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第43話:こんな事になるだなんて~カルロス視点~
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意識が朦朧とする中、俺は騎士団員に担がれ病院へと向かう。
「ルミタン…は、誰が運んでいるのだ?俺よりもルミタンを…それから運ぶのは女騎士に…」
「副騎士団長、何を言っているのですか?あなたは酷い怪我を負っているのですよ。とにかく話さないで下さい!」
騎士団員に怒られてしまった。俺の傷なんて大したことはない。ルミタンは崖から落ちたのだぞ。見た感じ命に別状はなかったが、足は間違いなく折れていた。顔からも血が出ていたし…
クソ、こんな時に俺は何をしているのだろう!悔しくて涙が込みあげてくるのを、必死に堪えた。
病院につくとすぐに手術室へと運ばれ、治療を受ける。かなり深い傷だった様で、治療に時間が掛かってしまった。
「傷口はしっかり縫いましたが、それでも酷い状況でした。とにかく、傷口が開かない様に、安静にしていてください」
先生から色々と言われたが、正直俺はルミタンが心配すぎてそれどころではなかった。手術が終わると、ベッドのまま病室へと移る。病室には心配そうな両親も待っていた。
「カルロス、クマに襲われたのだってな。酷い怪我ではないか!野外学習の範囲内にはクマは出ないはずだ。一体何があったんだい?ルミナス嬢も病院に運ばれた様で、さっきカリオスティーノ侯爵と泣きじゃくる元夫人、侯爵夫人を見たよ」
ルミタン…
そうだ、ルミタン。
ベッドから起き上がり、ルミタンを探す。
「おい、カルロス、どこに行くつもりだ」
後ろから父上の叫び声が聞こえるが、今はそれどころではない。とにかくルミタンが気になって仕方がないのだ。廊下を出て辺りを見渡すと、いた!ルミタンだ!
急いでルミタンに駆け寄る。どうやら酷い怪我だった様で、ベッドに寝かされていた。ルミタンをこんな酷い姿にさせてしまった事に、改めて後悔の念が溢れ出す。
そんな俺に、“カルロス様のせいではない。私が悪かったのだ”と、笑顔を向けてくれるルミタン。なんて優しい子なんだ…こんな優しい子を、あの女は…
言いようのない怒りがこみ上げてくる。とにかくルミタンにこんな怪我を負わせたのは俺のせいだ。これからは彼女を守れる様、ずっと傍にいよう。そう思ったのだが…
「カルロス、お前は病人なんだぞ、すぐに病室に戻るぞ」
父親と護衛たちに連れられ、病室へと連れ戻されてしまったのだ。
「それで一体何があったんだ?ルミナス嬢も酷い怪我を負っていた様だが…」
「ルミタンは…アナリス殿下に崖から突き落とされたのです。俺が1匹だけ現れた魔物の対応に追われている間に…急いで助けに向かったのですが、大けがを負ったルミタンがクマに襲われそうになっていて、それで…俺はルミタンを守れなかった…誰よりも大切な子なのに…」
気が付くと涙が溢れていた。俺があの時傍を離れなければ、ルミタンはあの女に崖から突き落とされることもなかったんだ…俺が全部悪んだ…
「次期騎士団長になる予定の男が、ビービー泣くな!それよりカルロス、魔物が1匹だけ現れたとはどういう事だ?」
「まだ調査中なので分かりませんが、サンダードラゴンの子供でした。足に繋がれていた跡があるので、何者かによってあの地に連れてこられて、放たれた様です」
「何だって!そんな事をすれば、怒った魔物たちがまた民たちを襲うかもしれないのだぞ。誰がそんな愚かな事を…もしかして、アナリス殿下…」
父上もとっさに感づいたのだろう。多分あの女がやったと、俺も思っている。
「とにかく今、騎士団長たちが調査を進めてくれているはずです。それよりもルミタンが心配なので。そうだ、いつでもルミタンを看病できる様、同じ部屋に俺のベッドを運ぼう」
早速立ち上がろうとしたのだが…
「待て、カルロス。お前は大けがをしているのだぞ。今日は絶対安静と医者にいわれたのだろう?とにかく、明日にしなさい!」
「俺のせいでルミタンは怪我をしたのですよ!俺は大丈夫です、誰がなんと言おうと、俺はルミタンの部屋に行く!」
無理やり起き上がろうとする俺を、父上が止めようとするが、俺はこれでも次期騎士団長を言われているのだ。たとえ怪我をしていても、父上くらい簡単に跳ね除けられる。
「カルロス、まずは自分の体を…」
「いいえ、ルミタンの元へ向かいます」
父上を跳ね除け、部屋から出ようとした時だった。
「待って、カルロス。いくらルミナスちゃんがあなたの婚約者だとしても、同じ病室で寝泊まりするだなんて、さすがに侯爵や元夫人に許可がいるはずよ。私が夫人に聞いてあげるから、ベッドを運ぶのは待ちなさい。病院側にも確認をとらないといけないし」
「おい、何を言っているのだ!お前まで…」
「カルロスの事だから、私たちが反対してもきっとルミナスちゃんの部屋に押しかけるわ。カルロス自身も大けがをしているのだから、それならいっその事、同じ部屋に寝かしておいた方がカルロスも大人しくしているでしょう。とにかく夫人には私が話すから…」
「分かったよ…本当にカルロスには困ったものだ!」
どうやら母上のお陰で、うまく行った様だ。
「それじゃあ俺は、ルミタンの元に向かいますので。母上、部屋の事を頼みましたよ。ドリトルに聞かれるとうるさいので、こっそりと元夫人に話してください」
そう伝え、部屋から出たのだった。
「ルミタン…は、誰が運んでいるのだ?俺よりもルミタンを…それから運ぶのは女騎士に…」
「副騎士団長、何を言っているのですか?あなたは酷い怪我を負っているのですよ。とにかく話さないで下さい!」
騎士団員に怒られてしまった。俺の傷なんて大したことはない。ルミタンは崖から落ちたのだぞ。見た感じ命に別状はなかったが、足は間違いなく折れていた。顔からも血が出ていたし…
クソ、こんな時に俺は何をしているのだろう!悔しくて涙が込みあげてくるのを、必死に堪えた。
病院につくとすぐに手術室へと運ばれ、治療を受ける。かなり深い傷だった様で、治療に時間が掛かってしまった。
「傷口はしっかり縫いましたが、それでも酷い状況でした。とにかく、傷口が開かない様に、安静にしていてください」
先生から色々と言われたが、正直俺はルミタンが心配すぎてそれどころではなかった。手術が終わると、ベッドのまま病室へと移る。病室には心配そうな両親も待っていた。
「カルロス、クマに襲われたのだってな。酷い怪我ではないか!野外学習の範囲内にはクマは出ないはずだ。一体何があったんだい?ルミナス嬢も病院に運ばれた様で、さっきカリオスティーノ侯爵と泣きじゃくる元夫人、侯爵夫人を見たよ」
ルミタン…
そうだ、ルミタン。
ベッドから起き上がり、ルミタンを探す。
「おい、カルロス、どこに行くつもりだ」
後ろから父上の叫び声が聞こえるが、今はそれどころではない。とにかくルミタンが気になって仕方がないのだ。廊下を出て辺りを見渡すと、いた!ルミタンだ!
急いでルミタンに駆け寄る。どうやら酷い怪我だった様で、ベッドに寝かされていた。ルミタンをこんな酷い姿にさせてしまった事に、改めて後悔の念が溢れ出す。
そんな俺に、“カルロス様のせいではない。私が悪かったのだ”と、笑顔を向けてくれるルミタン。なんて優しい子なんだ…こんな優しい子を、あの女は…
言いようのない怒りがこみ上げてくる。とにかくルミタンにこんな怪我を負わせたのは俺のせいだ。これからは彼女を守れる様、ずっと傍にいよう。そう思ったのだが…
「カルロス、お前は病人なんだぞ、すぐに病室に戻るぞ」
父親と護衛たちに連れられ、病室へと連れ戻されてしまったのだ。
「それで一体何があったんだ?ルミナス嬢も酷い怪我を負っていた様だが…」
「ルミタンは…アナリス殿下に崖から突き落とされたのです。俺が1匹だけ現れた魔物の対応に追われている間に…急いで助けに向かったのですが、大けがを負ったルミタンがクマに襲われそうになっていて、それで…俺はルミタンを守れなかった…誰よりも大切な子なのに…」
気が付くと涙が溢れていた。俺があの時傍を離れなければ、ルミタンはあの女に崖から突き落とされることもなかったんだ…俺が全部悪んだ…
「次期騎士団長になる予定の男が、ビービー泣くな!それよりカルロス、魔物が1匹だけ現れたとはどういう事だ?」
「まだ調査中なので分かりませんが、サンダードラゴンの子供でした。足に繋がれていた跡があるので、何者かによってあの地に連れてこられて、放たれた様です」
「何だって!そんな事をすれば、怒った魔物たちがまた民たちを襲うかもしれないのだぞ。誰がそんな愚かな事を…もしかして、アナリス殿下…」
父上もとっさに感づいたのだろう。多分あの女がやったと、俺も思っている。
「とにかく今、騎士団長たちが調査を進めてくれているはずです。それよりもルミタンが心配なので。そうだ、いつでもルミタンを看病できる様、同じ部屋に俺のベッドを運ぼう」
早速立ち上がろうとしたのだが…
「待て、カルロス。お前は大けがをしているのだぞ。今日は絶対安静と医者にいわれたのだろう?とにかく、明日にしなさい!」
「俺のせいでルミタンは怪我をしたのですよ!俺は大丈夫です、誰がなんと言おうと、俺はルミタンの部屋に行く!」
無理やり起き上がろうとする俺を、父上が止めようとするが、俺はこれでも次期騎士団長を言われているのだ。たとえ怪我をしていても、父上くらい簡単に跳ね除けられる。
「カルロス、まずは自分の体を…」
「いいえ、ルミタンの元へ向かいます」
父上を跳ね除け、部屋から出ようとした時だった。
「待って、カルロス。いくらルミナスちゃんがあなたの婚約者だとしても、同じ病室で寝泊まりするだなんて、さすがに侯爵や元夫人に許可がいるはずよ。私が夫人に聞いてあげるから、ベッドを運ぶのは待ちなさい。病院側にも確認をとらないといけないし」
「おい、何を言っているのだ!お前まで…」
「カルロスの事だから、私たちが反対してもきっとルミナスちゃんの部屋に押しかけるわ。カルロス自身も大けがをしているのだから、それならいっその事、同じ部屋に寝かしておいた方がカルロスも大人しくしているでしょう。とにかく夫人には私が話すから…」
「分かったよ…本当にカルロスには困ったものだ!」
どうやら母上のお陰で、うまく行った様だ。
「それじゃあ俺は、ルミタンの元に向かいますので。母上、部屋の事を頼みましたよ。ドリトルに聞かれるとうるさいので、こっそりと元夫人に話してください」
そう伝え、部屋から出たのだった。
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