リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第3章〜恋愛編〜

第三の従魔

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しばらく、お互いに繋いだ手はそのままに、静かに寄り添い続けた私達。
とても重大な事実が発覚した。


「お昼、食べ損ねた。」


お腹が鳴りそう。
朝ご飯を食べてから、私はコクヨウが入れてくれたお茶しか何も口にしてない。


「ふふ、今から、アディライトが用意したお昼を召し上がりますか?」
「ん、お腹空いたから食べる。」


お腹がぺこぺこ。
アディライト、今日のお昼は何を作ってくれたのかな?
コクヨウと共にリビングへ向かい、温め直したアディライトお手製のお昼を一緒に食べる。


「はぁ、今日も美味しかった。」


お腹いっぱい。
今日のアディライトの手作りご飯も、美味しかったです。
きっと、それはコクヨウと何気ない話をして、一緒に笑い合って食べたから。
朝とは違う。
ちゃんと、美味しいと思えた。


「ディア様、食後のクッキーを食べますか?」
「・・・アディライトの手作り?」
「はい、そうです。ディア様のお好みの味のクッキーですよ。」
「ん、なら食べる。」
「では、どうぞ。」


私の口元へ差し出されるクッキー。
・・これ、は。


「ディア様、お口を開けて下さい。」


世に言う、良くカップルがするあーんって食べさせるやつですか!?
固まる私。
じっと、コクヨウに差し出されるクッキーを凝視する。


「ディア様?もしかして、アディライトが作ったクッキーいらないんですか?」
「た、食べる!」


が、なかなか口を開けられない。
・・はっ、


「コクヨウ、自分でーーー」
「ダメ、です。ディア様、クッキーが食べたいならちゃんと口を開けて下さい。」
「・・・。」


あっさりとコクヨウに遮られた、私の提案。
悪魔だ。
私の目の前に、可愛い顔をした悪魔がいる。
じっとりとした抗議の目を向ける。


「ふふ、ディア様、アディライトが作ったクッキーを食べたくないんですか?」
「うぅ、」


が、どうやら悔しい事に私の抗議の視線はコクヨウには全く効果がない様だ。
コクヨウに堪えた様子が見られない。
無念である。
だが、私はクッキーが食べたい。
アディライトが作ってくれた、私の好みの味のクッキーを。


「さぁ、ディア様?」
「・・・ふぁい、」


満面の笑みのコクヨウに負けた私。
羞恥心に身悶えながら、コクヨウが差し出すクッキーの為に口を開ける。


「ーーー・・餌付けって、とても楽しいですね?」
「っっ、!?」


目の前の悪魔は上機嫌に呟いた。
何とか羞恥心に耐えながら、クッキーを美味しく完食した私。
コクヨウと寝室に戻った私は、半目になる。


「・・・ねぇ、コクヨウ。」
「何ですか、ディア様?」
「・・・、この格好は、何?」


ベットの上に座る私の後ろから包み込むような格好でコクヨウに抱き締められている状態。
乙女なら、一度は夢見るシュチュエーションだろう。
が、私はとても恥ずかしいんですけど!?


「ディア様はこれから新しい従魔を作られるのですよね?昨日のように倒れられたら大変なので、こうして僕がディア様を支えているのですが?」
「ぐぬ、」


うん、正論だよ?
でも、この体勢は全く私が集中出来ないんだけど!?


「ディア様、僕の事はただの壁だと思い、集中なさって下さい。」


コクヨウの手で、目を塞がれる。
真っ暗になる視界。


「ーーー・・ね?ディア様。」
「・・・っっ、はい、頑張ります。」


壁って・・。
気にしちゃダメだ。
深く深呼吸をして、これから作る新たな従魔の事を考える。
うん、集中。


「次の新しい従魔になる子は、アスラと対になるような存在が良いかな?」


暇になった今日。
この余った時間を使って、私は新しい従魔を作る事を決めた。
ん、だけどーーー


「・・アスラさんの、対、ですか?」
「っっ、」


やっぱ、集中出来ない。
耳元で囁かないでよ、コクヨウ!
わざとなの?


「もう、ディア様の中では、どんな従魔か決めてらっしゃるんですか?」
「・・う、うん、それは決めてるよ。」


イメージは、ある。
後は、それを形にするだけ。


「じゃあ、さっそく作るね?新しい従魔、九尾をーーー。」


魔法が目の前に広がる。
呼ぼう。
新たな従魔、九尾を。


『ーーー私を、汝は欲するのか?』


ゆらり。
頭の中に、9本の尻尾が揺れた。
アスラの時もそうだったけど、作り出す従魔の種族のランクによって自我をはっきりと持っている様だ。
こうして、直接召喚する私に問い掛けてくるのだから。


『汝が私を欲する理由は何だ?』
「大切な存在を、守る為。」


私が強く、ただ心の底から願うのは、今ある皆んなの幸せと平穏。
それだけが、私の願い。


『だから、私の力が必要だと?』
「うん、貴方のその力を借りたい。」


その為の新しい力。
その為の新しい戦力。


『ーーー私の力を、誰かの血を流す為の道具として汝は欲するのか?』
「道具?いいえ、貴方は大事な仲間。道具として使わないよ。貴方が嫌な事は、何もしなくて良いの。」


私の従魔でも、対等でいたい。
誰かに虐げられる苦痛を、私は知っているから。
力で押さえ付ける事はしない。


『ふっ、良かろう。汝の心の内、しかと聞かせてもらった。』


コクヨウの手に塞がれた暗い視界の先。
九尾が少しだけ笑った気がした。


『では、人間の娘よ、私を心から強く欲せよ。』
「っっ、来なさい、九尾ッ!」


輝く魔方陣。
大量の自分の魔力を魔方陣へ流し込み、九尾を呼び寄せる。


「っっ、あっ、っっ、」


くらりと、目眩に回る自分の視界。
後ろから私を抱き止めてくれている、コクヨウの胸元にぐったりと凭れかかる。
コクヨウの思惑通りで癪だけどね。
でも、有り難い。


「・・大丈夫、ですか?ディア様。」
「ん、」


億劫だけど、目を開ける。
コクヨウの手が外され、クリアになる私の視界。


「あっ、九尾・・?」


ベットの下に静かに座る、九尾の姿があった。


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