上 下
32 / 120

わたしの考え

しおりを挟む
 何もかもがあって当たり前、与えられて当たり前ではない中で。
 与える側が、与えられる側の望んでいるものを、望んでいる通りに、すべて完璧に与えなくてはならないなんて義務を負っているのではないのならば。
 与えられる側は、それでも尚与えられているものをありがたく受け取れば良い。それだって本当は得られて当たり前のものではないのだから。
 
 そして、それだけのものを(与えなくて良いにもかかわらず)与えられているわたしは、それ以上のものを返せているのか。いないのなら返していかないと。
 
 そのためにも、今は、居られるうちは、家族の近くに居たい。
 近くにいることで、新たに与えられ続けるだろう。だからその分も返し続けていく。
 その関係性の連続を、意識せず自然に行えるのが、家族だと思う。
 
 というのが、めがみちゃんの考え方だった。

 
 その通りだと思うよ。
 思うんだけど、うーーーーーーん……。こう言っちゃ悪いけど、当たり前じゃない?

 大げさな言い方しているけど、誰もが自分にとって都合よく生きているわけじゃないし、そんな中でお互い助け合えたら良い。それが一番発生しやすいのが家族ってことを言っているだけだよね? 普通じゃない?
 
 なんていうか、やっぱり、めがみちゃんは恵まれて来ていたんだろうなと思う。

 まあ恵まれて育った子が、そのありがたさを認識して、感謝を持って生き、世の中に返していくというのだから、立派なんだと思う。

 誰かにとっては当たり前でも、そうでなかった人からしてみれば、そこに気付くだけだって大変なことだ。
 わたしだってエラそうなことなんてひとつも言えない。気付いていないことだって山ほどあるだろう。
 そういう意味では、恵まれた環境に安穏とせず、気付きを得ためがみちゃんは立派なんだろう。
 そのうえ、恵まれた人ならではの、穏やかで余裕のあるおおらかさは失われていないところも美点と言える。多分わたしには無い要素だ。

 
 わたしも、わたしの欠点を自覚している。
 だから律したいと思っている。

 
「お姉さん……いのりちゃんだよね? いのりちゃんのことも?」

 
 もう苦手とか、避けたいと思うことはなくなったと。
 たおやかな笑みを浮かべていうめがみちゃんの言葉には、いのりちゃんへの傾慕の情が込められているように感じた。

 
 無いものを想ったって仕方がないのに。
 誰か持っているものを羨んだって意味がないのに。

 
 頭では理解できている。
 人と自分は違う。

 自分が自分の都合を重視するように、人もまたその人の都合を重視して当然。そしてそれが、自分にとっての都合と合致することの方が稀少だと思うべき。
 
 そう考えれば、思い通りにならない大抵のことを、当たり前のものとして受け入れ、受け流すことができるはずなのに。
 それでも心のどこかで、羨んだり妬んだりする気持ちがあることを自覚してしまう。

 
 今さっきめがみちゃんの、開示しなくても良いにも関わらず明かしてくれた告白に対して、「そんなの当たり前じゃん」なんて思っておきながら、わたし自身到底できているとは思えない心の裡を認めていた。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

処理中です...