異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 まずは拠点の手前にスペースを作り、細長い入れ物を作り水を入れる。

「馬はこちらに」

 次に拠点の入り口を塞いでる壁を除き、中に浄化魔法を施す。

「中へどうぞ」

 最初に入って来たのは護衛の人(男)だ。
 要人警護って奴なんだろうな。
 立ち居振る舞いを見るだけでも相当できる感じだ。
 うっかり殺気を出しでもしたらバッサリ斬られそうだ。

「これがそなたが見せたかったものですか?」

 姫様が入って来て少しガッカリしてる様子だ。
 まぁここだけだと単に土壁で囲ったスペースでしかない。

「お見せしたいのはこちらにあります」

 奥の階段へと促す。
 まずは護衛の人が先行して姫様達も上がっていく。

「こ、これは……」

「ほぉ……」

 森と街並みの違いこそあるだろうけど、王城から眺める景色も絶景だろうからあまり感動しないのではないかと心配だったけどまずまずの反応で安心した。
 景色を眺めている内にテーブルと椅子を作る。

「どうぞ、こちらにお座りください」

 少し離れたところにもテーブルと椅子を作り、そこでまずはプリンの準備をしてマイナさんに告げる。
 マイナさんに呼ばれたメイドさんが毒見をして姫様のテーブルに持って行く。

「拙い手作りで恐縮なのですが……」

 景色効果で味もプラス補正されないだろうか。

「左のモノが甘さ控えめとなっております」

 金髪ねーちゃんは見るからに美味しそうに食べている。
 子爵と言ってもそこまで庶民と食べ物事情に差がないのか、それとも騎士団長という役職上意図的に兵士と同じ食事をするようにしてるのか。
 問題なのは姫様の方なのだが……

「中々に不思議な食感ですね。何という菓子なのですか?」

「プリンと呼んでおります」

 やはり甘味には慣れてる感じか。
 食感が好感触らしいがお義理で言ってるのかどうかがよく分からんな。
 どの道次のアイスクリームが最後の手札だ。
 再び隣のテーブルで用意してメイドさんが毒見をする……うん、明らかに毒見という範囲を逸脱して食べているが見なかったことにして姫様と金髪ねーちゃんにお出しする。

「あら」

「つ、冷たい」

 今度は高評価みたいだ。
 苦労して作った……まぁ言うほど苦労してないが、作った甲斐はあったな。

「ツトム」

「は!」

「本日は楽しませてもらいました。礼を言います」

「恐縮です」

「あとはマイナと話してください。では」

 姫様一行が騎乗して拠点を出発する。
 

 再び土壁で拠点の入り口を塞ぎ、一行の最後尾を歩く。

「ツトム殿」

 マイナさんが最後尾まで来て話しかけてきた。

「姫様が先程のお菓子のレシピを所望したいとの仰せです」

「わかりました」

 相当気に入ったのだろうな。

「それと姫様が懇意にされてる商会で商品化してはどうかとも仰っていました」

「自分は商売のことはよくわからないのですが……」

「商売に関しては全て商会に任せれば大丈夫ですよ。ノーグル商会という王都でも指折りの商会なのですが、ここバルーカにも店を出しておりますのでこの後行きましょう」

 自分が開発した訳でもないのに商売にしてしまっていいのだろうか?
 割り切るしかないかなぁ。
 この世界に伝えた手間賃ぐらいに考えておくか。
 それよりも問題なのは、商売として成立するのかってとこだな。
 バカ高い砂糖をたくさん使用してるだけにかなりの高額商品になってしまうだろう。
 大量生産するならコストを抑えられるが、それを阻むのが製造や保存に氷が必要な点だ。
 適性者の少ない氷結魔法の使い手を多数確保するのは無理だ。
 値段が高いままなら貴族や商人といった富裕層向けの限定販売になりそうだ。



 森を抜け城に入ったところで姫様一行とは別れ、マイナさんにノーグル商会のバルーカ店に案内された。
 場所は城の各門を十字に繋ぐ大通りを左折して少しのところにあった。
 商業ギルドから近いその店は、店という割には商品がロクに置いてない。
 後で聞いた話によると、ノーグル商会はバルーカにも多くの店舗を経営しており支店は事務所としての機能しかないらしい。
 扱っている商品は多岐に渡り、食品・衣服・雑貨・武具・馬・家畜と様々だ。

 そこで支店長(正確にはノーグル商会バルーカ領統括区域長)を紹介されたがマイナさんはレシピを教えたら即帰ってしまった。
 仲介料とか上納金とかそういうのはいいのだろうか?
 支店長に聞いてみたら、

「王家の方に金銭を渡してしまうと賄賂が横行する温床となってしまうので、後日献上品という形で気持ちを表すのです」

 また面倒なやり方だな。
 姫様への献上品ということであれば相当高価なモノでないとダメだろう。
 こりゃあ下手したら足が出るな。

「献上品は何を用意すればいいのでしょう?」

「私共でしたら扱っている商品で賄えてしまいます。高級な衣装などは喜ばれますし、武具や馬なら姫様が軍部との関係を強化するのに役立ちます」

「冒険者の方ですと無難なところで装飾品や絵画などでしょうか。魔道具みたいな珍しいアイテムも喜ばれます」

 何を選べば良いのやら。
 貴金属で済ますか。いらなければ換金すればいいのだし。
 後は元商人のルルカに任せるか……
 それがいいか。軍の依頼の間ルルカは王都に滞在するのだし、その時に何か探してもらえばいい。

「では商談に移りましょう」

 商談と言っても支店長の提示を了解していくだけだ。
 王族の仲介を受けての案件で下手なことはできないだろうし、無数に取り扱っている商品の内のたった1つ2つのことで悪さするとも思えない。
 もっとも完全に丸投げするのだから密告でもない限りは何をしようと俺が気付くことはないけど。

 結局利益の3割が俺の取り分となり、年2回支払われることになった。
 そして税金で5割持って行かれる。
 貴族だと税金はかなり低くなるそうだ。
 さすが貴族は汚い!



 契約を済ませノーグル商会を後にしてこれからどうしようか考える。
 今の最大の課題は飛行魔法の習得だ。
 南に狩りに行くのもルルカを王都に送るのにも必要な魔法だ。
 暇を見つけてはちょくちょく練習しているのだが、未だ習得できていない。
 軍を指導した時にコツを教えてもらったのだが、さらに誰かに習うか。
 ロイター子爵に頼んでも対応してくれそうだが、借りを作ると後でどんな無茶振りをされるか心配だ。
 冒険者に依頼を出してみるか。
 指導してもらってもダメだったら諦めてポイントを使うことにしよう。
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