東京女子医大、戦後初「医科大学破綻」も現実味…病床稼働率5割の危険水域

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東京女子医科大学の公式サイトより

 経営不振に加え、先月には一般社団法人法違反(特別背任)容疑で警視庁による家宅捜索を受けるなどして渦中にある東京女子医科大学。15日付「読売新聞」記事によれば病床稼働率は約5割にとどまっているといい、この状況が続けば経営破綻も現実味を帯びてくるため、その帰趨に注目が集まっている。

 臓器移植や心臓外科などで豊富な実績を持ち定評があった東京女子医大だが、その経営が悪化し始めたきっかけは2度にわたる医療事故だった。2001年と14 年に患者が死亡する医療事故を起こし、厚労省から特定機能病院の認定を取り消され、私学助成金も減額。患者が大幅に減少し経営が悪化していたなかで、19年度に理事長に就任したのが創業者一族である岩本絹子氏だった。経営再建と称して賞与の大幅削減などに取り組む一方、設備の建て替え・新設に資金を投入。20年には経営悪化を理由に職員の一時賞与をゼロにすると発表したことを受け、約400人の看護師が一斉に退職する意向を表明。同年には理事室を新校舎の彌生記念教育棟に移転させる費用として6億2000万円を計上している疑いが発覚し、職員からの反発に拍車をかけた。

 結局、同学は賞与を支払うことに決め、看護師の一斉退職が免れたものの、21年には約100人の医師が退職するという事態が発生(同学附属の3病院合計)。背景には大幅な給与カットがあった。

「経営悪化を受け、21年度入学から学費を年間200万円、6年間で計1200万円値上げした。一般的に私立大学の医学部・医科大学は偏差値と学費の高さは負の相関関係があり、偏差値が低い学校ほど学費が高くなる傾向がある。08年度から学費を大幅に引き下げた順天堂大学医学部が現在では私立大学医学部御三家と肩を並べるほどのトップレベル校になった事例が、それを如実に物語っている。医療界における女性の地位向上を理念として掲げてきた東京女子医大だが、この学費大幅値上げは、その理念とともに“名門女子医大”という看板を捨てたことを意味する」(都内の医師)

至誠会に特別背任の容疑

 さらに東京女子医大のブランドを傷つける事態が発生。一部の卒業生らが23年3月、岩本理事長を背任容疑で刑事告発し、これを受け警視庁は、岩本理事長が昨年4月まで代表理事会長を務めていた同学の同窓会組織である一般社団法人・至誠会に特別背任の容疑があるとして、同学本部などへの家宅捜索を実施した。

 3月30日付日本経済新聞によれば、至誠会の元職員は同学の経営統括部に勤務していた20年5月~22年6月に約3300万円の給与を受け取っており、20年5月~22年3月に至誠会側からも勤務実態がなかったにもかかわらず約2000万円の給与を得ていた疑いがある。同学の経営統括部は岩本理事長が理事を務めていた。大学と至誠会の発注工事を巡っては、また、元職員が関係していた会社に対し、同学と至誠会が発注した工事の元請け業者から1億円あまりが流れていた疑いも持たれている。

 岩本理事長をめぐっては以前から不正な資金の流れが指摘されてきた。22年に「文春オンライン」は、至誠会が勤務実態がない職員に給与を支払っていた疑いや、至誠会の職員を同学に出向させて給与として多額の水増し・架空請求をしていた疑い、さらには、自身が支援する元タカラジェンヌの親族企業に同学から1億円もの業務委託料を支払わせ、かつ自身の甥を同社の運転手として契約させていた疑いなどを報じていた。

「要は岩本理事長が懇意にしている人物を大学や至誠会に職員として送り込み、その人物や関係企業を隠れ蓑(みの)として大学・至誠会から自身へカネを還流させていたのではないかという疑いだ」(全国紙記者)