【完結】妖精は竜に抱かれて夢を見る

エウラ

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ここはどこ? 僕はだれ?

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唐突に意識が浮上した。

途端に感じる違和感。
なんかふわふわすべすべなモノに包まれているような…。
こんなの、泉の寝床には無かったはず…?

なんだろう、と瞼を開くと、見たことのないモノが目に入った。
真っ白い布が上からつり下がっている。
綺麗な、透けるような布。実際透けている。

自分に掛かっている布もさらさらすべすべ。
体の下もふわふわさらさら。

…何で?
混乱した。
意味不明で思わず出た言葉が…。

「ここはどこ? 僕はだれ?」

だった。

「覚えてないのか?!」

急に降ってきた声にびくぅっとしたのは仕方がないと思う。
咄嗟にさらさらすべすべの掛布の中に隠れて震えていたら、別の声がした。

「ヴァルツ様、いきなり大声を出したら驚くに決まってるでしょ! 静かに優しく! 侍医さんにも言われたでしょう、ガラス細工のようにって」

本当、番いの事になるとポンコツなんだから。

誰かの声に諭されたようで、今度は静かに声をかけられた。

「すまない。体は大事ないか?」

そう言ってる声が優しそうだったので、そっと顔を出してみた。

目の前に心配そうな蜂蜜色の瞳があった。
途端に先ほどの事が甦ってきた。

「・・・ヴァルツさん?」

声をかけたら、シュンとした顔がぱあっと綻んで、思わず僕もにっこりした。

「あの、僕はリノって言います。・・・初めまして?」

のそのそ出てきてふかふかの上で正座をして挨拶した。
初めての挨拶だからこれでいいはず。
さっきは挨拶出来なかったもんね。

「・・・ヴァルツ様、本当に有無を言わせずに連れて来ちゃったんですね?」

さっきの声の人が呆れというか怒りというか何とも言えない声でヴァルツさんに問いかけた。
気まずそうにそっと目をそらすヴァルツさんが可愛らしく見えて、思わずふふっと笑ってしまった。

「あの、大丈夫です。驚きましたけど、元々あそこには僕しかいないし、僕がいなくなっても動物達は別に住処があるので。・・・ただ」
「・・・・・・ただ?」

2人がごくりと唾を飲み込んだ。

「どうして僕はここにいるのかなあって?」

その瞬間、部屋の空気が凍った。そりゃあものの見事に。
実際、物理的に部屋が凍っていた。

僕は寒さに震えながら2人を見ていた。

もう一人の男の人がヴァルツさんの顔面を鷲掴みにして叫んだ。

「あんたはホントに! このポンコツ!! 何度も言っただろうが! 手順を踏んで、説明して、承諾を得てから連れて来いと!! この子、何にも分かってねえじゃねえか!!」
「っアルフ、すまんて、俺も、暴走しちゃったけど・・・・・・!! ま、まてまて!! 死ぬぐふぅ!!」
「いっぺん死んでこいや! 馬鹿たれ!!」

・・・・・・お願いします。誰か助けて・・・。
寒さと恐怖で再び意識を失いました。



僕が再度、意識を取り戻して見た天蓋がさっきと違ってたのでつい「ここはどこ?」と呟いてしまい、冒頭のやり取りを再現することになった。

最初の部屋は氷漬けになってしまったので、部屋を移したそうです。なるほど。

それで、先ほどの男の人はアルフさんと言って、ヴァルツさんの側近だそうです。
ヴァルツさんの従兄弟だから、側近だけど気の置けない仲だそう。

「さっきはごめんね?」

2人共、目に見えてショボンとしている。
あんなに大きい体を縮こませて。

思わず笑ってしまう。

「大丈夫です。ちょっと寒かったけど。妖精族の住む場所は大抵常春なので新鮮でした」


さて落ち着いたところで、と僕がここにいる訳を説明してくれました。

僕達妖精族は親兄弟とかないのでよく分からない事なんだけど、種族によっては『番い』というものがあり、生涯で出逢える伴侶、結婚相手という存在だそうだ。

必ず出逢える訳ではなく、別の相手と結婚したり、ずっと結婚しない者もいる。

今回、偶然にもヴァルツさんの『番い』が僕で、僕の居場所を察知したヴァルツさんが、僕への説明もほどほどに(というか全くなく)自分の家まで連れて来てしまったんだと。

たまたま僕一人きりだったから良かったけど、家族がいたりしたら、誘拐だもんね。

・・・ああ、なるほど。
それでさっきの喧嘩に発展したわけだ。
納得。

「それで、僕はこれからどうしたらいいんでしょう?」

僕の帰る場所はあの泉だけど、僕が居ても居なくても困らない。
まあ、帰れと言われてもどこをどうして行けば帰れるのかも分からない。

飛べないから。

・・・・・・こんな僕が番いって、ホントかな?
こんな、羽が2枚のろくに魔法も使えない出来損ないなのに。

顔に出ていたんだろうか、ヴァルツさんがそっと抱きしめてくれる。

温かいな。

そういえば、僕は妖精族の皆に一度でも抱きしめられた事が無いな。
いつも離れたところから、皆が戯れて抱き合ったり手を繋いだりしているのを見ていただけだった。

泉の動物達は、時間になると皆、家族の元に帰って行く。

それを寂しいと、いつも思っていたんだ。

「大丈夫。俺と家族になろう。家族になって、俺達とここで暮らそう、リノ」
「・・・・・・いいの?」
「当然さ。愛してるんだ、リノの事を。一目惚れだった。言っておくが、普段はあんな風じゃないからな。リノの事だとああなってしまうんだ!」
「ふふっ。・・・じゃあ、よろしくお願いします」

まだ、愛だとか恋だとかよく分からないけど、この温もりを手放したくない。

ヴァルツさんと、一緒にいたい。

皆と一緒にここにいたい。

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