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三人のワルガキ(5)
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「ロボットじゃないってどういう事?」
少年少女科学館は併設のカフェの他にも休憩コーナーがある。恐らくは団体客が来た時の集合場所としても使われるであろうそこは、雰囲気は会議室のような感じで、長いテーブルが整然と並び、パイプ椅子が並んでいる。休憩室の入り口には自動販売機があって、中は飲食ができるようになっていた。
小学生の小遣いでカフェに入るのは懐が痛いが、持参の水筒で休憩するのであれば、最適なスペースだった。中には、幼児連れの家族や、女子ばかりのグループが自動販売機で買ったらしい飲み物で休憩をしたいた。
「だから、あのやりとりはロボットらしく無いって事」
イタルが、鼻をふくらませたようにして、ノブとタイガに宣言するように言った。
「まずひとつ目、自爆しようとした事、ロボットは自殺なんかしない」
「それとふたつ目、嘘をついた事」
どうだ! という顔をしてイタルが言うと、ノブとタイガはいまいちピンとこない、という顔をしている。
「やーでもさ、あらかじめ仕込んであったのかもしんねーじゃん」
タイガが言った。
「子供相手だろ? 馬鹿とか死ねとかうんことか、言われる事は想定済みなんじゃね?」
ノブのくせになかなかするどい事を言う。
「俺、おそうじロボットが水に突っ込んで自滅したって話ネットで読んだことある」
「へー、そんな事あるんだ」
ノブが驚いて聞くと、気を良くしたのかタイガは得意そうだ。
「あれは自殺じゃなくて、偶々機械のトラブルだって」
「え? そうなの? でも噴水に飛び込んだ、とかじゃなかったっけ?」
「俺も詳しい事は検索しないと覚えてないけどさあ……」
「でもさ、Siriだっけ? アイパッドとかに入ってるやつ、あれってけっこう皮肉っぽい事答えたりしねえ? 今時はもう技術があがっててさ、細かい受け答えもできるんじゃないかと思うんだけど」
ノブとタイガ、二人から責めるように言われると、イタルもなんだか自信が無くなってきた。
「そういうのも含めてさ、自分で話しかけてみればよかったじゃん」
ノブが言うと、タイガも、
「あー、俺、何聞こうかなー、AIは世界征服したいって思ってる? とか、 人間は愚かだと思う? あたりがいいのかな」
タイガはどうしてもターミネーターの世界観から離れられないようで、人間VSロボットの図式が強く印象に残っているようだった。
「俺は好きなアニメを聞く、プリキュアの歌が歌えるんだったら他の事も知ってそうだし」
「それで、斬撃の武人トークでもするわけ?」
「ああ、いいね、それ、オタクトークについてはお前らあてになんねーし、話し相手になってくれるんだったら、それこそおしゃべりロボットとして有能じゃん」
ノブも無邪気にロボットに夢を見ているようだった。
二人の様子を見ていたら、イタルは一人でピリついていたのがアホらしくなってきた。
「……まあ、実際にしゃべってみたらわかるか、たしかにそうかもな」
水筒の中の麦茶を二口ほど飲んで、イタルはもう一度『おしゃべりロボット』の元へ行くことにした。
少年少女科学館は併設のカフェの他にも休憩コーナーがある。恐らくは団体客が来た時の集合場所としても使われるであろうそこは、雰囲気は会議室のような感じで、長いテーブルが整然と並び、パイプ椅子が並んでいる。休憩室の入り口には自動販売機があって、中は飲食ができるようになっていた。
小学生の小遣いでカフェに入るのは懐が痛いが、持参の水筒で休憩するのであれば、最適なスペースだった。中には、幼児連れの家族や、女子ばかりのグループが自動販売機で買ったらしい飲み物で休憩をしたいた。
「だから、あのやりとりはロボットらしく無いって事」
イタルが、鼻をふくらませたようにして、ノブとタイガに宣言するように言った。
「まずひとつ目、自爆しようとした事、ロボットは自殺なんかしない」
「それとふたつ目、嘘をついた事」
どうだ! という顔をしてイタルが言うと、ノブとタイガはいまいちピンとこない、という顔をしている。
「やーでもさ、あらかじめ仕込んであったのかもしんねーじゃん」
タイガが言った。
「子供相手だろ? 馬鹿とか死ねとかうんことか、言われる事は想定済みなんじゃね?」
ノブのくせになかなかするどい事を言う。
「俺、おそうじロボットが水に突っ込んで自滅したって話ネットで読んだことある」
「へー、そんな事あるんだ」
ノブが驚いて聞くと、気を良くしたのかタイガは得意そうだ。
「あれは自殺じゃなくて、偶々機械のトラブルだって」
「え? そうなの? でも噴水に飛び込んだ、とかじゃなかったっけ?」
「俺も詳しい事は検索しないと覚えてないけどさあ……」
「でもさ、Siriだっけ? アイパッドとかに入ってるやつ、あれってけっこう皮肉っぽい事答えたりしねえ? 今時はもう技術があがっててさ、細かい受け答えもできるんじゃないかと思うんだけど」
ノブとタイガ、二人から責めるように言われると、イタルもなんだか自信が無くなってきた。
「そういうのも含めてさ、自分で話しかけてみればよかったじゃん」
ノブが言うと、タイガも、
「あー、俺、何聞こうかなー、AIは世界征服したいって思ってる? とか、 人間は愚かだと思う? あたりがいいのかな」
タイガはどうしてもターミネーターの世界観から離れられないようで、人間VSロボットの図式が強く印象に残っているようだった。
「俺は好きなアニメを聞く、プリキュアの歌が歌えるんだったら他の事も知ってそうだし」
「それで、斬撃の武人トークでもするわけ?」
「ああ、いいね、それ、オタクトークについてはお前らあてになんねーし、話し相手になってくれるんだったら、それこそおしゃべりロボットとして有能じゃん」
ノブも無邪気にロボットに夢を見ているようだった。
二人の様子を見ていたら、イタルは一人でピリついていたのがアホらしくなってきた。
「……まあ、実際にしゃべってみたらわかるか、たしかにそうかもな」
水筒の中の麦茶を二口ほど飲んで、イタルはもう一度『おしゃべりロボット』の元へ行くことにした。
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