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連載
愛馬を紹介
しおりを挟むエリシアは笑うと目が細くなって猫っぽい愛嬌がある。貴族だけれど気取ってなくて、わりとのんびりとした雰囲気もあった。
彼女の出身が辺境伯家というのも関係するかもしれない。
かつては戦線の一部だったが、今は隣国と仲も良い。ここ数代はのんびりした田舎だという。
「そういえば、まだ二人が来ないね。カミーユはずぼらだけど、ビャクヤはしっかり者なのに」
「ニコイチで扱われがちだから、カミーユのポカにビャクヤが巻き込まれたのかも」
剣術や馬術と言った実技は得意だが、座学になるとてんでポンコツ化するカミーユ。そんな彼に文句を言いつつも、フォローをしていたのはビャクヤである。
「シンの騎獣を見に行った後でも、温室にきてなかったら様子見に行こうか」
「行きたいけど、あの二人がどの講義を取ってるか知らないんだよ」
「あ、私も知らない」
シンは普通科、エリシアは貴族科である。
たまに廊下で鉢合わせたりしているが、基本は温室かお昼休み、放課後の部活時間しか会っていない。
しかも、錬金術部は現在休止中。メンバーの女子生徒たちがズロストに交換留学という名の買い付けに向かっている。
これを機に古い道具を修理に出し、それも無理なら入れ替えしなければいけないと見積もりを出しているのだ。
ちなみにシンは温室の畑を維持し、そこから食料提供をしているので、そちらに専念させてもらっている。
「それじゃ探すの難しいか。ここ、キーファンより広いもの」
「だよなー」
半年以上通っているシンだって、まだ全容を把握しきれていない広大な校舎である。エリシアなんて、迷わないように歩くので精いっぱいだ。
結局二人を探すのを諦めて、厩舎に向かう。
そこではデュラハンギャロップのグラスゴーが、今日も近くのグリフォンと睨み合いをしていた。
間に挟まれているジュエルホーンのピコは、のんびりと飼葉を食んでいる。
グラスゴーとピコはシンに気づくと、同時に顔を上げてキラキラとした視線を向けてくる。
「ねえ、黒馬のほう……さっきすごい怖い顔してなかった?」
「二頭とも強いから喧嘩しがちなんだよ。間にいる騎獣は巻き込まない良識はあるみたいだけど。
黒馬のほうがグラスゴー、鹿毛がピコ」
シンは念のため、グラスゴーの手綱は握っておく。
いつもは来ない時間帯にシンが来たものだから、嬉しくて喜びが爆発している愛馬たち。左右からベロベロと舐められまくる。
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