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第四十四話 ドレクスの怯える理由
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ステファニーはドレクスの頭を片手で掴むと、そのまま持ち上げてから床に叩き付けて押し付けた。
酷く激怒したステファニーと怯えるドレクス…
一体何が合ったのだろうかと知りたい所だけど、あんな細身の女性が体格の良いドレクスに対してそんな事が出来る人を前にして、私は何も言えなくて黙っていた。
そしてステファニーはドレクスを地面に押し付けたままコチラを振り向くと、懐かしさと愛しそうな顔をしてメナスを見て言った。
「あぁ…メナスちゃん、こんなにも大きく立派に育って…」
「ママ…会いたかった!」
メナスは今にもステファニーの元に駆け寄ろうとしたけど、ステファニーは手を出して静止させた。
「感動のハグはもうちょっと待っていてね、今からパパをお仕置きするから…それと、フレクスとレドナースも久し振りね!」
「あぁ…」
「うむ…」
二人とも…口数は少ない訳ではないんだけど、この時だけはなぜか口数が少なかった。
すると押さえ付けられているドレクスがこちらに向かって助けを求めて来た。
「フレクス、レドナース…助けてくれ‼︎」
「いや…今の状況には同情はするが、あんな事をしてしまったのだから…なぁ?」
「拙者は止めたのに、お主が先走ってこんな事になったのだろう? これも因果応報だから、大人しく捌かれろ!」
「この薄情者‼︎」
「うんうん、フレクスもレドナースも立場を弁えているわね…っと!」
ステファニーは笑みを浮かべながら私の方を見ると、私と目が合った…けど、優しそうな笑顔とは別に目は笑ってはいなかった。
「ドレクス、この子はだぁれ?」
「えーっとだな…」
「ママ、この子はファスティアと言って…私達のパーティーに加わってくれて、更に私の魔法の先生です。」
「そうなんだ~ふむふむ~? 貴女は…聖女よね?」
「え⁉︎」
私の事を聖女と見抜く事が出来た人に初めて会った。
魔力の高さの所為で、凄腕の魔導師とは言われた事はあったけど、聖女と見抜かれたのはステファニーが初めてだった。
「ど、どうしてその事を⁉︎」
「私もオルシェフリッツの聖女だからね!」
私以外の聖女にも会ったのは初めてだった。
だから…私が聖女だと一目で見抜く事が出来たのね?
「ファスティアが聖女って…?」
「あ~~~えっとねぇ?」
「あ、御免なさい…秘密にしていたのね?」
まぁ、バレてしまったのだから今更言い訳のしようも無い。
ただ、今後の旅に何かしらの影響は出てくるんだろうけど…?
私はそんな事よりも、フレクスに何故ステファニーさんがこんなに激怒している理由を聞いたのだった。
「あぁ、俺達が町から出発する少し前に大きな地震があってな、そこで街では建物が半分以上…倒壊するという被害があったんだ。 そこで町の住人達との意見が二つに割れてな、一方は町を捨てて何処かに移り住む派と復興して元通りにする派にな。」
すると、レドナースが話に加わって来た。
「当時のドレクスは町を捨てて離れるという派閥で、ステファニーは町を復興させるという派閥に分かれていた。 当時のドレクスは、まだ小さかったメナスに苦労を強いられる様な生活を送って欲しくはなくて、旅に連れ出すという言葉に対し…ステファニーは酷く反対をした。」
「分からないなぁ…それなら皆で協力して復興した方が良く無いかな?」
「ファスティアの言いたいこともわかるんだが、俺達のいた町は少し特殊な場所でな…年中風が強く、夜には極寒近く気温が下がるという場所だった。 更に町が復興するまでに他人の家に身を寄せる…という事が叶わなくてな、助かる為には別な町や村に赴く必要があったんだよ。」
「それで…まぁ、ドレクスがメナスを連れて町から旅立ったから怒っているの?」
「いや…ドレクスがステファニーの飲み物に眠りのポーションを入れて眠らせた挙句、全身を縄で拘束してから町の地下貯蔵庫の中に放り込んで、その隙にメナスを連れて逃げたんだよ。」
「それは…」
「あまりにも聞き分けが悪かったからとドレクスは言っていたが、後になって誰にあんな事をしでかしたのかと恐怖したドレクスは、次々と拠点を移したんだが…?」
「大陸にいると、何処にいても追いかけられそうな予感がすると言って…すぐさま他大陸に移動したという訳なんだ。 それから数年は見つからずに済んだんだが…?」
そんな事をしたら怒るに決まっているでしょう?
なるほどねぇ…だからステファニーがドレクスに対しての折檻が凄まじいのね?
私はステファニーに折檻されているドレクスを見て、両手を合わせて祈った。
そしてこのやり取りは、翌日の夕方になるまで解放されることはなかった。
まぁ、ドレクスの自業自得だからねぇ?
私は何か肝心な事を忘れている気がしていたんだけど…?
はて、何だったかしら?
酷く激怒したステファニーと怯えるドレクス…
一体何が合ったのだろうかと知りたい所だけど、あんな細身の女性が体格の良いドレクスに対してそんな事が出来る人を前にして、私は何も言えなくて黙っていた。
そしてステファニーはドレクスを地面に押し付けたままコチラを振り向くと、懐かしさと愛しそうな顔をしてメナスを見て言った。
「あぁ…メナスちゃん、こんなにも大きく立派に育って…」
「ママ…会いたかった!」
メナスは今にもステファニーの元に駆け寄ろうとしたけど、ステファニーは手を出して静止させた。
「感動のハグはもうちょっと待っていてね、今からパパをお仕置きするから…それと、フレクスとレドナースも久し振りね!」
「あぁ…」
「うむ…」
二人とも…口数は少ない訳ではないんだけど、この時だけはなぜか口数が少なかった。
すると押さえ付けられているドレクスがこちらに向かって助けを求めて来た。
「フレクス、レドナース…助けてくれ‼︎」
「いや…今の状況には同情はするが、あんな事をしてしまったのだから…なぁ?」
「拙者は止めたのに、お主が先走ってこんな事になったのだろう? これも因果応報だから、大人しく捌かれろ!」
「この薄情者‼︎」
「うんうん、フレクスもレドナースも立場を弁えているわね…っと!」
ステファニーは笑みを浮かべながら私の方を見ると、私と目が合った…けど、優しそうな笑顔とは別に目は笑ってはいなかった。
「ドレクス、この子はだぁれ?」
「えーっとだな…」
「ママ、この子はファスティアと言って…私達のパーティーに加わってくれて、更に私の魔法の先生です。」
「そうなんだ~ふむふむ~? 貴女は…聖女よね?」
「え⁉︎」
私の事を聖女と見抜く事が出来た人に初めて会った。
魔力の高さの所為で、凄腕の魔導師とは言われた事はあったけど、聖女と見抜かれたのはステファニーが初めてだった。
「ど、どうしてその事を⁉︎」
「私もオルシェフリッツの聖女だからね!」
私以外の聖女にも会ったのは初めてだった。
だから…私が聖女だと一目で見抜く事が出来たのね?
「ファスティアが聖女って…?」
「あ~~~えっとねぇ?」
「あ、御免なさい…秘密にしていたのね?」
まぁ、バレてしまったのだから今更言い訳のしようも無い。
ただ、今後の旅に何かしらの影響は出てくるんだろうけど…?
私はそんな事よりも、フレクスに何故ステファニーさんがこんなに激怒している理由を聞いたのだった。
「あぁ、俺達が町から出発する少し前に大きな地震があってな、そこで街では建物が半分以上…倒壊するという被害があったんだ。 そこで町の住人達との意見が二つに割れてな、一方は町を捨てて何処かに移り住む派と復興して元通りにする派にな。」
すると、レドナースが話に加わって来た。
「当時のドレクスは町を捨てて離れるという派閥で、ステファニーは町を復興させるという派閥に分かれていた。 当時のドレクスは、まだ小さかったメナスに苦労を強いられる様な生活を送って欲しくはなくて、旅に連れ出すという言葉に対し…ステファニーは酷く反対をした。」
「分からないなぁ…それなら皆で協力して復興した方が良く無いかな?」
「ファスティアの言いたいこともわかるんだが、俺達のいた町は少し特殊な場所でな…年中風が強く、夜には極寒近く気温が下がるという場所だった。 更に町が復興するまでに他人の家に身を寄せる…という事が叶わなくてな、助かる為には別な町や村に赴く必要があったんだよ。」
「それで…まぁ、ドレクスがメナスを連れて町から旅立ったから怒っているの?」
「いや…ドレクスがステファニーの飲み物に眠りのポーションを入れて眠らせた挙句、全身を縄で拘束してから町の地下貯蔵庫の中に放り込んで、その隙にメナスを連れて逃げたんだよ。」
「それは…」
「あまりにも聞き分けが悪かったからとドレクスは言っていたが、後になって誰にあんな事をしでかしたのかと恐怖したドレクスは、次々と拠点を移したんだが…?」
「大陸にいると、何処にいても追いかけられそうな予感がすると言って…すぐさま他大陸に移動したという訳なんだ。 それから数年は見つからずに済んだんだが…?」
そんな事をしたら怒るに決まっているでしょう?
なるほどねぇ…だからステファニーがドレクスに対しての折檻が凄まじいのね?
私はステファニーに折檻されているドレクスを見て、両手を合わせて祈った。
そしてこのやり取りは、翌日の夕方になるまで解放されることはなかった。
まぁ、ドレクスの自業自得だからねぇ?
私は何か肝心な事を忘れている気がしていたんだけど…?
はて、何だったかしら?
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