小川流2018燕改革!

「96敗」のチームを再建するために、
私たちは今、何をすべきなのか――

2018.03.30 公式 小川流2018燕改革! 第1回

組閣の目玉、宮本慎也ヘッドコーチ就任を自ら直訴
監督として「厳しさ」と「自主性」のバランスを見ていく

――小川監督就任の最大の目玉として、「宮本慎也ヘッドコーチ誕生」が大きな話題となりました。これは小川監督の希望で実現した人事ですか?

小川 そうです。チームの雰囲気を根本から変えていくためにはいろいろな方法があると思います。でも、僕が最初に考えたのは「チームにもっと厳しさを」ということでした。そこで頭に浮かんだのが宮本でした。彼はヤクルトのOBで、チームに愛着を持っていますし、選手時代からすごく広い視野を持っていて実績もある。もちろん、野球理論もしっかりしています。まさに打ってつけだと思いました。

――どのように、宮本さんを口説いたのですか?

小川 「来年、チームを変えるためには宮本の力が必要だから、ヘッドコーチとしてお願いできないか?」って、ストレートに伝えました。最初は明治記念館で2人きりで食事をして、直接伝えました。その場では「少し考えさせてください」という返答でしたが、その後球団社長と話し、最終調整をした上でヘッドコーチ就任が決定しました。

――宮本さんの招聘は、ヤクルトに「厳しさを注入すること」を目的とした部分もあると思うのですが、ヤクルト特有の「ファミリー球団」ならではの長所と「厳しさ」のバランスについてはどのようにお考えですか?

小川 考え方はいろいろあるとは思うんですけど、「厳しさ」だけではダメだと思います。宮本だけではなく、今季から就任した河田雄祐外野守備走塁コーチ、石井琢朗打撃コーチについても同じです。本当に「いいコーチに恵まれたな」と手応えを感じていますけど、彼らとともに、厳しさと自主性を尊重する部分のバランスをきちんととるつもりです。

――そのために、監督としてはどのようなことを意識されますか?

小川 僕が一番気を遣わなければいけないのは、まさに厳しさと自主性のバランスだと思っています。もしも、コーチたちの「厳しさ」が逆の方に突っ走ってしまったらよくないなと思っているので、一歩引きながらも、その部分は目を光らせて、ときには「ストップ」をかける必要もあるのかもしれないと思っています。

――「逆の方」というのは、「厳しさ」が行き過ぎてしまって逆効果になる、という意味ですか?

小川 そうです。コーチと選手とのやり取りの間で、うまく舵取りをするのが僕の役目だと考えています。そのためには、前回監督を務めていたとき(11~14年)と比べて、選手たちとは距離を置くつもりです。コーチが厳しく接しているのに、僕が優しく接するのはちょっと違うと思うので……。

――子育てでよく見られるケースですが、母親が厳しく接しているのに、父親がいい顔を見せようとして甘やかしてしまい、何も効果が得られない。そんな事態に陥りかねない?

小川 はい、ただ、僕まで一緒になって厳しさを押し出すのは「どうかな?」と思いますし、選手も逃げ場がなくなってしまうので……。ここは客観性とバランスを大切にして、一歩引いて見守りたいです。宮本に「厳しさ」を託している以上は、それが僕の仕事だと思っています。宮本には、彼の持ち味を存分に発揮してもらいたいので、彼が自由にできるようにしていくつもりです。

――次回は、さまざまな課題を克服するために「春季キャンプで取り組んだこと」、「開幕を迎えて意識していること」などを伺いたいと思います。

小川 わかりました。次回もよろしくお願いいたします。

 

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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