――「月が導く」といえば、第9話のペン入れに時間がかかったように、さまざまな種族が登場するのが特徴的ですね。作画以外にもご苦労があるのでは?
言語に気を遣っていますね。コミック自体は日本語で作られていますし、真の母国語も日本語ですが、実際の物語の中にはさまざまな言語が飛び交っています。たとえば、真はヒューマンの共通語以外の言語はすべて話せます。だから、真がドワーフと話す時はドワーフ語を使っている場合が多いはず。日本語以外の会話であることを強調したい場合は、フキダシの線や形を変えたりしているんです。逆に、日本語が通じないシチュエーションなのに、あえて日本語を使っていることを強調したい場合も、同様にフキダシの処理を変えています。そのあたりは、どうすれば読みにくくならず言語の違いを表現できるのか、編集さんと相談しながら描いています。
――言語といえば、インタビューの第1回でも少し触れましたが、ヒューマンの共通語にはオリジナルのフォントまで作られていますね。
最初は、毎回それっぽい文字を書いて誤魔化すことも考えたんですが……。たとえば第16話の肉屋の看板のように、共通語を絵で表現しなければならないシーンが多く出てきます。それならフォントを設定した方がいいなぁ、と。それで、「あいうえお」をアレンジした文字がいいと思う、なんていうことを主人に言ったんです。
――フォントは元デザイナーのご主人が作られたものだとか。
はい。雑談みたいな感じで話したのに、そのまま主人が作ってくれることになりました。「ヒューマン語は女神様の言語なので、筆記体のようなシャレた感じがいい」とか、絵と言葉でイメージを伝えたんですが、最初は必要な文字だけを作るという話で進めていました。
――それが結局……?
「せっかくだから全部作っちゃった」って、翌日には50音のフォントデータが完成していたんです(笑)。主人も「月が導く」のファンだからこそですね。
――たしかにそうですね(笑)。そういう木野先生も「月が導く」のファンのひとりですが、コミックを描く際にどんなことを楽しんでいますか?
やっぱり魔法のエフェクトやアクション、獣人など、いろいろな挑戦をしながら描けるのが楽しいですね。それに美形が大勢出てくる物語なので、美形ごとに個性をつけなきゃいけないんですけど……そのさじ加減を調整するのも楽しんでます!
――異世界ものならではの描く楽しみが、いろいろあると。
バックグラウンドを考えるのが好きなので、あれこれ妄想しています。衣服は日本風なところもあるけど、ジッパーは仕組みがわかっていても異世界の技術で再現するのは難しそうとか。双頭の犬リズーは、ふだんどんな風に過ごしているのか、など考え始めると止まらないです(笑)。漫画の中でそこまで描く機会はほぼないんですが、真の服は日本のものならジッパーが使われる部分も、紐で留めたりしています。
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