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第1話 デート ♡

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 モテ期とは誰しも一度はあるらしいな、幼稚園の頃途中から俺はある女の子に毎日なぜか追いかけられていた。それが恥ずかしいからか避け続けた結果、積み木で後頭部を殴られ泣かされた、そんなぼやけた記憶だった気がする。あれはきっと恋心。昔の記憶を思い返しても取り返せやしないその子の……。

 ま、時が過ぎるのってはやいよな。俺は17歳高校生、ここまで大したイベントもなく底辺高で青春を謳歌、する予定だったんだが。

 いつからか死んだように生きていたっけな、高校受験を失敗してからだろうか。人間がダメ人間を製造しているのってきっとその瞬間が1番多いんだろうな、と俺は思う。

 俺の人生はもう死んでいる……だが、だがもしも青春時代がもうすぐ夢になっちまうその前に、モテ期ってヤツが転がり込んできたらどうする?

 17件、なんだとおもう?

 女だよ女。17件の女が俺を求めていやがんの!!

 こんな俺がだ! 俺と金払ってでもデートしたい女が17、人いる……。

 これが我がマママッチングアプリだ! ありがとう、ありがとう、本当にありがとうございます! そしてごめんなさい。

 この17人の素敵な女性の中から1人を選ばねばならない。何様だよってな! ……ほんとごめんなさいモテ期が絶頂したせいです。



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 数ある若者の中から彼に目をつけた素敵な女性たちは厳選されていった。

 まさに男女逆転現象、男子高校生は意外に需要があるのかもしれない、と彼は思った。

 残ったのが、この3名……。さぁて、こっから頂点を決めるんだが。ちょっと、楽しくなってきた、いやたのしすぎるなんだこれ……って。

 この人。

 もう絶対的に魂的に決まっていた。メプルさん。



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 ▽噴水前▽

 サングラスにセレブが被るような日除け帽子、白ずくめの女性がそわそわと立っていた彼の元に近付いてきていた。

 気付いた気付いてしまった、本当にきやがったァァ!!

 身体の中を歩いていたドキドキが疾りだし、それから目が離せない。彼女の足が止まった、俺の目の前。

「いた、待たせたかな? あなたが月無五百里つきなしいおりくんね」

「はいそうです! 俺が月無五百里、ですっ! メプルさん! あ、いや全然待ってないです! 俺が勝手に!」

 そう元気な声が響く。

 あまりの興奮高揚感メンタルがバグりボリュームを間違えたのか。

 周囲から見られている。見られていた。スマホをいじっていた者もその出会った2人に訝しみ他人事ながら目立つ2人に目を配り見ていた。

「……デートプラン考えたからこれ通りにやって」

「は、はい? はい!」

 ん? デートプランだと!? まぁこれが普通なのか。んなことより、めっちゃ興奮してきたああ!

 手渡され受け取ったプラン、しおりをぺらぺらと開き一瞬眺め。

「よしばっちり了解、メプルさん行きましょう!」

「え、ちょっと!」

「俺たちめっちゃ目立ってるっぽいんで早く溶け込みましょー!」

 驚いた彼女の手を引いて、噴水のそばから離れていった。コツコツと慌てたヒールと、最大限のおしゃれをした水色のシャツの彼は人の目を掻き分けて目的地へと向かい。



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 まずはおしゃれなカフェでパンケーキ。一瞬で記憶した彼女のデートプラン。俺の脳は人生ではじめてフル回転している、受験なんかよりよっぽど真剣今日こそ命懸けだ。

 月無五百里の向かい席の彼女、メプルは悩んでいた。サングラスごしでもわかる、あからさまな悩み顔。

 パンケーキ専門店のメニュー表とにらめっこしながら、苦戦、苦悩。

「えっと……これも……」

「あ、じゃあこの場合2種類頼めばいいのでは」

「……そうね、お願いするわ」

 パンケーキをシェアして食べるそれが彼女のデートプランの滑り出しだった。

 なんて可愛らしいプランなのだろう。きっとメプルさんは27歳その歳で初めてパンケーキ専門店というところに来たんだ。…………俺もはじめてだ!!!! こいよ、こいよパンケーキ。

 独特の雰囲気で話し合うお客様をやさしく無言で見守り、2人の注文を承った黒髪のメイド店員。



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▽▽▽



 20分後、少し待ち過ぎた気もするがやっと出てきたパンケーキ。

 どんと置かれた一枚の大皿。

「写真より多いのね……」

「ですね……あのお姉さん!」

 無言のメイド店員はお辞儀をし、くるり、その場を去っていった。

 何故か感じたその圧に吐き出すはずだった言葉は、呼び止めようと虚空をきった右手とともに呑み込むしかなかった。

 なぜだ……なんだナニが起こった……。これはおそらく俺に嫉妬した神さまがぶち撒けたバッドイベント、だがっ!

「とりあえず食べましょう! 美味そうですよこれ!!」

「……そうね。あ待ってコレ写真って撮るべきじゃないの?」

「あー、たしかに!」

「俺撮りますよ、あ、動画の方がいいかも!」

 そう言い五百里は撮影した、彼の構図指導の元にメプルは、切り分けるとこから撮られていた。

 巨大な、巨大過ぎるパンケーキは三角の1ピースに切り分けられ。その上に乗った溢れそうなほどの生クリームやら鮮やかなフルーツ群。

 彼女を主役とした動画は撮影されていく。

 小皿に置いて、撮影者に見せつけた一切れだけでもそれは大き過ぎた。

「でかっ! って、メプルさん顔小さいから余計デカ! てかこれ思いっきり注文間違ってるだろ、はははは」

「え、ふ……ふふ」



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 浮かれていた、浮かれている、俺は今超絶に浮かれている。

「あ、くりーむ」

 メプルは巨大な甘い城を攻略していた彼の口元の白をハンカチで拭いた。

 出だしからすべてが最高すぎる。

「無理して食べなくていいわ、残しましょう」

「いやこれぐらいっ」

 もうその敵城の5割ほどをがっつき攻略していた月無五百里。やる気に満ち溢れており、生命力も満ち溢れており。

 その様子を見守っていた彼女は。

「私別にたくさん食べるのが好きとか、ないから」

 彼の顔を見つめてそう言い放った。その耳を貫いた一言にパンケーキを貫いていたフォークは止まった。

「え……じゃあやめときます……はい、やめます! すみません残します!」

「よろしい。まだまだ序盤で体調崩されても困るし」

 そうクールに言いくすっとわらった。

 もう好きなんだが、もう既に好きなんだけど!


(じょ、序盤だとおおおお……あり得ないこいつらにこの私がなぜ────)



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 次に向かったのがゲーセン。彼女の気遣いを感じる、そう感じた。パンケーキの後のゲーセン、なんだそのバランス感覚センスの良さは。

 一通りのゲーセンっぽいゲームをたのしんだ俺たちは。やはり最終到達地はここ。メプルさんのプランはおそろしいぐらいに完璧だ。


 UFOキャッチャー、俺ががんばらないと。

 硬貨は投入されていき、アームが空を走る。

 地上のぬいぐるみ群をかき分けた200円分のアームは。



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 くそっ取れない!

 くそーー。

 くそくそくそくそおおおおおお。

 悪戦苦闘。ほどよくガヤガヤとうるさいゲームセンターに、その場だけは白熱集中力と生命力が他より一層違った異空間となっていた。

 なんとしても! 自腹だ。ユキイチもまだある! なんとしても!

「あの……もう」

「お客様よろし」

「うおおおお、両替バラしてくるうううう」

 店員もやって来ていた、あまりに不甲斐ない俺に慈悲を与えるつもりだ。ヤらせるかよッ!



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 制御台に硬貨を積み立て、猛者のスタイル。いや、よく考えるとそのスタイルは猛者とは言えないかもしれない。

 よしいくぞ!

 …………。

 …………。

 アームは上がり天を走る、ボタンを押しコントロールされ……。

 るはずのアーム、なんと言うことを聞かずに暴走してしまったのだ。


 ん制御がくそがああ。


 アームは狙いからはずれた、狙っていたぬいぐるみを無常にも過ぎ。

 地に勢いよく突き刺さった。UFOキャッチャーとは思えないヤバイ挙動に。

 地上のぬいぐるみは跳ね上がり、ピンとした尻尾が宙に飛び散った。

 唖然、呆然。一同はそれの行く末をじっとながめ。

 ガコン。その穴に勢いよくシュートされたのは。

 虹色の猫だった。

「こ、これは伝説の!?」

「すみませんお客様!! これをッ────」



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 騒がしいゲームセンター、少し下がった地下のガラスドアから上がった2人は街道を歩いていく。まだまだ空は明るく、人通りも程々に。

 やがて道を曲がり裏路地を行き。

「メプルさんよかったんですか?」

「うん、だって私はこのこが欲しかったから」

 黒い猫のぬいぐるみ、尻尾が少しちょんぎられていたのはその猫の個性なのだろう。

 そんな可愛い猫を2人がながめている間に、着いてしまった。

「じゃあ、いこっか……」

「は、はい!」



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 夢でも見ているのだろうか。サングラスを外した、すべてを脱ぎ捨てた彼女が俺の前にいた。

 長く黒い艶髪をひとつかきあげてこちらを見ている。彼女の白い素肌はあらわになり。整った顔はどこか儚げでクール、だが星色の瞳は特別であり。

 大きないかがわしいピンクの丸ベッド。そこにちょこんと腰掛ける彼女には不似合いに見えた、それが一層の興奮を生み月無五百里の陰茎はギンギンにそりかえった。

「俺で、いいんですね……!」

 そう言った。

 彼女は。

「……はい」

 そう言うと、唇を軽く奥にしまい大人びた顔立ちだがどこか純粋な少女のような反応。

 これ以上の興奮をもらっては。

 俺が出来るのはあとは彼女を押し倒すだけだった。

 いつの間にか彼女をピンクのベッドに押し倒していた俺は。順序を間違えていたがそれはもうどうにもならない。

 そのまま、流れのまま、抵抗をしない彼女の唇に吸い込まれた。

 唇と唇は重なり合いキスをした。

 興奮発情して押し倒したのに、そのキスはとても丁寧でやさしいものであった。

 やがて離れた唇、彼女と見つめ合い。デートプラン通りとはいかなかったがキスはクリアした。

 思い返せばこれはママ活。でも全然そんな気はしない、完全に俺はメプルさんに出会ったときからのめり込み忘れていた。

 次は何をすればいいのか。そう焦り考えていると。

 彼女は俺のちんこを握っていた。その細くやわい手にしこしこと慣れないやさしい手つき。

「こうすべきだと……えっとできてるかな気持ちいい?」

「はい、めっちゃ……あ」

 体勢を変えベッドの上で座り向かい合っていた。しこしこと右手は滑り上下しメプルは五百里の快感を高めようと頑張った。



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 彼女の方もしないといけない。彼女の股の間に顔を突っ込み開いた脚のおまんこを舐め上げる。

「んっ……はぁはっ、ん」

 メプルは見知らぬこそばゆい下半身の快感感覚に喘ぎ、左手はベッドシーツをくしゃりとつかみ少しのけぞった。右手の甲はは口元によせ。

 その姿は艶かしく非現実的、月無五百里は彼女をやさしく激しく舐め彼女の乱れる様子を沈んだ顔で見つめ、興奮しうれしくなった。



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 互いを愛撫し慣れないながらも快感を高め合った。気持ちいいか幾度も気持ちを確認し合うように。

 そしてついに。

 その身は重なりあった。

 恍惚の表情泣きそうな彼女の目、すでに挿入し繋がった2人。

 彼女の顔を見ながらゆっくりだったものは激しさを増す。

 息を荒げて小刻みに彼女を貫く。その度にメプルは喘ぐものだから、余計に若い男子高校生である月無五百里の興奮は高まり。ピストンにも力が増す。

 身勝手ながらも止まれない若い欲望を彼女に打ちつけていく。

 ズンズンとピンクベッドの上で一つになり腰を振り。互いの名を呼び合っていた。

「ハァハァ、メプルさんっ!」

「んん、はぁっ、月無くん、あっあ」

 それは彼女のデートプランには無かった事だった。名前を呼び合うそんな甘い恋人のような状況に酔いしれ2人はまた唇を重ねた。

 激しく繋がりながらのディープキス。

 濡れ濡れぬちゅりと若い雄は膣内を掻き乱しながら。大人びた顔の彼女は深く舌を絡めて唾液を絡め合う。

 その瞬間を味わいその幸福感と女性的快楽耐えられずメプルは既に逝っていた。

 彼の口に嬌声を塞がれながら。

 そんな事も知らずに五百里は激しく腰を打ち付けて。

「はぁはぁイクイク、メプルさんもう」

 快感でわけのわからない彼女は、彼に抱きつき身体を脚で絡め取り。

 密着する彼女の細い身体を貫きびゅるびゅると注ぎ込んだ。

 どぷどぷと膣内に注ぎ込まれているそのはじめての違和感と快感により一層ぎゅっと五百里にしがみついた。

 はぁはぁ、と乱れるお互いの息遣い。やがて波長を合わせるかのように繋がったままの2人の呼吸は重なりあった。



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 シャワーを浴びて汗と汚れを落とした。

 そんな2人の距離は急速に縮まっていた。

 バスタブに2人は一緒に入り。

「メプルさん俺! 好きです! メプルさんのことが!」

 そんな思いを単純に伝えてしまった。これはママ活デートであるそんな事ももう頭にはこれっぽっちも入っていなかった。

 ぱっと咲くように開いた星色の瞳はおどろき彼を見つめた。

 バスルームに彼の残響と静寂をおいて、透き通る声で振り絞り。

「私も……月無くんが好き」

 期待はしていなかった、ただ彼女に伝えたかった思いを伝えて好きと返ってきた。喜び。喜びが爆発しそうな月無五百里は、彼女に迫り。

 メプルはそれを受け入れた。

 やさしくキスをし、やがて目を閉じ絡まり合う舌。照れ臭い王道な台詞に似合わない味わい尽くすかのようなディープキスはつづき。

 それは月無五百里とメプルにとって最高の瞬間だった。



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 最高の瞬間にはまだ続きがあった。映画館にやってきた2人。駅の近くには地下シアターというものがあり、チケットを購入し五百里がいつもは買わないキャラメルポップコーンも今日という日は特別だった。



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 【血の一族】というアクション映画だった、大人なメプルさんは恋愛映画とか見たいよね、なのに俺に合わせてくれているんだろう。それが彼女のデートプランの最後であり、彼女の性格がなんとなく掴めてきた気がした。

 土曜日だが客はまばらであった。中央のいい席に陣取り堂々と2人は。

 驚いたり笑ったりでも悲しいそんなスクリーンに映されたそこそこのストーリーを共に見て甘いじかんが過ぎていく甘ったるい匂いのポップコーンも少しは減っていた。

 2時間の映画も終盤。王国を支配していた血の一族がついに雷の一族に追い詰められ、絶体絶命おそらくその先は。

 スクリーンの上にはくろい首が跳ねていた。

「え?」

 異様であった。静かなシーンに舞ったモノがどたりと落ちたのは映画を見て受け取った感情や情報ではない。月無五百里の身体は五感は、警鐘を鳴らし。

「ははははははひゃーーーー」

 イカれた声は前方から響き渡り。まだ映画は終わっていないのに立ち上がったシルエット。

「え、め、メプルさんに!!」
「逃げましょう月無くん!」

 彼女に手を引かれて。騒然とする場から逃れるため立ち上がった。

 その瞬間、辺りに飛びかった赤い雷。じゅー、と焦げ跡を残し。2人の逃げようとした先にぶつかり散ったそのあり得ないチカラ。

「おいおい神呪ジンジュ使いナニ一般人見捨てて逃げてんだ、はぁ?」

「なんで……!」

「なんで! だと? それはお前を戦える状況に持ち込むためだろうがはははは! お前からはヤバそうなまじないチカラがぷんぷん匂うんだよっ神呪使い」

 息を乱し唖然とする五百里、意味不明な言葉も頭には入って来ず。

 おもむろに手をかざした、遠目の汚い金髪男。一瞬赤く発光した手の平、言われずとも分かったさっきのアレが。

「アップグレード!」

 白刃は暗がりを斬り裂き。真っ直ぐに彼を襲った赤を弾き消した。

 メプルが右手に握ったスマホから伸びた白刃。

 スマホはアップグレードされ柄となり白いレーザー剣となり握られていた。

 め、メプルさん……なんだこれなんだこれなにが起こって……。

 腰を抜かしたように後ろの仕舞われた席へと倒れた五百里。

「ははははへぇおもしれぇ能力だ! 殺すまでは楽しませてくれよおお」

 狂い叫び、髪を豪快にかきあげた汚い金髪の男。

「逃げて」

「えメプルさん何これは……」

「いいから逃げて邪魔!!」

「へ……はい……」

「くくくいらねぇなそういうのは。ヤラせてもらうぜ女神呪使い」

 赤い雷はメプルを狙い連射された。

 ジャストタイミングで合わせるスマホビームブレードは赤を引き裂き打ち砕く。だが、捌き切れない自分に向かった赤いビームは相手をせずメプルは覚悟を決め映画館の席列を飛び超えながら敵へと迫った。

 余裕を見せる金髪男へと白刃は振り下ろされ。袈裟斬り。

 白刃は斬れ味するどく誰もいないシートを斬り裂き。その攻撃に対し後方へと華麗に避け去った男。

「それがお前の能力か神呪使い! 凄まじいじゃねえか」

「私はそんなの知らない! あなたは誰ッ!」

「ははははとぼけるよな。倒すべき敵の事すら知らないのか? 俺は曹雷、吸血鬼だ」

「吸血鬼!? 曹雷!?!?」

「さすがにそれは知っていたか。どうやら平和ボケしていたようだな日本人、はッ!!」

「ぐっ!」

 男の花のように開かせた両手から乱雑に発射された赤雷がメプルを襲った。

 バチバチとでたらめなビームが彼女の白い服とスカートを焼き焦がし。

「こいつは避け辛いだろ」

「くっ、アップグレードおお!」

 メプルは座席列をアップグレードし隆起するように出来た即席の孤形シールドでそのジリジリとやらしすぎる赤い雷攻撃を凌いだ。

「はははははなんだそのジンジュは大道芸人かははは」

 ……アップグレードさせるモノがないと。なんでこんな事に! 月無くんは逃げ。

「メプルさん! くっそアイツなんなんだよスクリーンから出てきたのか!?」

「な、なんで!? 月無くん!?」

「なんでってよく考えたらメプルさんを置いて逃げるなんて有り得ないですよ!」
「それにまだデート中ですから、金も貰ってます!」

 たたかい息を乱した彼女は近付いて来た彼の勢い良く発した言葉をよく聞いていたが、この焦燥感の中でよくは分からなかった。

「使ってくださいメプルさん!」

「……これは……!? 助かります!」

 狂ったような赤い雷の連射はアップグレードされた席の壁をあっという間に壊し貫いた。

 粉煙が舞う中に構え見えた右の白刃と、左の黒いスマホ。

「妙な神呪使い様の、二刀ってわけかい! はははは」

 黄白いぶつ切りのビーム弾丸は金髪の男にドカドカとぶつかり。

「アップ……グレード!!」

 左腰付近に構えられた黒い長方形。

 アップグレードされた月無五百里のスマホは片手でも握り持て放てる黒いスマートガンと化した。
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