オリジナル短編集

日本一のYouTuber

「あの大人気YouTuberビカキンが映画初出演&初主演！YouTubeの枠から飛び出し、巨大なスクリーンで暴れまわる！」
こう銘打って発表された映画は、公開前から評判は上々のものだった。
「彼は日本一のYouTuberですから。それが映画化となったら、そりゃもう売れるに決まってますよ」
プロデューサーはオカネ色に目を輝かせて、こう続けた。
「話題性だけでなく、スタッフ、監督、その他出演者にも超一流をかき集めました。きっと中身にも満足して頂けるはず。楽しみにしていてください」
一つの動画が数日で100万再生を優に超えるビカキンの映画は、ネット上でも「ゼッタイに見たい！」という声が多く集まった。
そしていよいよ、映画は全国各地で公開された。
しかし、期待とは裏腹に観客動員数は一向に奮わず。
あまりの集客の悪さに、公開後すぐに打ち切る映画館も少なくなかった。
日本一のYouTuberビカキンの映画は、まさかの大失敗に終わったのであった。


一方その頃、彼の活躍の場であるYouTubeでは、この映画は違法アップロードにより全世界へと公開されていた。再生回数は1000万超え。コメントでは、彼に対する賞賛の声に溢れかえっていた。

彼は、日本一の"YouTuber"であった。