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まさか 6
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部屋には皆いて、穏やかに談笑していた。クロードは嬉しそうに妹と弟と笑みを交わしている。
「お待たせしました」
ビアンカさんがそう言うと、視線が俺に集まった。
立ち上がった侯爵がビアンカさんと俺に「さすが君が選んだだけあるね。アンリ、素敵だよ」と言って、ビアンカさんをエスコートして先に部屋を出た。
この低音、親子でそっくりだ。ゾクッとした。
「アンリ、この前約束しただろ。後でおしゃべりしよう」
この前の約束、そうだ。あの時、確かクロードとレオナの関係を知っているんだろうと匂わされて……勘違いしたんだ。二人の兄妹が仲良く出会いを喜んでいる間、普通にお喋りをしようと誘われていたんだということに気付いた。
「ははっ」
先輩は首を傾げてから、レオナをエスコートしていった。次いでにアルフレッドを連れて行ったところはさすが気がきくと評判なだけある。
「妹さんと……会ったことなかったの?」
「ああ、会いに行ったんだ。リン国へ。大使にまでなって。そしたら、入れ違いでレオナは彼女の父親についてこの国に来てて、会えなくて。大使にまでなったら母も会うことを許してくれるだろうと思ったんだが、甘かった」
「あんた、そういうところあるよな」
クロードが、一瞬泣きそうな顔をしたように見えた。
「最初の方はアンリに言ったら、相手にしてもらえなくなると思ってた。ヒューゴのために私を結婚式会場から連れ出そうとしてたみたいだから」
「そうだな。先輩には幸せになってもらいたかったから。こんな美形にさ、『逃げよう、一緒になりたい』て言われて断れる女はいないだろうと思ってたから」
「そういうところが、好き」
クロードは俺の手の甲にキスをした。
「俺は、顔だって普通だし、性格だって特にいいわけじゃない。仕事もそんな出来る方じゃないし、金も持ってない。クロードが好きとか愛してるとか言っても、俺の反応を見て遊んでるんじゃないかって思う」
俺ってこんなに卑屈だったっけ?
「反応をみて遊ばれているのは私のほうじゃないの?」
「なっ! そんなわけない」
クロードの言葉におさめていた怒りが湧く。俺、どうしてクロードが相手だと沸点が低いんだろう。
「ヒューゴに誘われたアンリを止めたくて、『そんなことするくらいなら止める』っていうのを待っていた私を煽ってたじゃないか」
「……俺が知らないだけで、ああいうのが普通なんだと思ったんだ……。だって、あんたフェラだってするじゃないか。リン国は危ない国だっていってたし、仕事場でもああやって遊んでたのかなって……」
「そりゃ、アンリが可愛いからフェラだってなんだってするよ。トロトロにとけて『クロ』って呼んでくれるなら」
犬のように呼ばれるの、好きなのか……。それもどうかと思うけど。
「食事、行かなくていいのか?」
「アンリとお話してから来なさいって父上に言われたんだ。先に食べてもらってるけど、いいよね?」
「別に構わない」
どうせ味なんてしないだろうし。
「アンリに、セフレって言われてショックだった。私はアンリを恋人だと思ってたし、まぁ譲ってもまだ両想いになれてないだけだと思ってたから――」
「両想いになれてないなら恋人じゃないだろ」
「そうだけど。凄く腹が立った。独り言で告白されて有頂天になってたのに、地獄に落とされた気分だった……。でも気付いたんだ。私がアンリに伝えていなかったんだって。大事にしたいって思ってるのに、してなかったんじゃないかって。だから……、身体だけじゃないって。一緒にいる時間を大事にしてるんだって。恋人なら家族に紹介しなきゃって思って――」
ああ、身体に飽きてきたんだと思ったけど違ったんだ。あの薔薇も、家族への紹介もクロードなりに考えた俺への誠実さだったんだ。
「全然伝わってなかったけどな!」
しょんぼりしたクロードの耳と尻尾が垂れてるように見えた。幻覚も次第にリアルに見える。
「伝わってなかった?」
「ああ、全く。クロードは俺の身体に飽きたんだと思ったよ。でもそれでもいいかって、友達のような上司と部下のような関係のほうがこんな感情に振り回されないでよかったって思う」
「嫌だ! アンリ、捨てないで……」
どうしてこんな風に捨て身で、と思って気付いた。クロードはきっと寂しかったんだ。両親が離婚して生まれ育ったところから離されて。父親は忙しいだろうし、そのうち恋人が出来て、母親は再婚して……。妹には会えなくて。
「クロードは何で俺を好きになったんだ?」
「……クロって呼んで、優しい笑顔で何をしても『クロ、駄目だろ』って言いながら許してくれて……だから私は甘えていたんだ。アンリは懐が広くて、優しくて……大好き。側にいられるなら私は犬になりたい」
そこまで言われて断れる性格じゃない。俺だってクロードのことが好きなんだ。幸せになってほしい。
「犬じゃ駄目だ。犬に愛してるとか言ったら変態だろ」
「愛してるって言ってくれるの? ヒューゴのことは諦めてくれる?」
「先輩のことは憧れだって……。俺はずっとクロードのこと……多分、好きなんだと思う」
そうじゃなかったら、あんなこと、先輩を誘惑して……なんて思わなかった。まぁ、先輩が誘ってきてるって誤解がなかったらそれもなかったけど。
「多分でも嬉しい。アンリ、結婚してください」
そそくさと出してきた指輪に驚いた。そこまで考えてなかった。けれど、ここでそれはちょっと……って言ったらクロードを傷つけそうで。
「結婚は、妹がしてからかなぁ……。やっぱり心配だし!」
「そうか、そうだね。責任感が強いからアンリは。わかった」
あまりに素早い撤回に、あれ、こいつそんなに結婚したかったわけじゃないのかと少し寂しくも思った。けれど、これは俺の我が儘だ。だからクロードにキスをした。軽いキス。
「アンリ、それは誘ってるの?」
「そんなわけないだろ。食事、行かないとな。ほら、俺は場所知らないんだから連れて行ってくれよ」
ガッカリされた。このタイミングで誘うわけないじゃないか。でもあまりにしょぼんとしてるから、思わず言ってしまった。
「今日は泊まるんだろ」
って。ああ、眩しい。笑顔が凄くキラキラしてて、何か変な薬でも使ってるの? ってくらいテンションの高くなったクロードに連れられてクロードの家族の待つ部屋に連れて行かれた。
さすがビアンカさん、クロードと俺を見て「乾杯しましょう。一番高くて美味しいお酒持ってきてちょうだい」と執事に命じた。バレてる。
それから、少しとげとげしているリオナと反抗期かなっていうアルフレッドに苦笑しながら美味しい食事を味わった。
「お待たせしました」
ビアンカさんがそう言うと、視線が俺に集まった。
立ち上がった侯爵がビアンカさんと俺に「さすが君が選んだだけあるね。アンリ、素敵だよ」と言って、ビアンカさんをエスコートして先に部屋を出た。
この低音、親子でそっくりだ。ゾクッとした。
「アンリ、この前約束しただろ。後でおしゃべりしよう」
この前の約束、そうだ。あの時、確かクロードとレオナの関係を知っているんだろうと匂わされて……勘違いしたんだ。二人の兄妹が仲良く出会いを喜んでいる間、普通にお喋りをしようと誘われていたんだということに気付いた。
「ははっ」
先輩は首を傾げてから、レオナをエスコートしていった。次いでにアルフレッドを連れて行ったところはさすが気がきくと評判なだけある。
「妹さんと……会ったことなかったの?」
「ああ、会いに行ったんだ。リン国へ。大使にまでなって。そしたら、入れ違いでレオナは彼女の父親についてこの国に来てて、会えなくて。大使にまでなったら母も会うことを許してくれるだろうと思ったんだが、甘かった」
「あんた、そういうところあるよな」
クロードが、一瞬泣きそうな顔をしたように見えた。
「最初の方はアンリに言ったら、相手にしてもらえなくなると思ってた。ヒューゴのために私を結婚式会場から連れ出そうとしてたみたいだから」
「そうだな。先輩には幸せになってもらいたかったから。こんな美形にさ、『逃げよう、一緒になりたい』て言われて断れる女はいないだろうと思ってたから」
「そういうところが、好き」
クロードは俺の手の甲にキスをした。
「俺は、顔だって普通だし、性格だって特にいいわけじゃない。仕事もそんな出来る方じゃないし、金も持ってない。クロードが好きとか愛してるとか言っても、俺の反応を見て遊んでるんじゃないかって思う」
俺ってこんなに卑屈だったっけ?
「反応をみて遊ばれているのは私のほうじゃないの?」
「なっ! そんなわけない」
クロードの言葉におさめていた怒りが湧く。俺、どうしてクロードが相手だと沸点が低いんだろう。
「ヒューゴに誘われたアンリを止めたくて、『そんなことするくらいなら止める』っていうのを待っていた私を煽ってたじゃないか」
「……俺が知らないだけで、ああいうのが普通なんだと思ったんだ……。だって、あんたフェラだってするじゃないか。リン国は危ない国だっていってたし、仕事場でもああやって遊んでたのかなって……」
「そりゃ、アンリが可愛いからフェラだってなんだってするよ。トロトロにとけて『クロ』って呼んでくれるなら」
犬のように呼ばれるの、好きなのか……。それもどうかと思うけど。
「食事、行かなくていいのか?」
「アンリとお話してから来なさいって父上に言われたんだ。先に食べてもらってるけど、いいよね?」
「別に構わない」
どうせ味なんてしないだろうし。
「アンリに、セフレって言われてショックだった。私はアンリを恋人だと思ってたし、まぁ譲ってもまだ両想いになれてないだけだと思ってたから――」
「両想いになれてないなら恋人じゃないだろ」
「そうだけど。凄く腹が立った。独り言で告白されて有頂天になってたのに、地獄に落とされた気分だった……。でも気付いたんだ。私がアンリに伝えていなかったんだって。大事にしたいって思ってるのに、してなかったんじゃないかって。だから……、身体だけじゃないって。一緒にいる時間を大事にしてるんだって。恋人なら家族に紹介しなきゃって思って――」
ああ、身体に飽きてきたんだと思ったけど違ったんだ。あの薔薇も、家族への紹介もクロードなりに考えた俺への誠実さだったんだ。
「全然伝わってなかったけどな!」
しょんぼりしたクロードの耳と尻尾が垂れてるように見えた。幻覚も次第にリアルに見える。
「伝わってなかった?」
「ああ、全く。クロードは俺の身体に飽きたんだと思ったよ。でもそれでもいいかって、友達のような上司と部下のような関係のほうがこんな感情に振り回されないでよかったって思う」
「嫌だ! アンリ、捨てないで……」
どうしてこんな風に捨て身で、と思って気付いた。クロードはきっと寂しかったんだ。両親が離婚して生まれ育ったところから離されて。父親は忙しいだろうし、そのうち恋人が出来て、母親は再婚して……。妹には会えなくて。
「クロードは何で俺を好きになったんだ?」
「……クロって呼んで、優しい笑顔で何をしても『クロ、駄目だろ』って言いながら許してくれて……だから私は甘えていたんだ。アンリは懐が広くて、優しくて……大好き。側にいられるなら私は犬になりたい」
そこまで言われて断れる性格じゃない。俺だってクロードのことが好きなんだ。幸せになってほしい。
「犬じゃ駄目だ。犬に愛してるとか言ったら変態だろ」
「愛してるって言ってくれるの? ヒューゴのことは諦めてくれる?」
「先輩のことは憧れだって……。俺はずっとクロードのこと……多分、好きなんだと思う」
そうじゃなかったら、あんなこと、先輩を誘惑して……なんて思わなかった。まぁ、先輩が誘ってきてるって誤解がなかったらそれもなかったけど。
「多分でも嬉しい。アンリ、結婚してください」
そそくさと出してきた指輪に驚いた。そこまで考えてなかった。けれど、ここでそれはちょっと……って言ったらクロードを傷つけそうで。
「結婚は、妹がしてからかなぁ……。やっぱり心配だし!」
「そうか、そうだね。責任感が強いからアンリは。わかった」
あまりに素早い撤回に、あれ、こいつそんなに結婚したかったわけじゃないのかと少し寂しくも思った。けれど、これは俺の我が儘だ。だからクロードにキスをした。軽いキス。
「アンリ、それは誘ってるの?」
「そんなわけないだろ。食事、行かないとな。ほら、俺は場所知らないんだから連れて行ってくれよ」
ガッカリされた。このタイミングで誘うわけないじゃないか。でもあまりにしょぼんとしてるから、思わず言ってしまった。
「今日は泊まるんだろ」
って。ああ、眩しい。笑顔が凄くキラキラしてて、何か変な薬でも使ってるの? ってくらいテンションの高くなったクロードに連れられてクロードの家族の待つ部屋に連れて行かれた。
さすがビアンカさん、クロードと俺を見て「乾杯しましょう。一番高くて美味しいお酒持ってきてちょうだい」と執事に命じた。バレてる。
それから、少しとげとげしているリオナと反抗期かなっていうアルフレッドに苦笑しながら美味しい食事を味わった。
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