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22 シュルツの家族 1
しおりを挟む次の日、精霊王に昨日のシュルツの家族の話をすると、とんとん拍子に事が運んであっと言う間にシュルツの家族と会う段取りが組まれた。
『何、竜の子の父と兄とな?』
『おお、ようやっとか? 遅いくらいだな』
『其方の家族なら我等、皆、大歓迎じゃ』
『我等も会ってみたかったのだ』
『心配すんなイツキ。俺がちゃんと良いヤツかどうか見極めてやるからな』
『・・・竜の子良い子。きっと、良い竜の人』
光の精霊王ルキア、闇の精霊王ダルク、火の精霊王イフリート、水の精霊王オンディ、風の精霊王ヴィント、地の精霊王ノルム。
全ての精霊王が一堂に会するなんて稀な状態だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
朝、ちょうど来ていた風の精霊王ヴィントにかくかくしかじかと話をしたら全員に声をかけてくれて、あっと言う間に集まって打ち合わせを始めたのだ。
『問題は竜帝国からここまでの距離だが・・・』
『竜の子は竜体であっと言う間に・・・とはいかないがそこそこ早く来れるがなあ。まあ、冒険者だしな、時間も体力も十分あるから良いが・・・』
『だが其奴の親は竜帝国の宰相であろう? 幾ら速く翔んでもそんなには時間は取れまいて』
ルキアの言葉にヴィントがシュルツの移動手段を例に挙げ、そこにダルクがシュルツの父の役職を告げた。
「・・・・・・良くご存知で」
話していないのに何故と軽く目を瞠った。
『我等は精霊の王ぞ。情報はあちらこちらの精霊達から常に最新を仕入れておる』
「・・・恐れ入ります」
恐縮しきりのシュルツにキョトンとしながらイツキが声をかけた。
「シュルツ、さいしょう・・・って、何?」
「ああ、俺の住む国の役職で王の補佐というところかな」
「さいしょう・・・宰相・・・ああ、え? それってめちゃくちゃ偉い人じゃないの?! え? シュルツって、もしかして凄いお家の子?!」
「・・・あー、まあ、凄いのは家と父と兄で俺は全然偉くないぞ。まあ、金持ちではあるが・・・」
微妙な顔でそう言うシュルツに、そういうモノかと気にしないことにした。
「そっか、シュルツはただのシュルツだもんね。僕と一緒に暮らしてくれてる優しくて強くて料理上手でカッコいい竜人さんだもんね」
「・・・・・・イツキ・・・」
樹希がにっこり笑ってそう言うと、虚を突かれたようにシュルツが樹希の名を呼び、それからぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「うわっ、どうしたの? シュルツ?」
おーい、とシュルツの背中をタシタシと叩くが微動だにしないので、そのまま背中に腕を回してみた。
お互いがぎゅっと抱き合う体勢に、精霊王達は微笑ましい顔をしていた。
『・・・そうじゃ、イツキ。お主、以前魔法の練習でアレを作っておったろう?』
「───アレ?」
ルキアが思い出したようにイツキに聞いてきたのでイツキは首を傾げた。
『魔石に転移の魔法を籠めたモノだ』
ダルクに言われて思い出す。
「ああ、アレ? それならば倉庫に突っ込んであるよ。・・・あ、そういうこと?」
「・・・・・・どういう事だ?」
精霊王とイツキのやり取りに顔をあげたシュルツ。
「転移の魔法を籠めた魔石を使えば、ここまであっという間って事」
「・・・イツキは転移の魔法を使えるのか?」
転移魔法は適性があっても魔力量や本人のセンスで必ずしも使えるものではない、稀少なモノだ。
それを樹希は使えるらしかった。
「うん。精霊王達と魔法の練習してたら使えるようになったんだ。転移の魔法はねぇ、闇のダルクの力なんだよー。闇があれば何処にでも行けちゃうんだ。あ、でも知らない場所は無理なんだけど」
だから僕はこの森から転移出来ないね、他を知らないから。
そう言ったら何とも言えない顔をされた。
───うん、宝の持ち腐れって思ったね?
「それならば、滝に落ちたときに転移すれば良かったろう。森とロッジならば分かるのだろう?」
シュルツのごもっともな意見にシュンと眉を下げる樹希。
「・・・僕、焦ると咄嗟に魔法使えなくて・・・」
力無く呟くイツキに遠慮無い精霊達。
『イツキ、まだまだお子さまー』
『ポンコツー!』
『この前のスライムの時もわたわたしてたから、僕たちが教えてあげたの』
『小さい火の魔法使ってって』
「・・・・・・うん、あの時はありがとうね、皆」
『『『『どういたしましてー!』』』』
追い討ちをかけられたが実際そうなので、苦笑するに留める。
そんな様子をシュルツはなるほどと見つめていた。
エルフは元々魔法に長けている種族だから息をするように使えるのが当然と思っていたが、以前聞いたところ、イツキは4年前に初めて使ったらしい。
それにこの森は外に出なければほぼほぼ安全な為、魔法を使うことは少ないのだろう・・・浄化魔法と治癒魔法以外は・・・。
「・・・・・・でも自己防衛のためにはもう少し出来るようになって欲しいけどな・・・」
シュルツはそう苦笑した。
・・・その後、樹希に頼まれて倉庫から取り出した魔石を見てギョッとしたりと少々のハプニングはあったが、概ねの手段は決まった。
「じゃあ、気を付けてね?」
「ああ、なるべく早く戻るよ。・・・・・・精霊王様達もイツキをお願いします」
『しっかりと監視しておくよ』
「むー、監視って酷いなあ!」
はははっと皆の笑いの中、シュルツは竜に変化して精霊の森を飛び立った。
シュヴァルツ家に転移の魔石を届ける為だ。
樹希が練習で作ったというその魔石に闇の精霊王ダルクがちょっと手を加えて、ロッジとシュヴァルツ家の間で転移できるようにしたのだ。
対となる魔石に使用者の条件を組み込んで、シュヴァルツ家とロッジにそれぞれ置く。
そうすれば行き先をキーワードにして魔石の力で転移出来るのだ。
もちろん、転移の条件に人数制限や悪意の有無など、樹希や精霊の森に害のある存在は弾かれるようになっているので来ることは出来ない。
『詳しいことは秘密じゃ。条件を知って、上手く誤魔化されては困るのでな』
そう言ってニヤリと悪い笑みを作ったダルクだった。
「行きは翔んで行くしかないけど、帰りは転移の魔石で一瞬だから、ちょっとだけ・・・寂しいけど、大丈夫」
そうポツリと呟いて、精霊王達とリビングでまったりする樹希。
精霊王達もそんな樹希の寂しさを紛らわせようと、あちこちで仕入れた色んな噂話を樹希に聞かせたのだった。
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