【完結】妖精は竜に抱かれて夢を見る

エウラ

文字の大きさ
3 / 10

竜の逆鱗

ヴァルツさんに僕の今の気持ちを知ってもらって、まだ同じだけの想いは返せないけど、番いになる事を承諾した。

とりあえず、番いの第一歩としてヴァルツさんの逆鱗を飲むことになった。

「逆鱗て、なんです?」
「竜人が誰でも持っている、一枚だけある特別な鱗でね。番う相手に飲ませるんだけど、ほら、俺達のように相手が違う種族の場合があって、そうすると寿命とか体質とか色々違って番えないから竜人と同じになるように変化させる事が出来るモノなんだ」
「・・・ああ、確かに僕は男の体だし、そもそも妖精族は孕めないですしね」

なるほど。
ん?
じゃあ、僕は女性体になるってこと?

「あの、僕は女の子の体になるって事です?」
「ああ、いや。姿はそのままで、体の中に子が出来る器官が作られるんだよ。後は俺と同じ寿命になる・・・死ぬときも一緒だ。いいかい?」

ちょっと不安げに揺れた蜂蜜色の瞳が僕を捉えた。

「もちろんですよ。独りぼっちじゃないなんて、こんなに嬉しいことはないです」

そう言うとぱあっと笑って嬉しそうに言った。

「リノ、愛してる!」
「嬉しいです、ヴァルツさん」
「逆鱗を飲むと、体を造り変える間、暫く眠るんだ。その間は俺がずっと世話をするから心配ないからね」
「はい」

そうして、ヴァルツさんは喉の下辺りにあった鱗をプチッと取り浄化すると、僕に差し出す。

「コレが逆鱗だ。・・・・・・飲んでくれる?」
「ふふ。あーん」

ヴァルツさんは顔を真っ赤にして口元を押さえてぷるぷるしていた。
僕が口を開けると、赤い顔のまま舌の上にそっと乗せてくれる。

それをなんのためらいもなくコクンと飲み込んだ。
喉を通っていくのが分かった。
でもその後はふわっと溶けたようで・・・。

甘いような爽やかなような、何とも言えないかぐわしい香りがして、、僕の意識はストンと落ちた。





リノが逆鱗を飲んでくれた。

俺と死ぬまで一緒と言ったら、、嬉しいと、ためらいもなく飲んでくれた。

飲み込んですぐに逆鱗は溶け、、体中に染み渡った。これから体を造り変えるための副反応で当分の間、眠りにつく。

その期間は相手によってまちまちで、、早い者は数週間、長い者だと1年近くかかるという。

リノは果たしてどれくらいか・・・。

今まで妖精族と番った竜人はいない。
そもそも妖精族は自然発生するため生殖機能をもっていないのだ。
だからか、番いが出ることが無かった。

それが今回初めて俺の番いとして現れた。

リノ。

君が出来損ないと言われていた事が関係するのか?


リノをベッドに寝かせてそっと真っ白な髪をとく。白い睫毛に縁取られた瞼はしっかりと閉じられ、さっきまで俺を見つめていた虹色の瞳を隠してしまっている。

「リノ。早くその瞳を見せて。綺麗な虹色の瞳に俺を映しておくれ」

そう言って瞼にキスを贈った。


それからはリノの部屋に執務室を設けて目の届く所で仕事をする。
俺は竜人族の王族の一人で第3王子なのだ。
それなりに仕事があり忙しい。

まあ、俺に番いが出来た事もあって最近は仕事量をセーブしてくれているようだが。

時折、兄や父が様子見と称して突撃してくる回数が多いが、リノを誰にも見せたくないのですんでのところで追い返している。


リノが眠ってひと月ほど経った頃、リノの胸の真ん中辺りに薄らと鱗が現れてきた。
竜人に体質が変わってくると、体のどこかに相手と同じ鱗が現れる。
完全に硬くハッキリと出れば体が造り変わった合図だ。

もう少しで目を覚ますだろう。





・・・夢を見ていた。

綺麗な空の下、僕はふわふわと漂っていた。
懐かしい感じ。

ああ、僕は生まれる前に消えてしまった竜人の卵だった。

思い出した。

何故か育ちきれなくて、うんと小さいうちに卵の中で死んでしまった。

僕の魂はふよふよ飛んで流されて、妖精族の土地でまだ形になっていない魔力の塊にくっついた。

その拍子に、僕の死ぬまでの竜人としての、うんと小さい体が妖精族の体となって形作られたんだ。

竜人は翼が2枚。

だから無意識に2枚の羽になった。

魔力が少ないのも当然。

僕がくっついたせいでただの魔力の塊に僕の意識が宿り、急に形が出来てしまったから。

本当ならもっともっと魔力が集まって形になるのに、ただの魔力だったから僕の魂に吸収されちゃったんだ。

そしてあの泉は聖域近くで魔力が豊富だった。

偶然が重なって、少しずつ魔力を取り込んでいった僕はあの日、睡魔に耐えきれずに眠りについた。今のように・・・。

僕の体が魔力に耐えられる器に造り変えられたんだ。
だから成長してた。

じゃあ、もしかして飛べるようになったのかな?
試してないから分からないな。
目が覚めたら試してみよう。
飛べたらいいな。
ヴァルツさんと一緒に空を飛んでみたい。

ヴァルツさん。

・・・・・・逢いたいな。

あなたのその蜂蜜色の綺麗な瞳に映りたい。



大好きだ。

僕も『一目惚れ』だったみたい。

思い出したから。
竜人の魂だったから分かる。

『番い』

あなたの相手が僕で良かった。

魂だけになっても生きようとしていたんだ。
番いであるあなたに逢うために、きっと・・・。





「ーーーおはよう、リノ。おかえり」

目を開けたら蜂蜜色の綺麗な瞳に僕が映って。

僕の瞳にはヴァルツさんが映っている。

「ーーーおはようございます、ヴァルツさん。・・・・・・ただいま」



こんな挨拶が出来る今が、とっても幸せだ。








感想 2

あなたにおすすめの小説

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

オメガなのにムキムキに成長したんだが?

未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。 なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。 お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。 発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。 ※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。 同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

【8話完結】魔王討伐より、不機嫌なキミを宥める方が難易度「SSS」なんだが。

キノア9g
BL
世界を救った英雄の帰還先は、不機嫌な伴侶の待つ「絶対零度」の我が家でした。 あらすじ 「……帰りたい。今すぐ、愛する彼のもとへ!」 魔王軍の幹部を討伐し、王都の凱旋パレードで主役を務める聖騎士カイル。 民衆が英雄に熱狂する中、当の本人は生きた心地がしていなかった。 なぜなら、遠征の延長を愛する伴侶・エルヴィンに「事後報告」で済ませてしまったから……。 意を決して帰宅したカイルを迎えたのは、神々しいほどに美しいエルヴィンの、氷のように冷たい微笑。 機嫌を取ろうと必死に奔走するカイルだったが、良かれと思った行動はすべて裏目に出てしまい、家庭内での評価は下がる一方。 「人類最強の男に、家の中まで支配させてあげるもんですか」 毒舌、几帳面、そして誰よりも不器用な愛情。 最強の聖騎士といえど、愛する人の心の機微という名の迷宮には、聖剣一本では太刀打ちできない。 これは、魔王討伐より遥かに困難な「伴侶の機嫌取り」という最高難易度クエストに挑む、一途な騎士の愛と受難の記録。 全8話。