またあの日のように

怜來

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「お願いだ…助けてくれ…」
 男は助けを求めていた。だが、問答無用に男を殺す。悪事をはたらいたのだから殺されて当たり前。なんで人を殺しておいて自分だけ助かろうとしているのだろう。意味がわからない。
「排除しました」
 ボスに伝える。今回もいつも通り任務をこなす。自分の仕事は殺し屋みたいなもの。悪事をはたらいたものをシバいていく。こんな仕事いつから始めたのだろう。自分でも分からなかった。
 仕事をした後はいつも行く店でご飯を食べる。そこの料理は最高に美味しかった。
 ふとテレビに目が入った。そこには最近ここらで人が次々に亡くなっているというものだった。しかし、そのほとんどが殺人、強盗などの悪事をはたらいているものが亡くなっているようだった。
「自分と同じことをする人はいるんだな」
そう呟いた。自分と同じ仕事をこなす人はそう少なくもない。だが、ここら辺で出てくるのは初めてだった。
 ご飯も食べ終わり席をたちお会計を済ませると家へ帰る道をあるいていた。その時、横を男が通った。普通の周りと変わらない男だったが何故か懐かしい感じがした。気のせいだろう、そう思い家へと戻った。
  玄関で靴を脱ぎリビングへと向かうとそこには一人の男が立っていた。それはボスだった。
「次の仕事だ」
 そういい出してきたのはいちまいの写真だった。それを受け取りその写真をよく見ていた。写真から読み取れるのは年齢は大体自分と同じくらいの16。身長は175とかだろう。自分より少し大きいくらいだ。
「分かりました。それで、こいつは何を犯したのですか?」
 いつもならすぐ答えるのに今回は何も言わなかった。自分は殺し屋でも、罪もない人を殺すのは趣味じゃない。だからいつもこの質問をしている。理由が無ければ殺そうとも思わない。
「何も犯していないのならば殺す必要は無いんじゃないんですか?」
「いいから殺せ」
 そう言い捨て出ていった。
「どうしようか」
 いつもなら殺す動機があるから殺すのだが動機も何もない。しかし、今回だけボスは物凄く目付きが鋭かった。何かあったのか、疑問に思ったが命令されたからにはこなすしか無かった。
 椅子に座りもう一度写真を見た。何か見覚えがある顔だったがそういうことは考えるなと言われて育ったためそれ以降は考えなかった。
 近くにあった資料にも目を通した。中卒で高校には通っていないようだった。それ以外は何も情報がなかった。その日はそのままお風呂に入り寝た。
 翌朝ランニングしに外に出た。まだ朝日が登ったばかりで人通りも少なかった。あの男を殺すのは夜。居場所も特定済みでいつでも殺れる。だが、朝は危険なため夜に殺す。そういうルールだ。
 時間になるまでは近くのカフェに行き朝ごはんを食べ、その後は家でトレーニングしている。飽きたら外に気晴らしに出かけた。歩いていると横を小学生が通った。女の子と男の子の二人で楽しそうに走っていった。それを見えなくなるまで見ていた。懐かしい感じがした。
 夜になり支度を済ませると家を出た。いつもは乗る気なのだが今回だけ乗る気じゃなかった。男がいつも通るという道に行き待ち伏せしていた。周りは人通りもなく絶好の場所だった。時間になり男が歩いてきた。予測通りだった。さっそく男の後ろを尾行し路地に来た時男の頭に銃を突きつけた。男は驚いた。
「動くな。動くと撃つぞ」
  男は何もせず手を挙げた。
「私は殺し屋だ。お前を今から殺す。その前にお前は一体なんの罪を犯した」
 本当は何も言わず一瞬で撃ちたかったが何を犯したのか知ってから撃とうと思った。
「…え……?僕は何も…」
 男はオドオドしていた。その声からは嘘を言っているようには見えなかった。殺すか一瞬迷った。
 迷った瞬間男が振り返り銃を同じように突きつけてきた。
「なんてね、君がここに来ることなんて分かっていた」
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