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ナンヤロナ……〜第一話〜「頭痛」
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「何やろな~最近頭痛がすんねん」
人差し指でこめかみを揉みしだく古川が、相方の岩田に言い放つ。
「ストレスちゃうの?決勝のネタどっちにするかまよてんのやろ?」
「せやな~岩ちゃんどっちがええと思う?」
岩田は反り返り、
「う~ん……むずかしな~古川くんが書いてるから俺がどうこうゆうのもな~」
と、古川の方へ視線を移す。
「せやけど……二人で漫才するんやし、二人で決めようや」
「悩んでるんやったらあみだくじで決めたら」
岩田はニンマリとした表情で古川に問うた。
「よし!岩ちゃんのゆうとおりあみだくじにしよ!」
結果、2番のネタを決勝でする事に決めた。
「にしても頭痛いのなおらんなぁ~」
「病院行って見てもらえばええと思うけどな~」
岩田は眉間に皺を寄せながら言った。
『サザン花』は大学時代の友人であり、結成6年目を迎える漫才師だ。
M1グランプリの決勝戦まで、テレビの取材やお笑い番組、ライブ等のスケジュールが立て込んている。
昨年もM1グランプリの最終決勝まで行き、国民に名を轟かせる事となった。また二人ともイケメンな故、ライブ公演では女性ファンの熱気が鋭く出待ちでごった返す始末である。とある男性ファッション誌にも掲載される程魅力があり、チケットがインターネットにて高額で取り引きされている事も多々あった。
M1の前評判も良く、優勝候補として頭角を現している。一ヶ月後にM1が控えていながら、滅多に体調を崩さない古川が、頭痛に悩まされている。どうしたものかと岩田が気を揉む。
とある番組に出演する際に、楽屋で岩田が
「頭痛が酷いなら病院行ったほうがええよ」と古川に伝えたが、
「それがな~頭痛がない日があんねん。今日はない日やな~」
と、応えた。
「毎日ちゃうのか?頭痛の薬飲んでんの?」
「飲んでない……」
「そりゃあかんで!薬飲むか病院で診てもらうかせんと~」
岩田は、窘めるように言った。
「分かった。病院行ってくるわ。決勝戦に響いたら良くないからな~」
天井を見ながらため息をついた。
「何やろな~今日は思いっきり痛い日やな~」
古川はこめかみを抑え、苦悶に満ちた面持ちで近くのクリニックへと出向く。
受付を済ませ、ソファに腰を下ろす。
「はぁ~ホンマに痛いわ~」大きな独り言を発した。周りにいる患者が冷たい視線を送る。古川は髪の毛を掻いて、苦笑いしながら軽く会釈した。
「古川さ~ん」
名前を呼ばれ、看護師の所へ行く。
「こちらへどうぞ~」
愛想の良い看護師であった。『俺が芸能人であること分かるかな~』ふと思うのであった。
「こんにちは。どうされました?」
眼鏡をかけた医者らしい医師が質問してきた。
「あの~頭痛がハンパないんですわ。それも、痛い日と痛くない日があるんです。今は物凄く痛いんです」
そう嘆く古川に対し、医師は
「そうですか~偏頭痛ですかね~MRI撮りますか?」
淡々と物事を進めようとする。
「まあ……そうですね~調べて貰った方が良いかな~」
狭い空間の中に頭を突っ込む準備をした。
ドンドン、カンカンと、頭痛している最中には耐え難い音が耳から脳へ響く。
長い時間が経過したように思うが、それほど時は過ぎていなかった。苦痛を感じる時は大抵時計は遅く進むよう身体に仕組まれている。
MRIの結果を聞くまで待たなければならなかった。
「あんちゃん。大丈夫かい?顔が青いよ」
老女が声をかけてきた。
「ちょっと……慣れない事をしたもんで」
古川は、愛想笑いしつつ老女に対応した。
「あら、そうかい。大変だったねぇ」
少し驚いた風に老女は答えた。
「診断結果としては、異常ないですね。偏頭痛の可能性があるので、薬をお渡しいたしましょう」
顔色一つ変えない眼鏡は、そう言って締めくくった。
古川は、不意に『ああ!』っと叫んだ。それはまさに雷に打たれた様だった。
「どうかされましたか?」
冷静な医師も驚いた。
「あの、あの、規則正しい頭痛です!なんで今まで気づかんかったんやろ?アホや俺……」
古川に対し医師は、
「一体どうしたというんですか?」
と落ち着かせようとする。
「一日置きに頭痛がします!え、M1の決勝があるんですわ!そ、その日は……カカ、カレンダー見せて貰えます?」
後ろのめりになる医師は
「ど、どうぞ」
と古川にカレンダーを見せた。
「くる…こない…くる…こない……」
花びら遊びみたいな感じでモゾモゾと言う。
「こないや!!!」
笑みを浮かべ、絶叫した。
「先生!ありがとう!ほんで、大丈夫や!一応、薬頂いていきますわ!」
満面の笑みを浮かべて、クリニックを後にした。
「なぁ、岩ちゃん。去年のリベンジやで。最終決戦や。二年連続やで」
晴れ晴れとした古川はそう言って自分を鼓舞する。
「古川くんのおかげやなぁ~頭痛も治った事やし。さぁ優勝するで!」
扉の向こうは『サザン花』の漫才を待つ観客だ。
二人はグータッチする。戦友で親友の二人。舞台は整った。さあ!いざ出陣!
古川は、出囃子がなる頃心の中でこう呟いた
「岩ちゃん…さっきから徐々に頭痛がしてきてんねん…どないしよ…」
人差し指でこめかみを揉みしだく古川が、相方の岩田に言い放つ。
「ストレスちゃうの?決勝のネタどっちにするかまよてんのやろ?」
「せやな~岩ちゃんどっちがええと思う?」
岩田は反り返り、
「う~ん……むずかしな~古川くんが書いてるから俺がどうこうゆうのもな~」
と、古川の方へ視線を移す。
「せやけど……二人で漫才するんやし、二人で決めようや」
「悩んでるんやったらあみだくじで決めたら」
岩田はニンマリとした表情で古川に問うた。
「よし!岩ちゃんのゆうとおりあみだくじにしよ!」
結果、2番のネタを決勝でする事に決めた。
「にしても頭痛いのなおらんなぁ~」
「病院行って見てもらえばええと思うけどな~」
岩田は眉間に皺を寄せながら言った。
『サザン花』は大学時代の友人であり、結成6年目を迎える漫才師だ。
M1グランプリの決勝戦まで、テレビの取材やお笑い番組、ライブ等のスケジュールが立て込んている。
昨年もM1グランプリの最終決勝まで行き、国民に名を轟かせる事となった。また二人ともイケメンな故、ライブ公演では女性ファンの熱気が鋭く出待ちでごった返す始末である。とある男性ファッション誌にも掲載される程魅力があり、チケットがインターネットにて高額で取り引きされている事も多々あった。
M1の前評判も良く、優勝候補として頭角を現している。一ヶ月後にM1が控えていながら、滅多に体調を崩さない古川が、頭痛に悩まされている。どうしたものかと岩田が気を揉む。
とある番組に出演する際に、楽屋で岩田が
「頭痛が酷いなら病院行ったほうがええよ」と古川に伝えたが、
「それがな~頭痛がない日があんねん。今日はない日やな~」
と、応えた。
「毎日ちゃうのか?頭痛の薬飲んでんの?」
「飲んでない……」
「そりゃあかんで!薬飲むか病院で診てもらうかせんと~」
岩田は、窘めるように言った。
「分かった。病院行ってくるわ。決勝戦に響いたら良くないからな~」
天井を見ながらため息をついた。
「何やろな~今日は思いっきり痛い日やな~」
古川はこめかみを抑え、苦悶に満ちた面持ちで近くのクリニックへと出向く。
受付を済ませ、ソファに腰を下ろす。
「はぁ~ホンマに痛いわ~」大きな独り言を発した。周りにいる患者が冷たい視線を送る。古川は髪の毛を掻いて、苦笑いしながら軽く会釈した。
「古川さ~ん」
名前を呼ばれ、看護師の所へ行く。
「こちらへどうぞ~」
愛想の良い看護師であった。『俺が芸能人であること分かるかな~』ふと思うのであった。
「こんにちは。どうされました?」
眼鏡をかけた医者らしい医師が質問してきた。
「あの~頭痛がハンパないんですわ。それも、痛い日と痛くない日があるんです。今は物凄く痛いんです」
そう嘆く古川に対し、医師は
「そうですか~偏頭痛ですかね~MRI撮りますか?」
淡々と物事を進めようとする。
「まあ……そうですね~調べて貰った方が良いかな~」
狭い空間の中に頭を突っ込む準備をした。
ドンドン、カンカンと、頭痛している最中には耐え難い音が耳から脳へ響く。
長い時間が経過したように思うが、それほど時は過ぎていなかった。苦痛を感じる時は大抵時計は遅く進むよう身体に仕組まれている。
MRIの結果を聞くまで待たなければならなかった。
「あんちゃん。大丈夫かい?顔が青いよ」
老女が声をかけてきた。
「ちょっと……慣れない事をしたもんで」
古川は、愛想笑いしつつ老女に対応した。
「あら、そうかい。大変だったねぇ」
少し驚いた風に老女は答えた。
「診断結果としては、異常ないですね。偏頭痛の可能性があるので、薬をお渡しいたしましょう」
顔色一つ変えない眼鏡は、そう言って締めくくった。
古川は、不意に『ああ!』っと叫んだ。それはまさに雷に打たれた様だった。
「どうかされましたか?」
冷静な医師も驚いた。
「あの、あの、規則正しい頭痛です!なんで今まで気づかんかったんやろ?アホや俺……」
古川に対し医師は、
「一体どうしたというんですか?」
と落ち着かせようとする。
「一日置きに頭痛がします!え、M1の決勝があるんですわ!そ、その日は……カカ、カレンダー見せて貰えます?」
後ろのめりになる医師は
「ど、どうぞ」
と古川にカレンダーを見せた。
「くる…こない…くる…こない……」
花びら遊びみたいな感じでモゾモゾと言う。
「こないや!!!」
笑みを浮かべ、絶叫した。
「先生!ありがとう!ほんで、大丈夫や!一応、薬頂いていきますわ!」
満面の笑みを浮かべて、クリニックを後にした。
「なぁ、岩ちゃん。去年のリベンジやで。最終決戦や。二年連続やで」
晴れ晴れとした古川はそう言って自分を鼓舞する。
「古川くんのおかげやなぁ~頭痛も治った事やし。さぁ優勝するで!」
扉の向こうは『サザン花』の漫才を待つ観客だ。
二人はグータッチする。戦友で親友の二人。舞台は整った。さあ!いざ出陣!
古川は、出囃子がなる頃心の中でこう呟いた
「岩ちゃん…さっきから徐々に頭痛がしてきてんねん…どないしよ…」
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