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陰謀
ラムブレヒト別宅
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フロレンツィアの様子を見に行けと他の薔薇騎士団達に言われて、ジークハルトは嫌々ながらラムブレヒト公爵の別宅へと向かった。手には、フロレンツィアが好きなワインを持っている。
「まあ、ようこそ! ジークハルト様が来て下さるのが分かっていたなら、色々ご用意しましたのに」
フロレンツィアは機嫌がよかった。自分たちの使用人が拷問を受けたと聞いても、「私たちは何もしていないですもの。もうあの者達は、解雇しますわ。後はお好きにどうぞ」と平然と言う女だ。
「これはこれは、ジークハルト様。婚約者である娘の元に、ようやく来て下さりましたか。最近噂では、あの金色の悪女に骨抜きにされたと聞いていて、不安に思っていたんですよ。どうぞ変わりなく、娘を可愛がって下さい」
父親であるディルク・オイゲン・ラムブレヒト公爵が挨拶に顔を出した。
「……ヴェンデルガルト嬢は、国に尽くして下さっている。その様な悪口は品がないように思われますよ。本日はお邪魔させて頂きます」
ジークハルトはヴェンデルガルトの悪口を言うディルクに言い返そうとしたが、嫌味だけで済ませた。ここで庇うと、親子揃って倍以上に悪口を言うに決まっている。
「まあ、利用価値はありますな。兵が死なないのなら、東にも攻める事が出来る。領土が増えますなぁ」
「ジークハルト様ぁ、屋敷にはいつ戻れるのですか? ここは城からも遠く、少し不便ですわ。早く屋敷に戻りたいです」
ジークハルトは、別宅である屋敷を眺めた。ここも、本宅のような広さで金の出所が不思議だが、特別不審な情報はない。
「そう急がんでもいいだろう。ジークハルト様は、我が家のパーティーでの不審な事をお調べなのだからな。我慢しなさい。すみませんが、私はこれから用事があり出かけます。どうぞ、夕食も食べて行ってください。何なら、泊まって下さっても構いませんよ」
「やだぁ、お父様」
「いや、残念ながらしばらくしたら城に戻ります」
下品な親子の会話に、ジークハルトは無表情に返した。それを聞いたフロレンツィアが、「せめて夕食をご一緒にぃ!」と喚いている。
「まあ、気が変わりましたら夕食を是非。私は今日は戻りませんので、ゆっくりしてください」
愛想笑いを浮かべて、ディルクは屋敷を出て行った。
「ジークハルト様、少し庭でもご覧になりませんか? ここも花で溢れているんですよ」
フロレンツィアがジークハルトの腕を取った。仕方なく「少しなら」と、彼女に案内をされて庭に向かった。
しかし、庭の花は季節外れのものばかりだ。枯れそうなものもある。それに、掘り返したばかりなのか土がおかしい。
だが、それをフロレンツィアに訊ねるようなことはしない。黙って眺めながら歩く。フロレンツィアは陽気に歌いながらジークハルトの腕に絡みついていた――蛇のようだ、とジークハルトは少しゾッとした。
こつん
石が転がるような音がした。フロレンツィアは気付いていないようだ。何げなく、ジークハルトはそちらに視線を向けた。
どういう事だ!?
普通、地下室は屋敷の中にある。しかし、地面が続くところから青白い細い指が出ているのが見えた。ここからは見えないが、地下室があるようだ。
「フロレンツィア、悪いが夕食をご一緒してもいいだろうか? それと、今ワインが飲みたい。俺好みのワインを持って来てくれないか?」
「分かりましたわ! すぐに私が持ってきます! 夕食の準備も、料理人に話してきますね!」
喜んだ声を上げたフロレンツィアは、「少しお待ちくださいね」と屋敷に入って行った。辺りを確認したジークハルトは、急いで指が見えた所に駆けて行った。
そこには金網があった。隠していたらしい木の板を、金網越しに指で退けたのだろう。木の板をちゃんと退けると、そこには青白い顔をした少女がいた。毒を受けた時のヴェンデルガルトの様に、肌は青白く目が大きく見えるほど顔が痩せている。しかし、彼女は魅惑的な下着姿だ。手には手枷が付けられていた。
「……赤、薔薇……ジークハルト、様……助け……」
ジークハルトは驚くより先に、金網を剣で枠事外した。背伸びをして腕を伸ばす彼女を、強引に抱き上げた。
「まだ……皆……いま、す……怖い……」
細すぎるその女性を抱えたが、「まだ皆居る」という言葉に、全身が震えそうになる。
「時間がない、今は君だけ助ける。あとの子も、必ず助けるから」
マントを外して、彼女を包んだ。そうして、金網を元に戻して木の蓋も元に戻しておく。それから彼女を抱き上げると、周りを窺いながら自分の馬車の所へと急いだ。
「ジークハルト様、それは……?」
マントから見える足に、馬車を運転する使用人が驚いた顔になった。
「城に戻り、この子をギルベルトに預けてくれ。秘密にだ! 絶対誰にも知らせるな。ギルベルトに渡したら、戻って来てくれ。俺は夕飯を食べて戻る」
一気に、ジークハルトはそう命じた。小さな頃から彼の馬車を任されている使用人は、それ以上何も聞かず頷いた。ジークハルトが馬車の扉を閉めると、すぐに走り出した。
「どうしたんですか? ジークハルト様」
後ろからフロレンツィアに声をかけられて、ジークハルトは大きく息を吸った。
「帰りが遅くなると、知らせて貰った。あとで馬車は帰って来る」
「分かりましたわ。さ、ワイン飲みましょう」
見られていなかったようだ。ホッとした息を零して、ジークハルトはワイングラスを手にフロレンツィアと庭に戻った。
「まあ、ようこそ! ジークハルト様が来て下さるのが分かっていたなら、色々ご用意しましたのに」
フロレンツィアは機嫌がよかった。自分たちの使用人が拷問を受けたと聞いても、「私たちは何もしていないですもの。もうあの者達は、解雇しますわ。後はお好きにどうぞ」と平然と言う女だ。
「これはこれは、ジークハルト様。婚約者である娘の元に、ようやく来て下さりましたか。最近噂では、あの金色の悪女に骨抜きにされたと聞いていて、不安に思っていたんですよ。どうぞ変わりなく、娘を可愛がって下さい」
父親であるディルク・オイゲン・ラムブレヒト公爵が挨拶に顔を出した。
「……ヴェンデルガルト嬢は、国に尽くして下さっている。その様な悪口は品がないように思われますよ。本日はお邪魔させて頂きます」
ジークハルトはヴェンデルガルトの悪口を言うディルクに言い返そうとしたが、嫌味だけで済ませた。ここで庇うと、親子揃って倍以上に悪口を言うに決まっている。
「まあ、利用価値はありますな。兵が死なないのなら、東にも攻める事が出来る。領土が増えますなぁ」
「ジークハルト様ぁ、屋敷にはいつ戻れるのですか? ここは城からも遠く、少し不便ですわ。早く屋敷に戻りたいです」
ジークハルトは、別宅である屋敷を眺めた。ここも、本宅のような広さで金の出所が不思議だが、特別不審な情報はない。
「そう急がんでもいいだろう。ジークハルト様は、我が家のパーティーでの不審な事をお調べなのだからな。我慢しなさい。すみませんが、私はこれから用事があり出かけます。どうぞ、夕食も食べて行ってください。何なら、泊まって下さっても構いませんよ」
「やだぁ、お父様」
「いや、残念ながらしばらくしたら城に戻ります」
下品な親子の会話に、ジークハルトは無表情に返した。それを聞いたフロレンツィアが、「せめて夕食をご一緒にぃ!」と喚いている。
「まあ、気が変わりましたら夕食を是非。私は今日は戻りませんので、ゆっくりしてください」
愛想笑いを浮かべて、ディルクは屋敷を出て行った。
「ジークハルト様、少し庭でもご覧になりませんか? ここも花で溢れているんですよ」
フロレンツィアがジークハルトの腕を取った。仕方なく「少しなら」と、彼女に案内をされて庭に向かった。
しかし、庭の花は季節外れのものばかりだ。枯れそうなものもある。それに、掘り返したばかりなのか土がおかしい。
だが、それをフロレンツィアに訊ねるようなことはしない。黙って眺めながら歩く。フロレンツィアは陽気に歌いながらジークハルトの腕に絡みついていた――蛇のようだ、とジークハルトは少しゾッとした。
こつん
石が転がるような音がした。フロレンツィアは気付いていないようだ。何げなく、ジークハルトはそちらに視線を向けた。
どういう事だ!?
普通、地下室は屋敷の中にある。しかし、地面が続くところから青白い細い指が出ているのが見えた。ここからは見えないが、地下室があるようだ。
「フロレンツィア、悪いが夕食をご一緒してもいいだろうか? それと、今ワインが飲みたい。俺好みのワインを持って来てくれないか?」
「分かりましたわ! すぐに私が持ってきます! 夕食の準備も、料理人に話してきますね!」
喜んだ声を上げたフロレンツィアは、「少しお待ちくださいね」と屋敷に入って行った。辺りを確認したジークハルトは、急いで指が見えた所に駆けて行った。
そこには金網があった。隠していたらしい木の板を、金網越しに指で退けたのだろう。木の板をちゃんと退けると、そこには青白い顔をした少女がいた。毒を受けた時のヴェンデルガルトの様に、肌は青白く目が大きく見えるほど顔が痩せている。しかし、彼女は魅惑的な下着姿だ。手には手枷が付けられていた。
「……赤、薔薇……ジークハルト、様……助け……」
ジークハルトは驚くより先に、金網を剣で枠事外した。背伸びをして腕を伸ばす彼女を、強引に抱き上げた。
「まだ……皆……いま、す……怖い……」
細すぎるその女性を抱えたが、「まだ皆居る」という言葉に、全身が震えそうになる。
「時間がない、今は君だけ助ける。あとの子も、必ず助けるから」
マントを外して、彼女を包んだ。そうして、金網を元に戻して木の蓋も元に戻しておく。それから彼女を抱き上げると、周りを窺いながら自分の馬車の所へと急いだ。
「ジークハルト様、それは……?」
マントから見える足に、馬車を運転する使用人が驚いた顔になった。
「城に戻り、この子をギルベルトに預けてくれ。秘密にだ! 絶対誰にも知らせるな。ギルベルトに渡したら、戻って来てくれ。俺は夕飯を食べて戻る」
一気に、ジークハルトはそう命じた。小さな頃から彼の馬車を任されている使用人は、それ以上何も聞かず頷いた。ジークハルトが馬車の扉を閉めると、すぐに走り出した。
「どうしたんですか? ジークハルト様」
後ろからフロレンツィアに声をかけられて、ジークハルトは大きく息を吸った。
「帰りが遅くなると、知らせて貰った。あとで馬車は帰って来る」
「分かりましたわ。さ、ワイン飲みましょう」
見られていなかったようだ。ホッとした息を零して、ジークハルトはワイングラスを手にフロレンツィアと庭に戻った。
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