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第44話 攻略組が集まる街にて

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 「炎のようなものが降って来たように見えたのだが」

 造りかけの探索者街にて、体育会系の男ガレアがリザへたずねた。

「何か知っていないか?」
「……さ、さあ?」

 だが、様々なことを考えた上で、リザは一度ごまかした。
 頭の中にあるのは、“フェニックスの里がバレるかもしれない”という思考だろう。
 心苦しくもあるが、これもラビリンスという場で生き抜いていくための選択だ。

「ふむ、そうか」
「……っ」

 対して、腕を組むガレア。
 何を言うかと思ったが、すぐに変わらぬ表情を浮かべた。

「ならば仕方ないな!」
「!」
「では、まだまだ仮の街だが案内するぞ!」
「……え、ええ」

 よしっとうなずき、ガレアは再び先導し始めた。
 彼に付いて行く中で、エアルもリザへぼそっと告げる。

「やっぱり良い人に見えるよ」
「……そうね」

 そうして、ガレアを信用し始めるエアル達。
 一度情報や進行の整理をすべく、仮宿へ向かうのだった。

 しかし、ガレアの声が大きいことも相まって、エアル達は自然と注目を集めていたのだ。
 だからこそ、彼らを陰から覗いた者がいた。

「……うふっ」

 その視線は、レリアへと向けられていたように見えた。




「じゃ、明日からはこんな感じで進みましょ!」

 夕方、宿でリザが声を上げた。
 それには周りも納得した様にうなずく。

「うん!」
「わふ!」
「ぼぉっ!」

 だが、レリアの返事だけがない。
 そんな彼女をエアルが気にかける。

「レリア、どうかした?」
「……! いえ、なんでもないわ。話は了解したわよ」
「そっか」
 
 これまでレリアが指示を間違えたことはない。
 彼女がそう言うなら大丈夫だろう、とエアルも引き下がる。
 だが、レリアは間髪かんぱつ入れずに立ち上がった。

「じゃあワタシは少し外に出るわ」
「あれ、ご飯は?」
「テキトーに済ませるわよ」
「ふーん」

 さらに最近では珍しく、一緒に食卓を囲まないと言う。

「あまり遅くなるんじゃないわよ」
「忠告ありがと、情報屋さん」

 そうして、レリアは宿を出て行った。

「レリア、何かあったのかな」
「……まあ、場所が場所だものね」
「どういうこと?」

 首を傾げるエアルに、あごに手を当てるリザは答えた。

「レリアは元攻略組よ」
「……あー」
「知り合いがいるんでしょ。良くも悪くも」




「いるんでしょ。さっさと出てくれば?」

 路地裏のような場所で、唐突にレリアが口を開いた。
 誰かに話しかけるような口ぶりに応え、彼女の前にコツっと足音が聞こえる。

「覚えたんだ。この合図」
 
 そうして出てきたのは──れんな少女。

 少し動けば揺れるような、フリフリのスカート。
 腰に差しているのは、剣ではなく“ステッキ”だ。
 全体的に、隠密には向いていない・・・、派手な見た目をしている。

 彼女の名は『チェリー』。

「さすがだね!」
「ワタシは一度覚えたことは忘れないわ」
 
 チェリーに対して、レリアも彼女と同じく腰に手を当てるポーズを見せる。
 二人の間では、“路地裏に集合”という合図みたいだ。

 それから、レリアはふっと笑みを浮かべたまま続ける

「それにワタシの中では、あなたが一番多くパーティーを組んだ人だし」
「チェリーのこと、まだそんな風に言ってくれるんだ!」
「フフフッ、それでも数回よ」

 単独ソロで潜ることも多かったレリアだが、チェリーとは何度も探索したことがある。
 だがそれでも、やはり格好は気になるようだ。

「それにしても、相変わらずの格好ね」
「だってこれが一番可愛いじゃない!」
「ワタシには分からないわ」

 そうして、久しぶりの再会に軽口を交わした二人だが、レリアがキリッと真剣な眼差しをのぞかせる。

「で、本題は何かしら」
「もう、レリアも分かってくるくせに」
「……」

 しかし、チェリーの言う通り、レリアも本題を理解しているようだ。
 そうして改めて、チェリーは口にした。

「レリアも相変わらず、カモ・・を見つけるのがうまいねぇ」
「……やっぱりそういうことね」
「もちろん!」

 可愛げな表情で人差し指を立てたまま、チェリーは口にした。

「一緒にいるあいつら、裏切りましょ!」
「……それで?」
「ついでに街の物資もぜーんぶもらうの!」

 彼女の顔は、すでにレリアが了承すること前提にすら見える。

「……」

 対して、レリアの返答は──。




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