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合わさる世界
ダンジョンらしきもの
しおりを挟むまさか、その日のうちに見つかるなんて誰も思っていなかった一行は、戸惑いながらも入口付近の多少開けた場所へテントを設営した。
「この穴からあの数の魔物が出てきたのか…?」
「周囲に魔物の気配はありません」
「この穴からも、出てくる気配は無いな…
よし、今のうちに不寝番を決めるか」
そうして不寝番になるものは今のうちから寝て夜に備え、そうでない者は明日のダンジョン攻略に向けて荷物の準備をしたり、食事の用意をしたり…。
「しかし、いかにもな入口ですね」
「うん、下に降りていく系のダンジョンだね…
この感じだと」
古墳のような小山に空いた、洞窟の穴。
これがダンジョンでなかったら何なのか。
そんな穴の前で、パッセルとフェリスは前世の知識をベースに話をする。
「…ね、パッセル。
セーフルーム、あると思う?」
「う~ん、ローグ系だと無い可能性も…。
基本この世界も死んだら終わりですから、要件を満たしています。
それと、もしローグ系だとすれば食料が無いと死にますから、しっかり持って行きましょう」
結局、この中は未知の世界だ。
むしろ防塁からこっち側がまるまる未知の世界だという可能性もある。
パッセルはポケットから一つの石を取り出して、フェリスに見せた。
「…途中、殺した魔物から採取したものです」
「なにこれ、こんな宝石……あ、もしかして!」
「ええ、魔石なんじゃないかと。
握ってみてください、何やらじんわりきます」
「うん……お、おー……本当だ」
少なくとも、小説や農地経営SLGに魔石なんて出て来ない。
と、いう事は……。
「セーフルームは、期待しない方が」
「そうだね、あれば有難いぐらいの感じでいた方がいいよね。
って事は今日みたいに不寝番立てながらやってくしかないか…
未知の世界だもんね」
「ええ、未知の世界です」
パッセルはふと「シルウェストリス公なら知ってるかもしれないな…」と思い、フェリスに聞いてみた。
「…フェリス殿の父上が何か、今回の事に関して言っていませんでしたか」
「うん、必ず戻って来い、死ぬな、って…それだけ」
「…そうですか」
さすがにそう簡単に事は運ばないらしい。
***
翌日、テントを畳んで洞窟の入口あたりに隠し、毛布と食料と松明を背負い、一行は洞窟の前に立った。
「フェリスは外で待っていても良いんだぞ?」
「そうはいかないよ、これでも魔法使いだし…
あ、認識阻害の魔法かけるから、集まって!」
今から入るのは洞窟だ。
光の差さない暗闇の中で、魔物に先制するためには見つかりにくい事は必須。
「……よし。
ただ灯りを持ってるからね、気休め程度にしかならないけど」
「それでも充分です、有難う御座います」
「では、行くとするか…先頭は、」
「俺が行きます、夜目は利く方ですから」
「そうか、頼んだぞクレイド」
クレイドを先頭に、臨戦態勢で洞窟へ潜る。
入ってすぐにあるのは…
「……階段?」
「ああ、だが人為的な感じはしないな…
歩きやすくて助かる」
そのあざとい天然階段を慎重に降りる。
一歩、一歩…
「…どうやら、平らなところへ着いたぞ」
「ええ、ここからは左の壁に沿って進みましょう。
そうすれば出口に必ず着きますから」
迷路の左手の法則を使いながら、確実に進んで…
「前方、魔物の群れがいる、注意」
全員がクレイドの指令に頷く。
そろり、そろりと近づいて……
「……行くぞ!」
「フェリス殿!左壁キープ頼みます!」
「分かった!!」
フェリス以外のメンバーは左壁から手を離した。
クレイド以下騎士と王子2人は魔物の群れに不意打ちを食らわせるべく前方へ走る。
シルウェストリス騎士団のうち2名はフェリスを守る位置につき、パッセルは魔法を使うための動作に入る…
「照明火球、30秒、展開!」
洞窟内が照らされ、魔物の様子が明らかになる。
妙なヒレがついたトカゲが十数匹、こっちに気付いて…
「セイッ!」ドブッ
「ふん!」バシュッ
「おりゃぁ!!」ザン!!
先頭の3匹はその瞬間に息絶える、血の付いた剣をさらに先の敵へと向けながら、クレイドが叫ぶ。
「あと27秒!」ガッ!
そして、また一匹、減る。
だがその後ろにいるトカゲはクレイドの脇を通り抜け…
「来い!!」シュバッ
「遅い!」ドシュッ
後続の騎士や王子たちに仕留められる。
「あと22秒!」ガシッ!
「了解!」ズパン!
「一気に畳みかける!!」
そうして、21,20,19,18…
パッセルは息を整え、次の30秒の為に集中。
次はもう少し、向こう側へ……!
「あと10秒ぉ!」
「行きます、照明火球、30秒、展開っ!」
パッセルが叫ぶと、トカゲたちがいた場所から少し向こう側に火の玉が浮かぶ。
それによって少し先の様子が見え……
「で、っかい……!」
「全員でかかるぞ!」
今度は大きな蜘蛛の群れが、現れた。
「この穴からあの数の魔物が出てきたのか…?」
「周囲に魔物の気配はありません」
「この穴からも、出てくる気配は無いな…
よし、今のうちに不寝番を決めるか」
そうして不寝番になるものは今のうちから寝て夜に備え、そうでない者は明日のダンジョン攻略に向けて荷物の準備をしたり、食事の用意をしたり…。
「しかし、いかにもな入口ですね」
「うん、下に降りていく系のダンジョンだね…
この感じだと」
古墳のような小山に空いた、洞窟の穴。
これがダンジョンでなかったら何なのか。
そんな穴の前で、パッセルとフェリスは前世の知識をベースに話をする。
「…ね、パッセル。
セーフルーム、あると思う?」
「う~ん、ローグ系だと無い可能性も…。
基本この世界も死んだら終わりですから、要件を満たしています。
それと、もしローグ系だとすれば食料が無いと死にますから、しっかり持って行きましょう」
結局、この中は未知の世界だ。
むしろ防塁からこっち側がまるまる未知の世界だという可能性もある。
パッセルはポケットから一つの石を取り出して、フェリスに見せた。
「…途中、殺した魔物から採取したものです」
「なにこれ、こんな宝石……あ、もしかして!」
「ええ、魔石なんじゃないかと。
握ってみてください、何やらじんわりきます」
「うん……お、おー……本当だ」
少なくとも、小説や農地経営SLGに魔石なんて出て来ない。
と、いう事は……。
「セーフルームは、期待しない方が」
「そうだね、あれば有難いぐらいの感じでいた方がいいよね。
って事は今日みたいに不寝番立てながらやってくしかないか…
未知の世界だもんね」
「ええ、未知の世界です」
パッセルはふと「シルウェストリス公なら知ってるかもしれないな…」と思い、フェリスに聞いてみた。
「…フェリス殿の父上が何か、今回の事に関して言っていませんでしたか」
「うん、必ず戻って来い、死ぬな、って…それだけ」
「…そうですか」
さすがにそう簡単に事は運ばないらしい。
***
翌日、テントを畳んで洞窟の入口あたりに隠し、毛布と食料と松明を背負い、一行は洞窟の前に立った。
「フェリスは外で待っていても良いんだぞ?」
「そうはいかないよ、これでも魔法使いだし…
あ、認識阻害の魔法かけるから、集まって!」
今から入るのは洞窟だ。
光の差さない暗闇の中で、魔物に先制するためには見つかりにくい事は必須。
「……よし。
ただ灯りを持ってるからね、気休め程度にしかならないけど」
「それでも充分です、有難う御座います」
「では、行くとするか…先頭は、」
「俺が行きます、夜目は利く方ですから」
「そうか、頼んだぞクレイド」
クレイドを先頭に、臨戦態勢で洞窟へ潜る。
入ってすぐにあるのは…
「……階段?」
「ああ、だが人為的な感じはしないな…
歩きやすくて助かる」
そのあざとい天然階段を慎重に降りる。
一歩、一歩…
「…どうやら、平らなところへ着いたぞ」
「ええ、ここからは左の壁に沿って進みましょう。
そうすれば出口に必ず着きますから」
迷路の左手の法則を使いながら、確実に進んで…
「前方、魔物の群れがいる、注意」
全員がクレイドの指令に頷く。
そろり、そろりと近づいて……
「……行くぞ!」
「フェリス殿!左壁キープ頼みます!」
「分かった!!」
フェリス以外のメンバーは左壁から手を離した。
クレイド以下騎士と王子2人は魔物の群れに不意打ちを食らわせるべく前方へ走る。
シルウェストリス騎士団のうち2名はフェリスを守る位置につき、パッセルは魔法を使うための動作に入る…
「照明火球、30秒、展開!」
洞窟内が照らされ、魔物の様子が明らかになる。
妙なヒレがついたトカゲが十数匹、こっちに気付いて…
「セイッ!」ドブッ
「ふん!」バシュッ
「おりゃぁ!!」ザン!!
先頭の3匹はその瞬間に息絶える、血の付いた剣をさらに先の敵へと向けながら、クレイドが叫ぶ。
「あと27秒!」ガッ!
そして、また一匹、減る。
だがその後ろにいるトカゲはクレイドの脇を通り抜け…
「来い!!」シュバッ
「遅い!」ドシュッ
後続の騎士や王子たちに仕留められる。
「あと22秒!」ガシッ!
「了解!」ズパン!
「一気に畳みかける!!」
そうして、21,20,19,18…
パッセルは息を整え、次の30秒の為に集中。
次はもう少し、向こう側へ……!
「あと10秒ぉ!」
「行きます、照明火球、30秒、展開っ!」
パッセルが叫ぶと、トカゲたちがいた場所から少し向こう側に火の玉が浮かぶ。
それによって少し先の様子が見え……
「で、っかい……!」
「全員でかかるぞ!」
今度は大きな蜘蛛の群れが、現れた。
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