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肆章
作られる真実
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神奈川県横浜市内。
事案発生から三日目、ハヤカワと少年は未だ逃亡生活を続けていた。
大きな公道から外れた裏道を二人並んで歩いている。
ヒトとすれ違うたび、レーサースーツのような服を着た男に中学生ほどの少年という奇妙な組み合わせに不思議な視線が送られるが、二人はそんなことを気にはしていなかった。
道の途中、古い小さな電気屋の外に展示されていたテレビで、とあるニュースが放送されていた。
「先ほど国家安全保障庁、警察庁が合同の記者会見で、昨日神奈川県川崎市内で殺人、誘拐の罪で重要指名手配中である早川容疑者と、誘拐されたとみられる15歳の少年を警邏中の警官が発見し、一時は防衛隊も出動する包囲を行いましたが逮捕には至らなかったと発表しました。」
そのニュースを見た少年はハヤカワの顔を見上げる。
「俺は重要指名手配犯、君は誘拐の被害者か。やはり役人は仕立て上げがうまい。」
ハヤカワがテレビの画面をじっと見つめながらそう言う。
少年が再びテレビの画面に視線を戻すとハヤカワが
「行こう。重要指名手配となっては止まってることはできない。」
と歩き始める
「うん。」。
強く返事をする少年もハヤカワに続いて歩き始めた。
「次、どこに行くの。」
行く当てがあるのか気になった少年は、ハヤカワに尋ねる。
「ああ。郊外にある廃工場なら、しばらくは身を潜められると思う。」
「わかった。」
その会話の後ろで、テレビを見ていた二人の中年女性が
「防衛隊員殺害に続いて近くにいた中学生の男の子を誘拐って、本当に何を考えてるんだろうねえ。」
「警察に防衛隊まで出動しても捕まえられないなんてそれもどうなんだろう。」
「逃げ方がうまいのかね。それに捕まえようとした隊員と警察は悪くない。全部犯人が悪いんだから。」
「そうねえ。」
ニュースの内容だけを見て、二人はそう話す。
事実を知らない一般人は、ハヤカワをただの犯罪者としか理解していなかった。
ニュースの内容以外を理解しようとはしなかった。
その話が聞こえた少年は歩みを止めた。
ハヤカワは歩みを止め、少年の方を振り返る。
少年は下を向いたまま立止まっている。
「僕も」
少年がそう言うと同時に顔を上げた。
「僕も兄ちゃんみたいな強い力が欲しい。」
ハヤカワの顔をまっすぐ見て、少年はそう言う。
ハヤカワはじっと少年を見つめ、口を開く。
「強い力が人を幸福にするとは限らない。こんな力、俺で最後でいい。それに」
ハヤカワは少年の顔をじっと見つめて、直ぐに正面を向き歩き始めた。
「ちょ、ちょまってよ」
少年はそう声を上げながら早歩きでハヤカワを追いかけた。
国家安全保障庁。
庁舎内会議室。
デストロン計画の主要メンバーが再び集められている。
「コード・ファイブの目撃情報については、現在横浜市でそれらしき男と少年を見たと通報があったそうですが、その一報のみ。防犯カメラにも姿を確認できず、完全にロストしています。」
司令部通信士でありデストロン計画主要メンバーの一員であるオザワが現状をメンバーに共有する。
そんな報告を笑うように
「そんな通報、当てにしなくとも見つかるのは時間の問題だろう。」
「まあ。ところで今回我々を集めたのは何の要件でしょう。」
セリザワがやけに冷静に話を切り出す。
「ああ。今回みんなに集まってもらったのは他でもない。昨日に続く、第二次コード・ファイブ制圧作戦についてだ。ナヤ君、詳しい話は頼む。」
防衛隊長官がそう言って、説明をナヤに託す。
ナヤが席から腰を上げる。
「まず今回の作戦における主軸となる内容。」
室内にいるメンバーが静まり返り、聞く耳を立てる。
「それは、サイボーグ・ウルトラ作戦第一号でサイボーグメンテナンスを受けて完成された特に優秀とされた4号,5号。これらに」
「最優秀作品を決めてもらうことだ。」
事案発生から三日目、ハヤカワと少年は未だ逃亡生活を続けていた。
大きな公道から外れた裏道を二人並んで歩いている。
ヒトとすれ違うたび、レーサースーツのような服を着た男に中学生ほどの少年という奇妙な組み合わせに不思議な視線が送られるが、二人はそんなことを気にはしていなかった。
道の途中、古い小さな電気屋の外に展示されていたテレビで、とあるニュースが放送されていた。
「先ほど国家安全保障庁、警察庁が合同の記者会見で、昨日神奈川県川崎市内で殺人、誘拐の罪で重要指名手配中である早川容疑者と、誘拐されたとみられる15歳の少年を警邏中の警官が発見し、一時は防衛隊も出動する包囲を行いましたが逮捕には至らなかったと発表しました。」
そのニュースを見た少年はハヤカワの顔を見上げる。
「俺は重要指名手配犯、君は誘拐の被害者か。やはり役人は仕立て上げがうまい。」
ハヤカワがテレビの画面をじっと見つめながらそう言う。
少年が再びテレビの画面に視線を戻すとハヤカワが
「行こう。重要指名手配となっては止まってることはできない。」
と歩き始める
「うん。」。
強く返事をする少年もハヤカワに続いて歩き始めた。
「次、どこに行くの。」
行く当てがあるのか気になった少年は、ハヤカワに尋ねる。
「ああ。郊外にある廃工場なら、しばらくは身を潜められると思う。」
「わかった。」
その会話の後ろで、テレビを見ていた二人の中年女性が
「防衛隊員殺害に続いて近くにいた中学生の男の子を誘拐って、本当に何を考えてるんだろうねえ。」
「警察に防衛隊まで出動しても捕まえられないなんてそれもどうなんだろう。」
「逃げ方がうまいのかね。それに捕まえようとした隊員と警察は悪くない。全部犯人が悪いんだから。」
「そうねえ。」
ニュースの内容だけを見て、二人はそう話す。
事実を知らない一般人は、ハヤカワをただの犯罪者としか理解していなかった。
ニュースの内容以外を理解しようとはしなかった。
その話が聞こえた少年は歩みを止めた。
ハヤカワは歩みを止め、少年の方を振り返る。
少年は下を向いたまま立止まっている。
「僕も」
少年がそう言うと同時に顔を上げた。
「僕も兄ちゃんみたいな強い力が欲しい。」
ハヤカワの顔をまっすぐ見て、少年はそう言う。
ハヤカワはじっと少年を見つめ、口を開く。
「強い力が人を幸福にするとは限らない。こんな力、俺で最後でいい。それに」
ハヤカワは少年の顔をじっと見つめて、直ぐに正面を向き歩き始めた。
「ちょ、ちょまってよ」
少年はそう声を上げながら早歩きでハヤカワを追いかけた。
国家安全保障庁。
庁舎内会議室。
デストロン計画の主要メンバーが再び集められている。
「コード・ファイブの目撃情報については、現在横浜市でそれらしき男と少年を見たと通報があったそうですが、その一報のみ。防犯カメラにも姿を確認できず、完全にロストしています。」
司令部通信士でありデストロン計画主要メンバーの一員であるオザワが現状をメンバーに共有する。
そんな報告を笑うように
「そんな通報、当てにしなくとも見つかるのは時間の問題だろう。」
「まあ。ところで今回我々を集めたのは何の要件でしょう。」
セリザワがやけに冷静に話を切り出す。
「ああ。今回みんなに集まってもらったのは他でもない。昨日に続く、第二次コード・ファイブ制圧作戦についてだ。ナヤ君、詳しい話は頼む。」
防衛隊長官がそう言って、説明をナヤに託す。
ナヤが席から腰を上げる。
「まず今回の作戦における主軸となる内容。」
室内にいるメンバーが静まり返り、聞く耳を立てる。
「それは、サイボーグ・ウルトラ作戦第一号でサイボーグメンテナンスを受けて完成された特に優秀とされた4号,5号。これらに」
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