やがて目は覚める

レモン飴

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第1幕 やがて目は覚める

悪夢10

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 気がつくと、僕は小さな公園のベンチに座っていた。

 色が付いているのは公園の中だけで、その外側は何もなく、真っ白だ。

 小さな公園には、ブランコと滑り台とパンダのスプリング遊具があって、それらが全部見渡せる位置に小さな藤棚があり、ベンチはその藤棚の下にあった。

 風があるのか、藤の葉っぱとツルが、ゆるやかに揺れる。

 昔、生まれ育った田舎では、小学生以下の子供らは、年齢に関係なく一緒に外で遊んだものだったが、あいつらは今頃どうしているだろうか?

 あいつらがどうしていようと、特に興味も無いのだが。

 僕はブランコが2つあるうちの片方に腰掛けて、ほんの少しそれを揺らした。

 整備の行き届いていないブランコは、座面の板のペンキが剥げているし、持ち手の鎖は錆びていて、薄い色の服など着ていたら、錆びの色が付いてしまいそうだ。

 滑り台も滑ってみたが、考えてみれば土埃にまみれている。

 パンダのスプリング遊具も同様で、あの頃、公園で遊んでいて何が楽しかったのか、よくわからない。

 外で遊んで来いと言われては、服などを汚して来たと言って怒られ、家で遊べば、ゲームばかりしていると言われていたような気がする。

 子供の頃は親と周りの都合が良くなるように生きて、大人になったら世間と周りの都合が良くなるように生きて、しょうもない人生だ。

 僕は音も無く、格好だけため息をついた。

 いつの間にか、好きなことも、楽しみも見失った。

 空っぽだ。

 ふと見ると、滑り台の土台に小さな扉がある。

 あんな扉があっただろうかと思って近づいてみると、そこには張り紙がしてあり、「開けるな、キケン」と書かれている。

 僕は、その小さな金属の扉を指で弾いてみた。

 しかし、手ごたえは無く、空っぽのようだ。

 やめておけばいいのに、僕は小さな扉を開けた。

 中身はやはり空っぽで、真っ黒な空間があるだけだった。

 なんだ、なにもないや。

 ホッとした次の瞬間、首にいやな感覚がして、僕の体と頭は別々に地面に落ちた。

 空っぽの中に、鬼って住んでいるのか?

 藤の花が美しく咲いて、ゆるやかに揺れている景色を何秒か眺めて、僕の視界は真っ暗になった。

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