文字の大きさ
大
中
小
24 / 46
10.邪竜(股間)の咆哮④
もちろんジレーザは依斗の状況を知っているので、部屋の中でなにが行なわれているかは、おおよそ気付いているが、あえてそれは考えないようにしている。
依斗の体調を心配してネルディムが世話を申し出るが、ジレーザは依斗ではなく、聖人の尊厳を守るためにこれを丁重に断り、自分が世話をすると説明する。
そうしてジレーザが部屋に戻ると、精魂尽き果てた依斗が白目を剥いてベッドに横たわっていた。
「どうしてこう、緊張感のない男が」
ジレーザは呆れたように呟くと、洗面用の手桶に魔法で水を張り、柔らかい布を底に浸して溜め息を吐き、絞った布を手に依斗の元に近付いてまた溜め息を吐く。
「なぜ私がこんなことを」
顔を歪めたまま、ブランケットを剥がして依斗の体を清めてやると、先ほどは熱り立つ存在のせいで目に入らなかった、依斗の白い肌に刻まれたタトゥーが目に入って手を止める。
サーチェスにおいても、民族によっては成人の証として刺青を入れる習慣があるが、依斗の腰元から局部近くに刻まれたタトゥーは、なぜか背徳感が激しく刺激された。
そしてジレーザは無意識に依斗のタトゥーを、ひんやりとした指先で緩やかになぞる。
「ぁんっ」
気絶したように眠っているはずの依斗が、思いもしない甘ったるい声を出したので、ジレーザはようやくそこで我に返って咳払いをした。
どうしてだか分からないが、この男は危険だと、ジレーザの中で警報のように心臓が早鐘を打つ。
止まっていた手を動かして依斗に服を着させると、すっかり沈静化した箇所から目を逸らして、そのことを思い出さないように大きく首を振る。
そして何気なく視線を移した先に走り書きを見つけ、ジレーザはサイドテーブルからその紙を手に取り、書かれた内容を食い入るように見つめた。
聖人が聖剣を扱うと性衝動が抑え切れずに暴走する件について、依斗が纏めたのだろう考察が書かれていて、そのことを調べるためか魔力に関する書物が傍に積まれている。
「これを一人で調べていたのか」
下劣な単語を聞かされてそのことばかりに気を取られていたが、依斗は本来知性的で頭の回転は恐ろしく速く、ジレーザが思い付きもしない考え方や視点を持っている。
その依斗が書きまとめた用紙には、聖剣は聖人の膨大な魔力を吸い尽くして形を留めると書かれている。
通常の魔力枯渇ならば極度の倦怠感を生むが、大抵はそこに至るまでに魔力の行使を制限し、枯渇することを回避するのでジレーザ自身には魔力が枯渇した経験はない。
ジレーザは部屋の隅に無造作に立て掛けられた聖剣〈ネグロシス〉を視界に入れると、再び依斗に視線を戻して白い手を握り、試しに魔力をゆっくりと流し入れる。
だが意に反して魔力は急激に依斗の中に雪崩れ込み、ジレーザはあっという間に魔力が枯渇してその場に倒れ込んだ。
依斗は手を繋がれたままジレーザが倒れたことで目を覚まし、繋がれた手の先でガタガタと震えるその様子に驚いてベッドから飛び降りる。
「おいジレーザ、しっかりしろ」
「……ト様」
依斗を呼んでいるのか、掠れた声はただ事ではない状況を表している。
依斗は慌ててジレーザを抱き上げてベッドの上に寝かせると、部屋を飛び出して近くに控えていたネルディムを捕まえた。
「回復魔法か薬でもなんでもいい。急いでくれ! ジレーザが倒れた」
動転した様子で声を荒げると、ネルディムは血相を変えて依斗の腕を掴んで部屋に駆け戻った。
依斗の体調を心配してネルディムが世話を申し出るが、ジレーザは依斗ではなく、聖人の尊厳を守るためにこれを丁重に断り、自分が世話をすると説明する。
そうしてジレーザが部屋に戻ると、精魂尽き果てた依斗が白目を剥いてベッドに横たわっていた。
「どうしてこう、緊張感のない男が」
ジレーザは呆れたように呟くと、洗面用の手桶に魔法で水を張り、柔らかい布を底に浸して溜め息を吐き、絞った布を手に依斗の元に近付いてまた溜め息を吐く。
「なぜ私がこんなことを」
顔を歪めたまま、ブランケットを剥がして依斗の体を清めてやると、先ほどは熱り立つ存在のせいで目に入らなかった、依斗の白い肌に刻まれたタトゥーが目に入って手を止める。
サーチェスにおいても、民族によっては成人の証として刺青を入れる習慣があるが、依斗の腰元から局部近くに刻まれたタトゥーは、なぜか背徳感が激しく刺激された。
そしてジレーザは無意識に依斗のタトゥーを、ひんやりとした指先で緩やかになぞる。
「ぁんっ」
気絶したように眠っているはずの依斗が、思いもしない甘ったるい声を出したので、ジレーザはようやくそこで我に返って咳払いをした。
どうしてだか分からないが、この男は危険だと、ジレーザの中で警報のように心臓が早鐘を打つ。
止まっていた手を動かして依斗に服を着させると、すっかり沈静化した箇所から目を逸らして、そのことを思い出さないように大きく首を振る。
そして何気なく視線を移した先に走り書きを見つけ、ジレーザはサイドテーブルからその紙を手に取り、書かれた内容を食い入るように見つめた。
聖人が聖剣を扱うと性衝動が抑え切れずに暴走する件について、依斗が纏めたのだろう考察が書かれていて、そのことを調べるためか魔力に関する書物が傍に積まれている。
「これを一人で調べていたのか」
下劣な単語を聞かされてそのことばかりに気を取られていたが、依斗は本来知性的で頭の回転は恐ろしく速く、ジレーザが思い付きもしない考え方や視点を持っている。
その依斗が書きまとめた用紙には、聖剣は聖人の膨大な魔力を吸い尽くして形を留めると書かれている。
通常の魔力枯渇ならば極度の倦怠感を生むが、大抵はそこに至るまでに魔力の行使を制限し、枯渇することを回避するのでジレーザ自身には魔力が枯渇した経験はない。
ジレーザは部屋の隅に無造作に立て掛けられた聖剣〈ネグロシス〉を視界に入れると、再び依斗に視線を戻して白い手を握り、試しに魔力をゆっくりと流し入れる。
だが意に反して魔力は急激に依斗の中に雪崩れ込み、ジレーザはあっという間に魔力が枯渇してその場に倒れ込んだ。
依斗は手を繋がれたままジレーザが倒れたことで目を覚まし、繋がれた手の先でガタガタと震えるその様子に驚いてベッドから飛び降りる。
「おいジレーザ、しっかりしろ」
「……ト様」
依斗を呼んでいるのか、掠れた声はただ事ではない状況を表している。
依斗は慌ててジレーザを抱き上げてベッドの上に寝かせると、部屋を飛び出して近くに控えていたネルディムを捕まえた。
「回復魔法か薬でもなんでもいい。急いでくれ! ジレーザが倒れた」
動転した様子で声を荒げると、ネルディムは血相を変えて依斗の腕を掴んで部屋に駆け戻った。
感想 2
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした
水無瀬 蒼清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。
そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。
倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。
そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。
体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。
2026.1.5〜
異世界唯一のオメガ、恋を選ぶまでの90日
秋月真鳥――異世界に「神子」として召喚されたのは、28歳の元高校球児、瀬尾夏輝。
男性でありながらオメガである彼は、オメガの存在すら知られていない異世界において、唯一無二の「神に選ばれし存在」として迎えられる。
番(つがい)を持たず、抑制剤もないまま、夏輝は神殿で生活を共にする五人のアルファ候補たちの中から、90日以内に「番」となる相手を選ばなければならない。
だがその日々は決して穏やかではなく、隣国の陰謀や偽の神子の襲撃、そして己の体に起きる変化――“ヒート”と呼ばれる本能の波に翻弄されていく。
無口で寡黙な軍人アルファ・ファウスト。
年下でまっすぐな王太子・ジェラルド。
優しく理知的な年上宰相・オルランド。
彼らが見せる愛情と執着に、心を揺らしながら、夏輝は己の運命と向き合っていく。
――90日後、夏輝が選ぶのは、誰の「番」としての未来か。
神の奇跡と恋が交錯する異世界で、運命の愛が始まる――。
【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件
りゆき俺の部屋の天井から降って来た超絶美形の男。
そいつはいきなり俺の唇を奪った。
その男いわく俺は『運命の相手』なのだと。
いや、意味分からんわ!!
どうやら異世界からやって来たイケメン。
元の世界に戻るには運命の相手と結ばれないといけないらしい。
そんなこと俺には関係ねー!!と、思っていたのに…
平凡サラリーマンだった俺の人生、異世界人への嫁入りに!?
そんなことある!?俺は男ですが!?
イケメンたちとのわちゃわちゃに巻き込まれ、愛やら嫉妬やら友情やら…平凡生活からの一転!?
スパダリ超絶美形×平凡サラリーマンとの嫁入りラブコメ!!
メインの二人以外に、
・腹黒×俺様
・ワンコ×ツンデレインテリ眼鏡
が登場予定。
※R18シーンに印は入れていないのでお気をつけください。
※前半は日本舞台、後半は異世界が舞台になります。
※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載中。
※完結保証。
※ムーンさん用に一話あたりの文字数が多いため分割して掲載。
初日のみ4話、毎日6話更新します。
本編56話×分割2話+おまけの1話、合計113話。
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ12/23後日談追加しました。
=================
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
女の子として育てられた身代わりメイド、冷酷公爵に正体を暴かれ執着の檻に閉じ込められる 〜夜に咲く花〜
ひとひら|雨音美月女の子として育てられたラナには、誰にも言えない秘密があった。
――僕は、男だ。
18歳の冬、没落した一族の罪を贖うため、冷酷な公爵・セヴェランにメイドとして捧げられた。
純白のフリルに身を包み、偽りの乙女を演じ続ける日々。
正体が露見すれば即処刑――薄氷の上を歩くような緊張が、常にラナを縛りつけていた。
しかし、ある穏やかな午後。
その均衡は、あまりにも呆気なく崩れ去る。
逃げ場を失った身体を捕らえられ、隠し続けてきた真実を見抜かれたとき、
氷のように冷え切っていた主従関係は、静かに形を変えた。
「お前は男ですらない。……ただの、私の所有物だ」
突きつけられたのは死ではなく、逃れられない執着。
行き場を失った孤独な存在を囲い込み、決して手放そうとしない絶対的な支配。
偽りの乙女としての時間は終わりを告げ、
ラナは一人の青年として、抗えないほど深く書き換えられていく。
それは救いか、それとも堕落か。
孤独を抱えた二人の魂は、背徳の熱の中で静かに絡み合っていく――。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーンギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。