パパLOVE

卯月青澄

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夏休みに入った。

誰でも学校に行かなくていいんだから、夏休みはきっと好きなはず。

私だって嫌いじゃない。

でも、1ヶ月も家にいるのはスゴく退屈で時間を持て余してしまう。

学校の授業が好きではないけど、学校の空気感がとっても好きだ。

同学年の人たちが周りにイッパイいるのも悪くない。

それに、学校に行けば隣の席に大好きな人がいる。

きっと恋をしている人は、好きな人に会えるってだけで学校に行くのが楽しくなってしまうんじゃないかと思うし私も実際そうなのだ。

だから、夏休みになってしまうと、好きな人に会えなくなってしまう日々はものスゴく長く感じてしまう。

でも、私の唯一の救いは、好きな人とメールでいつでも連絡を取り合えるということ。

そして、彼が出演する舞台公演を観に行けば彼に会えるということ。

夏休みに入る前も、土曜と日曜日は毎週のように舞台を観に行っていた。

舞台が終わってからも、外で出待ちをして、一番最後尾に並んで、彼に1輪の花を渡し、握手を交わした。

もちろん、私だとわからないように変装をしていった。

頭には帽子をかぶり、その中に長い髪を入れた。

上は地味目のTシャツに、下はベージュのスラックスを履き、リュックを背負って行くのが私の定番になった。

鏡で見たから間違いないけど、これなら誰だかわからないし、男子か女子かもわからないと思う。

実際にこの格好で何度も彼に会ったけど、私とは気付かれていなかった。

それでも毎週舞台を観に行き、彼を出待ちしている私の存在を彼は覚えてくれていた。

「いつもありがとう」と声をかけられるようになった。

私は話が出来ないし、声も出すとバレてしまう恐れがあるから何も話せないけど、彼は学校にいる時と何も変わらない、何も飾らない自然体で私に接してきてくれた。

夏休みに入って、彼の舞台には5回ほど足を運んだ。

今日で6回目。

でも、明日の最終公演のチケットだけは手に入れることが出来なかった。

かなりの人気で販売開始後、数分で売り切れてしまっていたから。

だけど、たとえ舞台公演は見れなくても出待ちだけは来ようと思っていた。

今日の公演が終わっていつものように外で出待ちをしていた。

そして彼はファンの1人1人と握手を交わし、プレゼントを受け取っていた。

とうとう最後尾に並ぶ私のところに彼がやって来た。

毎週、こうして彼と向き合っているけど、毎回のように緊張して手が震える。

彼に1輪の花を渡した。
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