【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス

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第四十三話 一方その頃…(ヴァッシュ編)

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 ヴァッシュは海の上を走っていた。

 …とは言っても、足で走っている訳ではなく…?

 船を使って走っているのだが、ジェットバイクのように船に箒を設置してそれにまたがって運転をするのだった。

 ここまでになるまでの経緯を話すとしましょう。

 ヴァッシュは箒を作ってから島を脱出する方法を考えた。

 ところが…この島に藁はない。

 藁の代わりに雑草で代用をしようとしたけど、マナの薄いこの土地では雑草すら生えていなかった。

 藁の代わりに…と考えて、ヴァッシュは普段口にしている海藻を藁代わりにしようと思っていた。

 普段ヴァッシュが口にしている海藻は昆布だった。

 ただ昆布という海藻は、乾燥すると硬くはなるのだが…触ると折れるし、とても藁の代わりになる海藻には適さなかった。

 その為…?

 乾燥してもある程度しなりがあり、藁に似た物を代用する為にモズクを採取して乾燥させて箒を完成させた。

 モズクも乾燥をすれば硬くはなるのだが、乾燥した昆布よりは若干のしなりがあった。

 ここまでは良い…?

 問題はイカダを進ませて、魔法が使える場所まで移動してから箒に跨って移動しようとした。

 …が、以前も言った通り…

 ヴァッシュは箒には乗れずに飛ぶ事は不可能だった。

 箒に乗れるのはセンスが影響をして来る。

 ヴァッシュに箒に乗れるセンスは無いので、跨っても飛ぶ事は出来なかった。

 …まぁ、乗る事自体は出来る。

 問題は重心が安定せずに、すぐにひっくり返って地面に落ちるという感じだった。

 ※この世界では、箒を乗りこなせるかどうかによって飛行魔法が可能になる。

 しつこい様だが、箒に乗るにはセンスが要求される。

 そのセンスが無いと、どんなに練習しても乗る事は叶わなかった。

 カリオスなら…仮に魔法が使えたとしても、無駄な事はすぐに諦めて他の方法を探すのだが、ヴァッシュはカリオスと違って頭は悪く無いので対抗策を考える。

 そして試行錯誤の結果、船に箒を固定させるという方法を思いつき、高いところは飛べない代わりに海上を走る方法を思い付いたのだった。

 そして現在では、海上を走っているという事だった。

 この方法はイカダの重量が関係している為に、空を飛ぶ速度と同じという訳では無い。

 だけど、オールでひたすら漕ぐという方法よりは圧倒的に速かった。

 その為に、物の数分で無人島周辺の厄介な海域を抜けることが出来て、前回よりも距離を稼ぐ事が出来たのだった。

 「良し、この方法なら大陸を目指す事が出来るな!」

 確かに…この方法なら楽に移動出来る上に、大陸に移動出来るだろう…が、無人島と他の大陸までは偉く離れている。

 船の速度も多少速いとは言っても、馬車の全速力とあまり大差がない為に…?

 10日過ぎても大陸どころか、島の影すら見えなかった。

 そしてファスティアの策略が発動している事に、ヴァッシュは気付いていなかった。

 仮に無人島を脱出する事が出来たとはいえ、大陸に辿り着くまでに偉く距離が離れている。

 ファスティアは無人島を仮に脱出が出来たとしても、他の場所に島影すら見えない事で絶対に心が折れる場所を指定したのが…あの無人島だった。

 「本当にこっちで方向は合っているんだよな?」

 ヴァッシュが現在位置を知る方法は、夜に晴れた星空でしか確認は出来ない。

 ここ最近は曇りが続いていて、正確な場所を把握出来ていなかった。

 それでもヴァッシュはひたすら走り続けた。

 それから5日後になり、島の影が見えたので近付いて行くと…?

 見た目はあの無人島に良く似た形の島だった。

 ヴァッシュはとりあえず上陸し、そこで魔法を使ってみると…?

 問題なく魔法を使えた事が出来たので、無人島に戻った訳ではなくて安堵の溜め息を吐いた。

 …が?

 この島でも虫の声は一切聞こえなかった。

 「虫がいないという事は…この島での環境が適さない何かが関係するのか?」

 ヴァッシュは色々歩いてみたが、島の中には雑草らしき草は生えておらず、そして開けた場所に出ると…其処には広い畑になっていた。

 畑があるという事は、誰か住んでいる?

 そう思ったが、人の気配は全くなくて…朽ち果てそうな古屋があるだけだった。

 だが、畑には何の植物なのか分からない物が群生していた。

 ヴァッシュは久々に見る植物に感動を覚えたが、確認すると…その感動も一瞬にして失せたのだった。

 「これは…全て麻薬の原料か⁉︎」

 そう…この畑に生えていた植物は、街や村で一部の特権階級の者達が娯楽で使用しているドラッグスという麻薬の原料だった。

 立派な畑なので、少しは期待していたヴァッシュだったが…食べられる物ではないと思うと気分が一気に下がったのだった。

 「これだけ群生していれば、かなりの金額になるのだろうが…数年は収穫されることもなく放置されている様な気がするな?」

 恐らく…ここを管理していた悪党が、麻薬の一斉摘発により処分された為に放置されている様だった。

 だが、ヴァッシュには一部の希望の光を感じていた。

 これだけ広い土地を畑にするのだから、近くに大陸があるのではないかと思っていた。

 …だが、一番高い場所から望遠筒を見ても島影らしきものは見えない。

 まぁ、御禁制の植物を栽培しているのだから…大陸に近い筈も無いか。

 ヴァッシュは以前いた無人島から拠点をこの場所に移す事にし、この島で拠点である小屋を建てて、周辺の海域で食糧を確保する事に成功した。

 海藻は勿論あるが、貝や魚を得る事が出来て…ヴァッシュは久々に海藻では無い他の物を食べる事が出来て感動を覚えていた。

 「さて、後はこれをどうするかだが…?」

 精製すれば麻薬にもなる物だが、用途によっては医療用の麻酔としても使用は出来る。

 だが、これを誰かに発見されて悪用される訳にもいかない。

 ヴァッシュは全てを燃やそうと考え…るまえに、効果の程を確かめる為に葉を乾燥させてから紙に巻いて火を付けて吸い込んだ。

 もしも人の道を外れる様な物なら、一刻も早く始末をした方が良いと考えたからだった。

 だが…?

 ヴァッシュの身体に何とも言えない快楽が身体を駆け巡った。

 その甘美な快感は、未だ感じた事がない感覚を感じていた。

 するとヴァッシュは、今すぐ燃やすのは勿体無いと感じ始め…幾つかを収穫して収納魔法の中に放り込んだ。

 それから暫くは…ヴァッシュの生活も変わり始めていた。

 午前中に食糧を得てから食事をし、午後からは麻薬を使用して快楽に身を置いていた。

 雨の日には…保管された食糧を食べ終わると、寝る迄の間は麻薬で快楽を味わっていた。

 …頭の中では食糧を確保して、一刻も早く大陸に向かう…と考えているのだが、この甘美な快感に中々抜け出さずにいた。

 明日こそは!

 明日こそは…!

 そう思いながらヴァッシュは、中々出発が出来ずにいた。

 この先ヴァッシュは、一体いつになったら大陸を目指す為に出発するのだろうか?
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