【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス

文字の大きさ
44 / 63

第四十二話 一方その頃…(カリオスとレントグレマール王国)

しおりを挟む
 「金が貯まらん…」

 王国行きの二度目の船を見送ったカリオスは、財布を見ながらボソッと呟いた。

 あれから二週間が経った。

 カリオスは最初の頃こそ…仕事を甘く見て稼ぎが悪かったが、今では真摯に向き合って仕事に勤しんでいる。

 だが、最初は酷かった。

 初日に雪掻きを甘く見て稼ぎが悪かったカリオスは、別の依頼であるスノースライムの討伐というのに目を付けた。

 スライムなら、レントグレマール王国で何度も狩ったことがあったからだ。

 しかも、スノースライムを5匹も討伐すれば…船代を軽く稼げるというものだった。

 「良し、これを受けてやるぜ!」

 カリオスは自信満々でギルドカウンターに依頼書を渡した。

 受付嬢はそれを受け取ったが、カリオスを見て溜め息を吐いた。

 「確かに、スノースライムの討伐にはランクの指定はありません。」

 「だろ? だから手っ取り早く金を稼ぐのに俺はこの依頼を受ける事にしたんだよ。」

 カリオスは自信満々で言った。

 確かに、スノースライムの討伐にはランクによる縛りはない。

 運が良ければ子供でも倒せるし、ドロップの雪の結晶を入手すれば換金だってして貰える。

 ただ…それなのに楽に金を稼げずに、雪掻きという重労働に身を置く理由があったのだった。

 受付嬢は説明をしようかとギルド内にいる冒険者に声を掛けようと思っていたが、昨日に雪掻きの監督をしていた男に口パクで「説明する必要はない」と言われたのだった。

 受付嬢はたった一言、「お気を付けて下さい。」と言って、カリオスを見送った。

 カリオスは依頼場所であるスノースライムの生息地を訪れた。

 ちなみに、スノースライムの生息地は街の外ではなく街の中だった。

 敷地の中というだけで、街の中でもかなり外れの空き地になるのだが…?

 「お、いるいる…あれだけの数だと船以外にも船に乗るまで豪遊出来る金額は稼げるな!」

 そこにはスノースライムが群れを成して蠢いていた。

 カリオスは剣を抜いて近寄ろうとした時だった!

 スノースライムはカリオスに気付くと…群れを成して一斉に襲いだし始めたのだった。

 スノースライムの行動にカリオスは焦り始めた。

 レントグレマール王国付近に生息するスライムは、近寄ると逃げる臆病な性格に対し…?

 スノースライムもスライム同様に臆病な性格には違いないが、仲間と一緒にいる時は別で徒党を組んで襲い掛かって来るのだった。

 そしてカリオスは、スノースライム達に地面に倒された。

 スノースライムは相手を殺す事はしない…が、体温を奪うという目的の為に、一定の温度を奪うと勝手に離れていくのだった。

 そんな感じなので、カリオスは唇が紫色で顔は青く、ガタガタと震えているのだった。

 「やっぱり、こうなったか!」

 監督が木の陰からカリオスの行動を見ていて、スノースライムが完全に立ち去ったのを見てからカリオスを回収した。

 監督はそのままカリオスを焚火の近くに置いてから、白湯を飲ませた。

 「これで分かっただろう、俺達がアイツに手を出さない理由が…」

 監督はそう言ってカリオスに分からせようとした…が、当のカリオスには届いていなかった。

 欲を掻いて集団の中に飛び込んだから失敗だと思っていた。

 翌日…身体がすっかり回復したカリオスは、スノースライムにリベンジを果たす為に昨日の空き地に向かった。

 すると、運が良い事に…?

 スノースライムは群れではなく、1匹で行動をしていた。

 「群れじゃなければ問題はない!」

 そう言ってカリオスは剣を構えてからスノースライムに襲い掛かった。

 するとスノースライムは、カリオスの襲撃に気付いて身体を青く光りだすと、スノーバレットという魔法を発動させてから放って来た。

 大きさ50cmの雪玉が発射されて、それを喰らったカリオスは吹き飛ばされ…

 更にスノースライムは身体が青く光り少し大きくなると、氷のブレスを吐いて来たのだった。

 カリオスはスノーバレットを喰らった後なので、氷のブレスを躱す事が出来ずに見事に喰らって氷漬けになった。

 そしてまたも監督に発見されて回収されて、焚火の近くで熱湯をぶっ掛けられて氷を解かす羽目になった。

 そして翌日…カリオスは冒険者ギルドに寄って討伐不可能として違約金を支払う羽目になった。

 それ以降…カリオスはスノースライムを討伐しようとなんてする気は一切起きなかった。

 さて、ここで1つ…スノースライムの特徴を話すとしましょう。

 スノースライムは分類的には魔物では無くて、魔獣に分類される。

 世界にいるスライムの中では4番目か5番目に強い部類である。

 警戒心が非常に強く、群れを成している時は各自肉弾で挑んで来るが、単体の場合は魔法やブレスを使って来る。
 
 倒し方にもやり方があり、罠を張ったり虚を突く攻撃により倒す事が出来る。

 なので子供でも倒せない事は無いのだが、罠を設置する手間や1匹で行動するまで耐え忍ぶには非常に効率が悪く、それに構っているよりは少額でも他の仕事をしていた方が金になるという物である。

 なので馬鹿みたく真っ正面から襲撃するのは逆効果だった。

 カリオスはその事を監督から聞かされて、ようやく諦めがついた。

 なので、カリオスは毎日行われている雪掻きの仕事に専念しているという訳であった。

 そして…冒頭に戻る。

 ~~~~~レントグレマール王国~~~~~

 さて、話はもう1つある。

 その日、ノースファティルガルドからの船に乗って帰還しようとしていたカリオスの船室から、カリオスの鞄が発見されてその鞄はレントグレマール王国に届けられた。

 そして国王と宰相がカリオスの鞄の中身を探っていると、ヴァッシュ殿下からの紹介状の手紙を見る事になったわけなのだが…?

 船から忽然と姿を消したカリオス、ノースファティルガルドに向かう為の軍資金が無い事に気付いた国王は、カリオスは任務を放棄してバックレたと思い、国内にカリオスの手配書がバラまかれたのだった。

 その一方で…レントグレマール王国は更に最悪な状況を迎えつつあるのだが…?
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』  ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

素顔を知らない

基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。 聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。 ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。 王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。 王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。 国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...