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五話 『お出かけ』
しおりを挟む――俺はノーマルだったはずだ。同性愛を否定する気はさらさらないが。俺はノーマルなはずだ。……そう、はずだったのだ。
しかし……
「(上原悠馬のことが……頭から離れない……)」
この前……俺に告白してきた上原悠馬。あいつが……俺の頭から離れない。
おかしい、俺はノーマルだ。なのに、何故。頭から離れないというのだ。
「俺と上原悠馬は……友達……なんだよな……」
そうだ。俺とあいつは友達なんだ。あいつが俺に告白してきたから、俺は意識してしまっているのか……? いや、違う。
じゃあ何故だ? なぜ俺はあいつが頭から離れないんだ?
「……好き、だから。か……?」
俺は……あいつを好きになってしまったのか? ……確かにあいつはいい奴だ。明るくて、面白くて、話していて楽しい。……だけども。
「………チョロすぎないか……?俺」
バカバカしい。俺はノーマルだ。今までも、そしてこれからも。上原悠馬だって何で俺に告白してきたのか……のもまだ分からない。もしかしたら、罰ゲームか何かで俺に告白したのかもしれない。
……だけど、彼を見ていたら罰ゲームでヘラヘラと告白するような奴じゃないことぐらい、すぐに分かる。
もし、罰ゲームだというのなら俺の見る目がなかっただけだ。
でも、もしそうじゃないのなら……俺はどうするのだろうか。
答えは分からない。
「俺は……」
心臓は鳴り止まない。鼓動が早くなる。
……俺は、上原悠馬に恋をしているのか? 分からない。分からないんだ。
「……兄さん」
……声が聞こえる。この声は……
俺は、ゆっくりと振り向いた。
そこには、怪訝そうに首を傾げている龍馬がいた。…龍馬というのは俺の弟。俺の弟だけど出来がいい。頭は良いけど、運動は出来ない。そんなやつだ。
……本当に俺の弟か?と思うほど出来が違う。恐らく、父親の血を継いでいるのだろう。俺は父親の悪いところと母親の悪いところを両方受け継いでいるような気がする。
「どうしたの?そんな大声出してさ。うるさいんだけど。兄さんの呻き声とか聞き苦しいから辞めてくれる?」
龍馬は毒舌だ。それは俺だけではなく、周りの奴らにもそうらしい。毒舌だけど周りに人は絶えないあたり、上手くやっているというか……加減が上手いというか。
「ご……ごめん。ちょっと考え事してて……」
「ふーん。そう……。あ、そういえば兄さんって明日暇?」
「え?暇だけど……」
「じゃあ、ちょっと付き合ってよ。買い物に行きたいんだ」
龍馬はそう言った。圧がすごい……。
……まあ、明日は暇だし、別にいいんだけどさ。……それに、上原悠馬のことばっかり考えていたから、気分転換にちょうどいいかもしれないし。
「……いいよ」
とそう言った。
△▼△▼
……やってきたのはアニメイトだった。
……アニメイト。それは、アニメや漫画が好きな人にとっては聖地とも言える場所。
俺も龍馬もアニメは好きなのでよく来るのだが……
「珍しいな。龍馬が俺とアニメイトに来るなんて」
龍馬はアニメが好きだし俺と同じオタクだが、俺と一緒にアニメイトなんて来たことがない。
いつも一人でアニメイトに行って、一人でグッズを買っている。
だから、俺と一緒にアニメイトに来るなんて珍しいのだ。
「僕だって兄さんと一緒になんて来たくなかったよ。でも、今日は兄さんでも何でもいいから一緒に来て欲しかったんだ。主に特典で」
「特典?……一人一つまでしか買えないやつか?」
「違うよ!当店別の特典のことだよ。僕としては閲覧用、保存用、布教用で3つ買いたいんだけど、お金が足りなくてね……それが出来ないから、兄さんに買ってきてもらおうと思って」
なるほど。……ようするに俺はカツアゲされているのか。
……まあ、龍馬が買いたいっていう特典は俺も気になるし、別にいいけどさ。
「分かったよ。じゃあ、俺は龍馬が欲しい特典を買ってくればいいんだな?」
「うん。そうだね。僕が欲しい特典はメロンブックス特典のやつね!タイトルはこれ!」
そう言って、龍馬は俺にスマホの画面を見せてきた。その画面に書いてある漫画のタイトルは……
「なにこれ……貴方に花束を……?」
「そう!これ、今大人気の漫画でさ、アニメ化もされてて人気なんだよ!」
……龍馬がこんなアニメを見るなんて意外だな。しかも絵柄が少女漫画だし。
……まあ、龍馬が見たいっていうなら買ってくるけど。
「この漫画の特典。すげぇ豪華なんだよ。まず、この漫画の作者が描く描き下ろしイラストカードもあるし、小冊子もあるし、書き下ろし漫画もあるし」
めちゃくちゃ早口で話すな……やはり、龍馬もオタクだし、安心するわ。
「というわけで、よろしく!兄さん!」
そう言って龍馬は去っていった。
△▼△▼
〝貴方に花束を〟を見つけて本棚取ろうとしたら手が当たってしまった。慌ててぶつかった相手に謝罪すると……
「あ、す、すみません……って、あれ?上原くん?」
上原悠馬とぶつかった。
△▼△▼
……気まずい。非常に気まずい。
今、俺は上原悠馬と一緒にアニメイトにいるのだが……
何喋ればいいか分からない。……その上、何か固まってるし。
「え、あ!あの……ごめん」
珍しく、上原悠馬がオロオロしている。
……珍しいな。こいつがこんなにテンパるなんて。それが逆に俺を冷静にさせた。
「……いや、こちらこそ。この漫画、取りたかったんだろ?」
そう言って、俺は漫画を上原悠馬に手渡したのだが……
「あっ、いや!別に取りたかったわけじゃないから、大丈夫だよ!」
「え?じゃあ、なんでこの漫画を……」
そう言った瞬間上原悠馬は素早くその場か去ってしまった。
……なんだったんだろう……?
「……兄さん、買えた?漫画」
龍馬が俺のもとに駆け寄ってきたて正気を取り戻し漫画を買った。
しかし……
「(上原悠馬のことが……頭から離れない……)」
この前……俺に告白してきた上原悠馬。あいつが……俺の頭から離れない。
おかしい、俺はノーマルだ。なのに、何故。頭から離れないというのだ。
「俺と上原悠馬は……友達……なんだよな……」
そうだ。俺とあいつは友達なんだ。あいつが俺に告白してきたから、俺は意識してしまっているのか……? いや、違う。
じゃあ何故だ? なぜ俺はあいつが頭から離れないんだ?
「……好き、だから。か……?」
俺は……あいつを好きになってしまったのか? ……確かにあいつはいい奴だ。明るくて、面白くて、話していて楽しい。……だけども。
「………チョロすぎないか……?俺」
バカバカしい。俺はノーマルだ。今までも、そしてこれからも。上原悠馬だって何で俺に告白してきたのか……のもまだ分からない。もしかしたら、罰ゲームか何かで俺に告白したのかもしれない。
……だけど、彼を見ていたら罰ゲームでヘラヘラと告白するような奴じゃないことぐらい、すぐに分かる。
もし、罰ゲームだというのなら俺の見る目がなかっただけだ。
でも、もしそうじゃないのなら……俺はどうするのだろうか。
答えは分からない。
「俺は……」
心臓は鳴り止まない。鼓動が早くなる。
……俺は、上原悠馬に恋をしているのか? 分からない。分からないんだ。
「……兄さん」
……声が聞こえる。この声は……
俺は、ゆっくりと振り向いた。
そこには、怪訝そうに首を傾げている龍馬がいた。…龍馬というのは俺の弟。俺の弟だけど出来がいい。頭は良いけど、運動は出来ない。そんなやつだ。
……本当に俺の弟か?と思うほど出来が違う。恐らく、父親の血を継いでいるのだろう。俺は父親の悪いところと母親の悪いところを両方受け継いでいるような気がする。
「どうしたの?そんな大声出してさ。うるさいんだけど。兄さんの呻き声とか聞き苦しいから辞めてくれる?」
龍馬は毒舌だ。それは俺だけではなく、周りの奴らにもそうらしい。毒舌だけど周りに人は絶えないあたり、上手くやっているというか……加減が上手いというか。
「ご……ごめん。ちょっと考え事してて……」
「ふーん。そう……。あ、そういえば兄さんって明日暇?」
「え?暇だけど……」
「じゃあ、ちょっと付き合ってよ。買い物に行きたいんだ」
龍馬はそう言った。圧がすごい……。
……まあ、明日は暇だし、別にいいんだけどさ。……それに、上原悠馬のことばっかり考えていたから、気分転換にちょうどいいかもしれないし。
「……いいよ」
とそう言った。
△▼△▼
……やってきたのはアニメイトだった。
……アニメイト。それは、アニメや漫画が好きな人にとっては聖地とも言える場所。
俺も龍馬もアニメは好きなのでよく来るのだが……
「珍しいな。龍馬が俺とアニメイトに来るなんて」
龍馬はアニメが好きだし俺と同じオタクだが、俺と一緒にアニメイトなんて来たことがない。
いつも一人でアニメイトに行って、一人でグッズを買っている。
だから、俺と一緒にアニメイトに来るなんて珍しいのだ。
「僕だって兄さんと一緒になんて来たくなかったよ。でも、今日は兄さんでも何でもいいから一緒に来て欲しかったんだ。主に特典で」
「特典?……一人一つまでしか買えないやつか?」
「違うよ!当店別の特典のことだよ。僕としては閲覧用、保存用、布教用で3つ買いたいんだけど、お金が足りなくてね……それが出来ないから、兄さんに買ってきてもらおうと思って」
なるほど。……ようするに俺はカツアゲされているのか。
……まあ、龍馬が買いたいっていう特典は俺も気になるし、別にいいけどさ。
「分かったよ。じゃあ、俺は龍馬が欲しい特典を買ってくればいいんだな?」
「うん。そうだね。僕が欲しい特典はメロンブックス特典のやつね!タイトルはこれ!」
そう言って、龍馬は俺にスマホの画面を見せてきた。その画面に書いてある漫画のタイトルは……
「なにこれ……貴方に花束を……?」
「そう!これ、今大人気の漫画でさ、アニメ化もされてて人気なんだよ!」
……龍馬がこんなアニメを見るなんて意外だな。しかも絵柄が少女漫画だし。
……まあ、龍馬が見たいっていうなら買ってくるけど。
「この漫画の特典。すげぇ豪華なんだよ。まず、この漫画の作者が描く描き下ろしイラストカードもあるし、小冊子もあるし、書き下ろし漫画もあるし」
めちゃくちゃ早口で話すな……やはり、龍馬もオタクだし、安心するわ。
「というわけで、よろしく!兄さん!」
そう言って龍馬は去っていった。
△▼△▼
〝貴方に花束を〟を見つけて本棚取ろうとしたら手が当たってしまった。慌ててぶつかった相手に謝罪すると……
「あ、す、すみません……って、あれ?上原くん?」
上原悠馬とぶつかった。
△▼△▼
……気まずい。非常に気まずい。
今、俺は上原悠馬と一緒にアニメイトにいるのだが……
何喋ればいいか分からない。……その上、何か固まってるし。
「え、あ!あの……ごめん」
珍しく、上原悠馬がオロオロしている。
……珍しいな。こいつがこんなにテンパるなんて。それが逆に俺を冷静にさせた。
「……いや、こちらこそ。この漫画、取りたかったんだろ?」
そう言って、俺は漫画を上原悠馬に手渡したのだが……
「あっ、いや!別に取りたかったわけじゃないから、大丈夫だよ!」
「え?じゃあ、なんでこの漫画を……」
そう言った瞬間上原悠馬は素早くその場か去ってしまった。
……なんだったんだろう……?
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龍馬が俺のもとに駆け寄ってきたて正気を取り戻し漫画を買った。
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