奇跡の少女セリア〜私は別に特別ではありませんよ〜

アノマロカリス

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第一章 生活の予行練習の章

第六話 ここが異世界だという事を忘れていました・後編

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 「ねぇ、ナビター…この鮮やかな深緑な野草も薬草なの?」
 《そうですセリア様、このセヴンスガルドに存在する薬草と呼ばれる草は、約13種類存在します。》
 「…となると、薬効もそれぞれ違うでしょうね?」

 前世の病院で閲覧可能だった薬学の医学書には、地球上には約30万種の薬草が存在すると書かれていた。
 …恐らくだけど、このセヴンスガルドと呼ばれる世界にも、地球と同じ数の薬草が存在してもおかしくは無いでしょう。
 このセヴンスガルドという世界は、地球で言えば中世と同じ時代なので、それほど技術が発展している訳ではありません。
 ただ、その代わりに…魔法という技術がある為に、本格的に調査を進めれば多くの発見が見込める事でしょう。
 ただ、魔力持ちを王国や貴族が狙って来なければの話ですが。
 でなければ、13種類しか存在がないという事はあり得ないからです。

 《それでセリア様、ポーションなる物をお造りになられるそうですが、どうやってお造りになるのですか?》
 「この世界にもある道具なのかはわからないけど、薬研やげんという道具で薬草をすり潰してから、熱湯を入れた鍋で薬液を抽出するまで煮込むんです。」
 《なるほど、料理で出汁を取るやり方に似ておりますね。》
 「まぁ、そんな感じかな…」

 …な~んて、すました感じで話しているけど…私も料理経験なんてまるで無い。
 いつか、病院を退院した時に家に戻れたら、恩返しの為に料理に関する知識は頭に入れていた。
 まぁ、結局は無駄になってしまったけどね。
 
 「ねぇナビター、この世界には薬研ってあるの?」
 《セリア様が考えている様な薬研という道具は………検索中………検索中………ありませんね。 料理に使用する摺鉢すりばちの様なものならありますが。》

 この世界の治療方法が薬草と聞いていたから、もしかしたらあるのかなぁ…なんて思っていたけど、そうかぁ摺鉢になるのね。
 まぁ、摺鉢でも、出来なくは無いだろうけど?

 「ねぇナビター、この世界で…えーっと? 設計図を見せたら道具を作ってくれるお店ってある?」
 《物にもよりますが、武器関連なら武器屋か鍛冶屋に……あ、薬研を注文する場合ですか? ………検索中………検索中………検索中………商会の道具製作部門でなら、設計図さえあれば可能かも知れないですね。》
 「それは、注文する際に金額をぼったくられたりしない?」
 《それは大丈夫だとは思います。 商会の大元は、貴族が経営をしている場合もありますが、商会の従業員は主に平民が雇われておりますからね。 余程…傲慢な態度を取ってくる人でもいない限り、大丈夫だとは思います。 ただ、制作費は決して安くは無いでしょう。》
 「だよね~?」

 あれ、リライザさんみたいな口調になっちゃいました……って、ここは地球では無いから、丁寧語で話さなくても良いのね。
 リライザさんとザノーヴァさんの様に、アドバイスをしてくれたり、食べ物をくれたりする人には敬語を使用するけど。
 一般の人に対しては、そこまで下手になって話をしない方が良いと、リライザさんも言っていたしね。
 そういう態度で話し掛けるのは、主に奴隷という話だしね。
 …というか、この世界には奴隷が居るのね。
 それよりも…そんな事よりも制作費かぁ、どうしよう?

 《商会にもよりますが、金額を安く依頼をする方法があるかも知れません。》
 「無料になる事はないのね…」
 《使用する基材をこちらで用意をする…という事でしたら、ある程度は安くなるかも知れませんが…流石に無料になる事はないでしょうね。 セリア様が数時間もの間、人から依頼された訳の分からない物を作らされて報酬が無い……で納得はしますか?》
 「……確かに、それは私も納得はしませんし…怒りますね。」

 ファンタジー小説の様に、道具製作スキルとか創造作成スキルとか、覚えたりしないのかなぁ?
 まぁ、リーチェ様も言っていたけど…私が新たな魔法やスキルを取得する場合は、レベルを上げないといけないという話だけど、私は戦える自信なんて無いからなぁ。
 これがフラグになってしまったのかは分かりませんが、ナビターから急にこんな警告をされました。

 《セリア様……こちらに向かって来る個体反応はありますね。》
 「え? 探知機能に優れているナビターが、今まで気付かなかったの?」
 《いえ、反応はありましたが…こちらとは関係が無いくらいに遠方にいましたので、大丈夫だと思ったのですが…?》
 「せめて、何の反応か分かる?」

 このアリカ村周辺では、狼の様な獣や熊の様な獣も居るらしいけど、獅子や虎の様な猛獣はいないという話でした。
 …でも、熊や狼が目の前に現れたら終わります。
 転身をして、身体が一般の女性の様に作り替わったとはいっても、別に女ハルクになった訳ではありません。
 
 《判明致しました。 こちらに向かって来る個体は、ラスティンボアという種ですね。》

 ボアというと、確か猪よね?
 …という事は、危険な魔物では無いのね。

 《いいえ、セリア様、考えが甘いです! 普段のボアなら、隠れてやり過ごせれば問題はありませんが…繁殖期のボアは非常に好戦的で、眼に付くものは関係無しに襲って来ます。》
 「流石に、食べられるって事はないわよね? 猪は人を襲っても…」
 《それは、セリア様が居た異世界での話ですか? こちらのボアという種は雑食性ですが、繁殖期には、肉食となって襲って来ます。》

 どうやらこちらの猪は、人間も食べるそうです。
 私はまだこの異世界を、地球と同じだと思っていたみたいですね?
 人間以外の種族を目の当たりにし、魔法を使用出来たにも関わらずにね。

 「どどど………どうしましょう⁉︎」
 《どうしましょう…って、現在のセリア様では、逃げる以外の選択肢は御座いませんよ?》
 
 そんな事をしていると、ラスティンボアが姿を現しました。
 大きさを言うと……私の3倍の身長の巨大な猪でした。

 「ナビター、サンダーボルト‼︎」
 《ありません…》
 「ナビター、エクスプロージョン‼︎」
 《ありません……というか、私はナビゲーターという役目で、その役割は主にセリア様の質問に答える事だけです。》

 あ、マズいですね。
 ラスティンボアが私を見つめています。
 こうなったら……!

 「ナビター、自己犠牲‼︎」
 《もしかして…私を囮にして逃げようとか思っています? 私はセリア様だけが目視できるナビゲーターなので、ラスティンボアには私の姿は写ってはおりません。》
 「役に立たないわねぇ…」

 …と、ナビターに文句を言っても仕方がありません。
 異世界に転身…してから、その翌日に命を落としかねないこの状況…私はどれだけ運に見離されているんだろう?
 そんな事を思って死を覚悟していると、さっきまで嘘みたいに取り乱していたのが、急に冷静になりました。

 「ねぇナビター、こっちの世界の猪も…前足が短くて、下り坂は苦手だったりする?」
 《ただの下り坂なら、それほど苦では無いかと思います。 岩や石などの障害物があれば、話は変わって来ますが…》

 私は後方を振り返ってみる。
 道は下り坂だけど、思ったほど障害物が多い訳では無い。
 私はこんな場所まで薬草を採りに来ていたのね。

 「今の私って走れるのかなぁ…?」

 …な~んて、こんな状況で言っていても始まりません。
 私は素早く方向を変えてから、一目散に山を降りました。

 「まさか、今の私って…こんなに早く走れるのね‼︎」

 病院内でも走った事はありました…ただし廊下でしたが。
 あとで看護師さんに物凄く怒られました。
 だけど、こんなに早く走れているのなら、きっと猪も追い付けないわよね?
 …なんて思いながら後ろを向くと、ラスティンボアはそう遠く無い距離を詰めていました。

 「太っているの癖に、何でこんなに速いのよ…」
 《いえ、ラスティンボアは脂肪で大きく見えるだけで、別に太っている訳ではありませんよ………って、セリア様、気を付けて下さい‼︎》
 「へ?」

 遅かった……!
 私は足を踏み外して、3m位ある高さから落下しました。
 崖ではない事が唯一の救いですね。

 「こんな高さから落ちて無傷だなんて、リーチェ様に感謝を伝えなければならないですね!」
 《そんな事よりもセリア様、右か左に避けて下さい!》

 私はナビターに言われた通りに右に飛んだ。
 すると、上から巨大な塊が落ちて来て…地面に激突してから横に倒れたのでした。

 《地面が岩だった事が幸運でしたね。 土や泥なら、すぐに起き上がって来たかも知れませんので…》
 「お陰で…岩が砕けて散らばっているね。 この石…何かに使えないかな?」
 《そんな事よりもセリア様、ラスティンボアのトドメを刺さないのですか?》

 襲って来たから、こちらも命を奪う為に対抗するという事?
 確かに先程までは、本当に命が無いと覚悟をしていましたが。
 だからと言って、命を奪うなんて……

 《トドメを刺せば、かなりのレベルアップが可能になるでしょう。》
 「う……」
 《食材も確保出来るようになりますし、村の肉屋に売れば資金も得られますしね。》

 分かってます、分かっているんです。
 いま、トドメを刺して仕舞えば…良い事尽くしな未来が待っている事も。
 でも、生きている物の命を奪うという行為が私には……

 《では、今日の食事は無しですね…というより、当分の食事もないかも知れませんね。 資金も得られない訳ですから…》

 私はナビターにそう言われて、ダガーを取り出しました。
 ザノーヴァさんが山に行く時にダガーを渡してくれたのは、薬草を採取する為ではなくて、自衛をする為だった…という事を知りました。

 「ナビター、どうすれば良いの?」
 《持っているダガーで、首の付け根の頸動脈を切断して下さい。》
 「えっと……途中で起き上がったりしない?」
 《気絶しているから大丈夫だと思いますよ。 これが…手足を切り落とすとなったら、話は別でしょうけど?》

 私は覚悟を決めて、ラスティンボアの頸動脈を切断に成功しました。
 まぁ、勢いよく鮮血が舞い散りましたが…クリーン魔法で綺麗になりました。
 だけど…?

 「寝かせた状態だと、全ての血を抜く事は出来ないのかなぁ?」
 《確かに獣の血抜きをする際には、木にぶら下げてするのがセオリーですが…このままでも方法はあるのです。 セリア様、ラスティンボアにヒールを。》
 「え? 傷が塞がって、襲って来たりしない?」
 《頸動脈を切断した時点で、ラスティンボアは死んでいますよ。》
 「じゃあ、何で死体にヒールを?」
 《セリア様のヒールには、有機物を活性化する力がリーチェ様より与えられております。 瀕死な個体にヒールを放てば、完全な復活を遂げてしまいますが…死んだ後の生物にヒールをすると、簡単な血抜きが行える様になるのです。 …まぁ、他にも使い道はあるのですが…》

 私は、ナビターに言われた通りにヒールを放ちました。
 何か最後にボソッと言っていましたが?
 すると、勢い良くラスティンボアから出血をし始めて、あっという間に萎んでいきました。

 「ヒールは、生きているものだけに放つ訳ではないのね…」
 《では、セリア様…ラスティンボアをアイテムボックスに入れて帰りましょうか。」

 私は、ナビターの話に「?」を浮かべた。
 アイテムボックスが何かなのかという意味で、分からないという訳ではありません。
 ナビターの言っている意味が理解出来ないのです。

 「ねぇナビター、私にアイテムボックスは無いわよ?」
 《いいえセリア様、私が入っていた空間がアイテムボックスなのです。》

 まぁ、確かに…あれがアイテムボックスと言われても、おかしくは無いだろうけど?
 でも、あの広さは…カバンの大きさくらいな物で、とてもラスティンボアが入る様な大きさでは無いですよ。
 幾ら血抜きに成功して、萎んだからと言っても。

 《セリア様は、自らのステータスを確認する術が無いのですよね? 現在のセリア様は、ラスティンボアにトドメを刺した時点で、かなりのレベルが上昇しております。》
 「え? そうなの…?」

 私は特に、身体の変化については何も感じませんでした。
 本の様に…身体が軽くなったとかいう事もないですしね。
 私は、左手で腰の方に手を翳すと…巨大な空間が発生したのでした。

 《これが、レベルアップにより…広がったセリア様のアイテムボックスです。》
 「カバンくらいの大きさだったのに、今はどれだけ入るのよ?」

 私はアイテムボックスの穴にラスティンボアを近付けると、ラスティンボアは穴の中に吸い込まれて行きました。
 もしかしたら、持ち上げてアイテムボックスに入れなければいけない…という事じゃなくて良かったですが。

 《では、帰還致しましょう。 それとレベルアップによって取得されました、セリア様の魔法やスキルについても話したいですしね。》

 家に帰ってみてから、ナビターに説明を聞いてビックリ。
 あんなにも薬研の事で悩んでいたのが、秒で解決してしまいました。

 …なのですが、やはり自分のスキルを確認する術を知りたいと思いました。
 ただ、ナビターの説明によると…?
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