【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス

文字の大きさ
46 / 63

第四十四話 ドレクスの怯える理由

しおりを挟む
 ステファニーはドレクスの頭を片手で掴むと、そのまま持ち上げてから床に叩き付けて押し付けた。

 酷く激怒したステファニーと怯えるドレクス…

 一体何が合ったのだろうかと知りたい所だけど、あんな細身の女性が体格の良いドレクスに対してそんな事が出来る人を前にして、私は何も言えなくて黙っていた。

 そしてステファニーはドレクスを地面に押し付けたままコチラを振り向くと、懐かしさと愛しそうな顔をしてメナスを見て言った。

 「あぁ…メナスちゃん、こんなにも大きく立派に育って…」

 「ママ…会いたかった!」

 メナスは今にもステファニーの元に駆け寄ろうとしたけど、ステファニーは手を出して静止させた。

 「感動のハグはもうちょっと待っていてね、今からパパをお仕置きするから…それと、フレクスとレドナースも久し振りね!」

 「あぁ…」

 「うむ…」

 二人とも…口数は少ない訳ではないんだけど、この時だけはなぜか口数が少なかった。

 すると押さえ付けられているドレクスがこちらに向かって助けを求めて来た。

 「フレクス、レドナース…助けてくれ‼︎」

 「いや…今の状況には同情はするが、あんな事をしてしまったのだから…なぁ?」

 「拙者は止めたのに、お主が先走ってこんな事になったのだろう? これも因果応報だから、大人しく捌かれろ!」

 「この薄情者‼︎」

 「うんうん、フレクスもレドナースも立場を弁えているわね…っと!」

 ステファニーは笑みを浮かべながら私の方を見ると、私と目が合った…けど、優しそうな笑顔とは別に目は笑ってはいなかった。

 「ドレクス、この子はだぁれ?」

 「えーっとだな…」

 「ママ、この子はファスティアと言って…私達のパーティーに加わってくれて、更に私の魔法の先生です。」

 「そうなんだ~ふむふむ~? 貴女は…聖女よね?」

 「え⁉︎」

 私の事を聖女と見抜く事が出来た人に初めて会った。

 魔力の高さの所為で、凄腕の魔導師とは言われた事はあったけど、聖女と見抜かれたのはステファニーが初めてだった。

 「ど、どうしてその事を⁉︎」

 「私もオルシェフリッツの聖女だからね!」

 私以外の聖女にも会ったのは初めてだった。

 だから…私が聖女だと一目で見抜く事が出来たのね?

 「ファスティアが聖女って…?」

 「あ~~~えっとねぇ?」

 「あ、御免なさい…秘密にしていたのね?」

 まぁ、バレてしまったのだから今更言い訳のしようも無い。

 ただ、今後の旅に何かしらの影響は出てくるんだろうけど…?

 私はそんな事よりも、フレクスに何故ステファニーさんがこんなに激怒している理由を聞いたのだった。

 「あぁ、俺達が町から出発する少し前に大きな地震があってな、そこで街では建物が半分以上…倒壊するという被害があったんだ。 そこで町の住人達との意見が二つに割れてな、一方は町を捨てて何処かに移り住む派と復興して元通りにする派にな。」

 すると、レドナースが話に加わって来た。

 「当時のドレクスは町を捨てて離れるという派閥で、ステファニーは町を復興させるという派閥に分かれていた。 当時のドレクスは、まだ小さかったメナスに苦労を強いられる様な生活を送って欲しくはなくて、旅に連れ出すという言葉に対し…ステファニーは酷く反対をした。」

 「分からないなぁ…それなら皆で協力して復興した方が良く無いかな?」

 「ファスティアの言いたいこともわかるんだが、俺達のいた町は少し特殊な場所でな…年中風が強く、夜には極寒近く気温が下がるという場所だった。 更に町が復興するまでに他人の家に身を寄せる…という事が叶わなくてな、助かる為には別な町や村に赴く必要があったんだよ。」

 「それで…まぁ、ドレクスがメナスを連れて町から旅立ったから怒っているの?」

 「いや…ドレクスがステファニーの飲み物に眠りのポーションを入れて眠らせた挙句、全身を縄で拘束してから町の地下貯蔵庫の中に放り込んで、その隙にメナスを連れて逃げたんだよ。」

 「それは…」

 「あまりにも聞き分けが悪かったからとドレクスは言っていたが、後になって誰にあんな事をしでかしたのかと恐怖したドレクスは、次々と拠点を移したんだが…?」

 「大陸にいると、何処にいても追いかけられそうな予感がすると言って…すぐさま他大陸に移動したという訳なんだ。 それから数年は見つからずに済んだんだが…?」

 そんな事をしたら怒るに決まっているでしょう?

 なるほどねぇ…だからステファニーがドレクスに対しての折檻が凄まじいのね?

 私はステファニーに折檻されているドレクスを見て、両手を合わせて祈った。

 そしてこのやり取りは、翌日の夕方になるまで解放されることはなかった。

 まぁ、ドレクスの自業自得だからねぇ?

 私は何か肝心な事を忘れている気がしていたんだけど…?

 はて、何だったかしら?
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。 伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。 セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。 そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに…… 婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。 そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

王命により泣く泣く婚約させられましたが、婚約破棄されたので喜んで出て行きます。

十条沙良
恋愛
「僕にはお前など必要ない。婚約破棄だ。」と、怒鳴られました。国は滅んだ。

処理中です...