく正当に愛され、報われる物語。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗
恋愛
王城の使用人であるメルフィナには、ある秘密があった。 彼女は国王の隠し子なのである。 その事実は、半ば公然の秘密となっていた。公にされたことは一度もないが、嗅覚に優れた者達はそれを察知していたのだ。 しかし中には、そうではない者達もいた。 その者達は、メルフィナを一介の使用人として考えて、彼らなりの扱い方をした。 それは許されるものではなかった。知らぬうちに王家に牙を向けた者達は、その行為の報いを受けることになったのだ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...