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ヒロインの魔法とモブ令嬢
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「そういえば、貴様が先日、道端で倒れていた理由が分かったぞ」
「本当……!?」
魔界に着いたとたんそう言うシュエルに、私は目を見張りながらそう聞く。
「あぁ。貴様はおそらく、ソフィアの魅了魔法にかかったのだろう」
「魅了魔法……?私はソフィアに魅了されていないけど……」
魅了魔法といえば、確かゲームにも出てきた魔法で、強制的に好感度をあげる魔法である。
そんな魔法は、男女問わず発動者に魅了される魔法なのだが……
「魅了魔法といっても、万能ではない。どうしても魅了魔法にかからない者が一人か二人ぐらいはいるんだ」
「それじゃあ、私以外にももしかしたら、魅了魔法にかかっていない人がいるのでは……?」
「いや、可能性はかなり低いだろう。通常の魅了魔法ならば、かからない者にかけても影響などでないのだが、貴様が魅了魔法にかかった時、味覚に異常が生じ、意識がもうろうとした……おそらく、ソフィアの魅了魔法はかなり強い者であろう。それゆえ、貴様が魅了魔法にかからなかったのは、奇跡としか言いようがない」
そこまでシュエルの話を聞いて、ふと疑問に思う。
「じゃあ何故、貴方には魅了魔法は効いていないのですか?」
「俺は魔王だからな。そんな安っぽい魔法にはかからん」
「魔王……ねぇ」
「はぁ。貴様はいつになったら俺を魔王だと認めてくれるのだ」
「そうですねぇ……私のいる国を滅ぼしてくれたら……とか?」
「無理だ」
「でしょうね。逆にここで分かったなんて言われたら逆に引きますよ」
……っと、こんな会話そしている暇はない。
「とにかく、私は、貴方に頼みたいことが……」
「おい。その前に、貴様、自分の名前を名乗ったらどうだ?」
……
「忘れてた」
よくよく考えてみれば、確かに私は名前を名乗っていない。
「私の名前はヴィル・テイラン」
「やはり、ヴィルといったか……」
「何か言いました?」
「いや、何でもない……それと、確かソフィアは貴様のことを公爵家、と言っていたよな?」
「えぇ、そうです。そして、私はレイナの親友でもあります」
「レイナ……巷で悪女と呼ばれている人物か。そういえば、貴様と会話した時も、レイナについて、意味ありげな質問をしていたな」
「……覚えてましたか」
モブである私の発言だなんて、覚えてないと思ったのに。それでも覚えていた彼は、どんだけ暇なのか。
「おい、貴様。今何か失礼なことを考えていたのでは……」
「――そんなわけないじゃないですか」
「……まぁ、いい。して、俺に何か用があったのではないか?」
「あぁ、そうでした。……いや、でももういいです」
「はぁ?気になるではないか」
「いえ。もう目的は達成できたので。では、帰してください」
「自分勝手だな……まぁ、ちょうどいい。こちらも本来の目的を果たせてもらうぞ」
そう言って、シュエルは私の肩を抱き寄せる。
「はひっ!?」
か、かかかかかか顔が近い……!!!
「な、なにすんですか!?この変態っ!!」
「はぁ!?変態とはなんだ、変態とは!!貴様に人間界への戻り方を教えようとしているだけで……」
「わざわざ抱き寄せなくてもいいじゃないですか!!」
「なんだ?姫様抱っこでもしてほしかったのか?」
「ち~が~い~ま~す~!!」
私が抗議の声を大きくしようとすると……
「ひやっ!?」
体に何かが流れ込んでくる感覚がし、悲鳴に似た声を上げると、シュエルの熱が離れる。
「俺の魔力の一部を貴様に渡した。これで魔界から人間界への行き来もできるようになるだろう」
「は、はぁ……」
「行き来の仕方は簡単。魔界に行きたい場合はその場で魔界へ行きたいと念じる。そして、人間界に返りたいときも同じようにすればいい」
「わ、わかりました……」
変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい……
「それでは、やってみろ」
「は、はい」
えっと……人間界に行きたいと念じる。
ギュッと目をつぶりながら、人間界へ戻るための手順をすると……
「まぶっ!?」
急に目をつぶっていてもわかるほど、目の前がまぶしくなり、私は目で手を隠し、数十秒してようやく目が慣れ、ゆっくりと目を開ける。
「帰って……きたのか?」
返事が来ると思っていたが私の独り言しか聞こえず、周りを見てみると、私はシャスタの近くの道端に一人で立っていた。
「シュエルも来てくれると思ったんだけど……」
チクリと胸が痛む。その感覚が不思議で仕方がなく私は気を晴らすために歩き出したのだった。
「本当……!?」
魔界に着いたとたんそう言うシュエルに、私は目を見張りながらそう聞く。
「あぁ。貴様はおそらく、ソフィアの魅了魔法にかかったのだろう」
「魅了魔法……?私はソフィアに魅了されていないけど……」
魅了魔法といえば、確かゲームにも出てきた魔法で、強制的に好感度をあげる魔法である。
そんな魔法は、男女問わず発動者に魅了される魔法なのだが……
「魅了魔法といっても、万能ではない。どうしても魅了魔法にかからない者が一人か二人ぐらいはいるんだ」
「それじゃあ、私以外にももしかしたら、魅了魔法にかかっていない人がいるのでは……?」
「いや、可能性はかなり低いだろう。通常の魅了魔法ならば、かからない者にかけても影響などでないのだが、貴様が魅了魔法にかかった時、味覚に異常が生じ、意識がもうろうとした……おそらく、ソフィアの魅了魔法はかなり強い者であろう。それゆえ、貴様が魅了魔法にかからなかったのは、奇跡としか言いようがない」
そこまでシュエルの話を聞いて、ふと疑問に思う。
「じゃあ何故、貴方には魅了魔法は効いていないのですか?」
「俺は魔王だからな。そんな安っぽい魔法にはかからん」
「魔王……ねぇ」
「はぁ。貴様はいつになったら俺を魔王だと認めてくれるのだ」
「そうですねぇ……私のいる国を滅ぼしてくれたら……とか?」
「無理だ」
「でしょうね。逆にここで分かったなんて言われたら逆に引きますよ」
……っと、こんな会話そしている暇はない。
「とにかく、私は、貴方に頼みたいことが……」
「おい。その前に、貴様、自分の名前を名乗ったらどうだ?」
……
「忘れてた」
よくよく考えてみれば、確かに私は名前を名乗っていない。
「私の名前はヴィル・テイラン」
「やはり、ヴィルといったか……」
「何か言いました?」
「いや、何でもない……それと、確かソフィアは貴様のことを公爵家、と言っていたよな?」
「えぇ、そうです。そして、私はレイナの親友でもあります」
「レイナ……巷で悪女と呼ばれている人物か。そういえば、貴様と会話した時も、レイナについて、意味ありげな質問をしていたな」
「……覚えてましたか」
モブである私の発言だなんて、覚えてないと思ったのに。それでも覚えていた彼は、どんだけ暇なのか。
「おい、貴様。今何か失礼なことを考えていたのでは……」
「――そんなわけないじゃないですか」
「……まぁ、いい。して、俺に何か用があったのではないか?」
「あぁ、そうでした。……いや、でももういいです」
「はぁ?気になるではないか」
「いえ。もう目的は達成できたので。では、帰してください」
「自分勝手だな……まぁ、ちょうどいい。こちらも本来の目的を果たせてもらうぞ」
そう言って、シュエルは私の肩を抱き寄せる。
「はひっ!?」
か、かかかかかか顔が近い……!!!
「な、なにすんですか!?この変態っ!!」
「はぁ!?変態とはなんだ、変態とは!!貴様に人間界への戻り方を教えようとしているだけで……」
「わざわざ抱き寄せなくてもいいじゃないですか!!」
「なんだ?姫様抱っこでもしてほしかったのか?」
「ち~が~い~ま~す~!!」
私が抗議の声を大きくしようとすると……
「ひやっ!?」
体に何かが流れ込んでくる感覚がし、悲鳴に似た声を上げると、シュエルの熱が離れる。
「俺の魔力の一部を貴様に渡した。これで魔界から人間界への行き来もできるようになるだろう」
「は、はぁ……」
「行き来の仕方は簡単。魔界に行きたい場合はその場で魔界へ行きたいと念じる。そして、人間界に返りたいときも同じようにすればいい」
「わ、わかりました……」
変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい……
「それでは、やってみろ」
「は、はい」
えっと……人間界に行きたいと念じる。
ギュッと目をつぶりながら、人間界へ戻るための手順をすると……
「まぶっ!?」
急に目をつぶっていてもわかるほど、目の前がまぶしくなり、私は目で手を隠し、数十秒してようやく目が慣れ、ゆっくりと目を開ける。
「帰って……きたのか?」
返事が来ると思っていたが私の独り言しか聞こえず、周りを見てみると、私はシャスタの近くの道端に一人で立っていた。
「シュエルも来てくれると思ったんだけど……」
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