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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

53.学園始まって以来の特例

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「ピッピッ」
 学校の教室に切り替わった。刺激的しげきてき香辛料こうしんりょうの匂いが
した方向に目を向けると日本の国民食こくみんしょくと言われるカレー
ライスが自身の机の上に置かれており、給食タイムであ
る事が分かった。トレイには一口カツとフルーツ入りの
サラダが入っており、サラダに関しては、甘いリンゴと
マヨネーズの組み合わせに文句を言って一切手を付けな
い連中がいた。ライスが入ってる器は白いプラスチック
容器だったのでルーが入ってる薄黄色い容器にライスを
投入とうにゅうして、その上にカツを載せるて食べるのが男子の間
で流行っていた。

 三分の一を食べ終わると放送部から飛び込みのめずらしい
ゲストが登場しての話があるという。
「そのゲストは校長先生です!」
 放送部で話したことなど一度も無かったと記憶してい
る上級生達も一斉に耳を傾け始める。
「紹介に預かりました校長です。朝礼中には言えなかっ
た事がありまして、この時間をお借りして全生徒に伝え
る事があります」
 もちろん、タカフミのクラスも例外ではなく興味津々きょうみしんしん
な顔で内容を今か今かと待っている。
「ゴホンっ。小学4年生の大山タカフミ君についてだが
最近、母方の祖父いさんが亡くなって寂しい想いをして
ると父兄ふけいから手紙を預かりまして、その手紙の中にあっ
た写真を拝見はいけんした所、私の小学時代の同級生だと判明はんめい
ました。彼には大きな借りがありまして、誠に個人的な
理由ではありますがまごであるタカフミ君に小学4~6年
の間は銀貨の付いたペンダント式ネックレスを身に着け
て登校する事を全面的に許可する事にしました。教師に
も特例として説明してあるのでタカフミ君に危害きがいを加え
ないようにお願いします! 以上、校長でした」

「……」

 カードゲームや携帯電話でさえ、学校に持ってきて、
見付かった時点で卒業そつぎょうするまでの期間、没収ぼっしゅうするという
厳しい校則があるにも関わらず、特例が出たのだ。低学
年はともかく中学年~高学年の生徒は、この特例にしば
らく言葉が出なかった。目が点になって天井を見上げる
者が多かったと後に語られる程だった。
 


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