タカシの異世界無双計画　～銃と仲間と異世界と～

　コンビニに買い物に行った帰り道のことだ。公園の入り口からボールが道路に向かって飛び出し、そのボールを追って、子供が道路に飛び出した。当然のようにそこに大型トラックが走ってくる。

　こんな状況の時は、ジャージという軽装は動きやすくていい。「危ない！」俺は、反射的に道路に飛び出し、体当たりで子供を弾き飛ばした。そのおかげで子供はひかれずに済んだ。あとはそのまま反動で体を回避すれば大丈夫……のはずだったのだが……

　トラックは、俺が逃げる方向にハンドルを切ってきた！　よけられないっ！

　……てなわけで、俺は即死した。最後に人のためになる事ができて、良かったと思う。しばらくして、俺の意識は黒い霧のかかった空間を見ていた。意識がある……じゃあ、ここが死後の世界ってやつなのか……。

　──ここは天国？　それとも地獄？──

　突然、目の前に骸骨が現れた。これが、死神というやつなのか……。その骸骨は、突然、俺に話しかけてきた。

「人付き合いが苦手で引きこもりがちなタカシ君！　おめでとう！　君は転生者に選ばれました。なので、生き返ることができます！」

　なんだこのなれなれしい骸骨は！　それに……

「転生者？　どういうことだ？」

　──なぜ俺が選ばれた！？

 どう見てもこの骸骨はあやしい。だが、自分が死んでいるのも事実だ。なので、一応耳を傾けてみることにした。

「詳しいことは、転生してからのお楽しみ！　転生先はなんと……」

「転生者？　転生って……」

「異世界です！　それと君にはこれをあげよう」

　その骸骨は、口を顎が外れるぐらい大きくあけて、中から銃を出した。

「『仲間銃』！　これに撃たれた人は、君の仲間になるんだ。どうだ、こんなすごい銃、見た事ないだろ～」

「仲間銃？」俺は、おそるおそるその銃を手に取った。形はコルトガバメントという、昔、知り合いが持っていたエアガンに似ているが、実際のところ、拳銃には詳しくないので、よくはわからない。ただ、そんな形の銃だった。これで人を撃つと仲間になる。それに何の意味があるのだろうか。

「じゃあ、いってらっしゃーい。それでは、グッドラック！　ケタケタケタ」

　骸骨は、そう言うと、バラバラに崩れて消失した。その瞬間、俺は激しい光に包まれ、辺りは真っ白になった。



　気が付くと、視界に中世ヨーロッパのような風景が広がっていた。馬車が行き交い、様々な人々が忙しそうに動いていた。さらには、ゲームやアニメでしか見た事のない人々をも目にする。おそらく、亜人というものだろう。

「ここが……異世界？」

　ふと、自分の体を確認する。体や服装は、死んだときのままだった。転生というより、死ぬ前の姿で転移したような状態だ。

　もうここは別世界だ。だが、恐らく慣れ親しんだ漫画やアニメ、ゲームなどは、ここには無いのだろう。しかし、それ以上に、俺はこの不思議な世界にワクワクしていた。まるで、知らない場所に初めて旅行へ行った時の……そんな気持ちになっていた。

　町の風景を眺めながら、石畳の路地を歩いていた。すると、花壇の端に座って泣いている少女を発見した。ゴスロリツインテールの金髪美少女だ。

　これは何かのめぐり合わせか、と勝手に思い込み、俺はその少女に近づいた。そして……。

「あ、あの……なんで泣いてるの……」勇気を振り絞って話しかける。…………だが、反応はなかった。

　少々ショックを受けたが、もう一度トライしてみた。

「どうして、泣いているんだい？」

　少女は、俺の声に反応してこちらを見たが、嫌な顔をしてすぐ目を反らし、また泣き始めた。

　こう立て続けにショックを受けると、少々キツイ。諦めるしかないのか──この世界でも俺は空気のように生きるのか──せっかく異世界にきたというのに、これじゃあトラウマが増えるばかりだ。

　俺は、こっそりと、その場を立ち去ろうとした。その時だ。ポケットから何かが落ちた。よく見ると、それは、骸骨がくれたものだった。

　──仲間銃──

「たしか、『これに撃たれた人は、君の仲間になる』って、あの骸骨は言ってたな」

　俺は、ゆっくりと落とした銃を拾い上げる。あの骸骨の話が本当なら、この少女は仲間になるはずだ。

　銃をしっかり握る。そして、泣いている少女に銃口を向け、ゆっくりと引き金を引いた。銃は大きな音を立て薬莢を飛ばす。そして玉ではなく、光線のようなものが銃口から飛び出し、泣いている少女を直撃した。

「キャー！」

　彼女は悲鳴を上げ、感電したようにその場に倒れた。そして、ピクリとも動かなくなった。

「え……これってまさか……」

　──死んで……ないよね……！？