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魔物の王とモブ令嬢
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「何なの……本当に何なの……!!」
夜。私は自分の部屋のベッドの上で、今日の出来事を思い出していた。
恥ずかしい。シュエルと話していると調子が狂う。
私が生きているのはあくまでレイナのための復讐のため。それ以外に、私が生きる理由なんてないのに……!!
「……てか、シュエルも攻略対象なのに、どうしてソフィアの魅了魔法が効いてないの?」
そう。シュエルもまほひかの攻略対象……といっても、二週目以降に攻略できる、隠し攻略キャラである。
ん?ということは、この世界は現実。ゲームのようにやり直しがきかないから、シュエルはソフィアになびかなかったのか……?
私はギュッと自身の胸元を掴む。
信用できない。でも、信用したい。彼は特別?でもどうして?
「あぁ、もうわかんない!!」
私は半ば叫びながらそう言い、毛布を頭からかぶる。
尽きぬ復讐心を、恋心なんかに上書きされたくない。
「明日からはいつもの私。もう、シュエルを特別な目では見ない」
そう口にすることで心に誓い、私は暗闇の中で目をつむる。
――このままずっと、目覚めることなんてなければいいのに
そう思いながら、私は深い眠りへと落ちていった。
―――――
「あれ?シュエル様。なんだか今日は魔力が少なく感じます」
そう言ったのは、俺――シュエル・ライリオンに仕えるメイドの一人である。
「あぁ、今日の昼、人間に魔力の一部を渡したからな」
「は!?魔力の一部を!?」
メイドが過剰に驚くのも無理はない。ライリオン国は魔物の国であり、国の民は皆、少なからず魔力を持っている。そんなこの国では魔力の多さが絶対であり、魔力の多さはこの国の地位の高さに比例する。
そんな国で俺が王をやっているのはいたって簡単。俺は生まれつき底なしの魔力を持っており、この国では圧倒的な魔力の多さを誇っていたのだ。
「しかも、人間にシュエル様の魔力を渡したのですか?魔王であるシュエル様からの魔力を受け取って、普通の人間が耐えれるとは……」
「それが耐えれたんだよ」
「はい!?そんな人物、一体誰なんですか!?」
「ヴィル……ヴィル・テイランだったかな?」
「テイランって……確か、人間界の公爵家でしたっけ?」
「あぁ、確か」
メイドとそんな会話をしながら、俺は手に持っていたグラスを口元に運び、ワインを喉に流し込む。
「しかし……何故、そのヴィル?さんに魔力を渡したのですか?」
「うん?まぁ、少しな」
曖昧な返事を返しながら、俺はグラスに残ったワインを飲みほした。
「大丈夫ですか?もう三本目ですが……」
「あぁ、今日はもう少しだけ飲ませてくれ」
「……かしこまりました。ですが、あと一本だけですからね?」
「それでいい」
「では、今から取ってきますのでお待ちください」
そう言ってメイドはワインを取りに、駆け足で俺の元から去る。
その間、俺は彼女に、思いをはせた。
ヴィルはもう忘れているとは思うが、あいつが幼き頃、俺たちは一度会ったことがある。愛らしいのに、どこか寂し気な彼女に俺は興味を示し、俺はヴィルに接触を図った。
ヴィルは俺に興味なさげだったが、めげずに話しかけると、言葉少なげに俺の言葉に返事をしてくれるようになり、彼女はきっと、俺を一国の王ではなく、一人の興味のない男として見てくれたんだと思う。
興味がないと言えばマイナス的なイメージのように聞こえるが、俺に興味を示さない人間などいないと思っていなかった故、俺は迷惑そうに俺を睨んでくるヴィルを無視して、子供のようにヴィルに一方的に話しかけていた。
しかし、ある時を境に、俺は彼女を探しても見つけることができなくなった。今思えば、彼女が暮らす国では三年間、貴族の義務として王立学園に通わなければならないらしいので、彼女は王立学園に通い始めたと考えて間違いはないであろう。
王立学園には、貴族の公子・公女を守るために、魔物よけの結界を張られているため、俺の強大な魔法すら効かなかったのであろう。
「ふっ、くだらんな。ヴィルの前だと俺はまるで幼子のようになる。俺はもう千年以上生きているというのにな」
彼女の前だと威厳すら消え去る。でも、嫌な気分にはならない。
不思議だ。そして、興味深い。
俺は一人にやりと笑いながら、ワインを待つのであった。
夜。私は自分の部屋のベッドの上で、今日の出来事を思い出していた。
恥ずかしい。シュエルと話していると調子が狂う。
私が生きているのはあくまでレイナのための復讐のため。それ以外に、私が生きる理由なんてないのに……!!
「……てか、シュエルも攻略対象なのに、どうしてソフィアの魅了魔法が効いてないの?」
そう。シュエルもまほひかの攻略対象……といっても、二週目以降に攻略できる、隠し攻略キャラである。
ん?ということは、この世界は現実。ゲームのようにやり直しがきかないから、シュエルはソフィアになびかなかったのか……?
私はギュッと自身の胸元を掴む。
信用できない。でも、信用したい。彼は特別?でもどうして?
「あぁ、もうわかんない!!」
私は半ば叫びながらそう言い、毛布を頭からかぶる。
尽きぬ復讐心を、恋心なんかに上書きされたくない。
「明日からはいつもの私。もう、シュエルを特別な目では見ない」
そう口にすることで心に誓い、私は暗闇の中で目をつむる。
――このままずっと、目覚めることなんてなければいいのに
そう思いながら、私は深い眠りへと落ちていった。
―――――
「あれ?シュエル様。なんだか今日は魔力が少なく感じます」
そう言ったのは、俺――シュエル・ライリオンに仕えるメイドの一人である。
「あぁ、今日の昼、人間に魔力の一部を渡したからな」
「は!?魔力の一部を!?」
メイドが過剰に驚くのも無理はない。ライリオン国は魔物の国であり、国の民は皆、少なからず魔力を持っている。そんなこの国では魔力の多さが絶対であり、魔力の多さはこの国の地位の高さに比例する。
そんな国で俺が王をやっているのはいたって簡単。俺は生まれつき底なしの魔力を持っており、この国では圧倒的な魔力の多さを誇っていたのだ。
「しかも、人間にシュエル様の魔力を渡したのですか?魔王であるシュエル様からの魔力を受け取って、普通の人間が耐えれるとは……」
「それが耐えれたんだよ」
「はい!?そんな人物、一体誰なんですか!?」
「ヴィル……ヴィル・テイランだったかな?」
「テイランって……確か、人間界の公爵家でしたっけ?」
「あぁ、確か」
メイドとそんな会話をしながら、俺は手に持っていたグラスを口元に運び、ワインを喉に流し込む。
「しかし……何故、そのヴィル?さんに魔力を渡したのですか?」
「うん?まぁ、少しな」
曖昧な返事を返しながら、俺はグラスに残ったワインを飲みほした。
「大丈夫ですか?もう三本目ですが……」
「あぁ、今日はもう少しだけ飲ませてくれ」
「……かしこまりました。ですが、あと一本だけですからね?」
「それでいい」
「では、今から取ってきますのでお待ちください」
そう言ってメイドはワインを取りに、駆け足で俺の元から去る。
その間、俺は彼女に、思いをはせた。
ヴィルはもう忘れているとは思うが、あいつが幼き頃、俺たちは一度会ったことがある。愛らしいのに、どこか寂し気な彼女に俺は興味を示し、俺はヴィルに接触を図った。
ヴィルは俺に興味なさげだったが、めげずに話しかけると、言葉少なげに俺の言葉に返事をしてくれるようになり、彼女はきっと、俺を一国の王ではなく、一人の興味のない男として見てくれたんだと思う。
興味がないと言えばマイナス的なイメージのように聞こえるが、俺に興味を示さない人間などいないと思っていなかった故、俺は迷惑そうに俺を睨んでくるヴィルを無視して、子供のようにヴィルに一方的に話しかけていた。
しかし、ある時を境に、俺は彼女を探しても見つけることができなくなった。今思えば、彼女が暮らす国では三年間、貴族の義務として王立学園に通わなければならないらしいので、彼女は王立学園に通い始めたと考えて間違いはないであろう。
王立学園には、貴族の公子・公女を守るために、魔物よけの結界を張られているため、俺の強大な魔法すら効かなかったのであろう。
「ふっ、くだらんな。ヴィルの前だと俺はまるで幼子のようになる。俺はもう千年以上生きているというのにな」
彼女の前だと威厳すら消え去る。でも、嫌な気分にはならない。
不思議だ。そして、興味深い。
俺は一人にやりと笑いながら、ワインを待つのであった。
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