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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

67.霞実先生の告白②

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「そしたら三日目位から彼氏のほほがこけてきたりして、
体重が落ちてしまったのよね」
(そりゃ普通そうなるだろう)
「で、5日目位から後頭部の辺りが円形脱毛症えんけいだつもうしょうになって
きて原因がよく分からないの?」
(どこまで天然なんだよ)
「で、一週間後にテーブルに書置きが置いてあって荷物
も何もかも無くなってたの」
「何て書いてあったんですか?」
弱々よわよわしいかすれた字で探さないで下さいって」

 明石は心の声で呟く時は頷いたりして会話を引き出す
ように努めていたが中学一年間で身に着いたスキルだ。

「別れも何も決めてないのに探さないで下さいって一方
的に突きつけられても心の整理が付かないから、追いか
けて行った訳なの」
「どうして居場所がここだと分かったんですか?」
「彼の大事にしてる青い目のサムライと呼ばれてる空手
家のフィギュアにGPSを埋め込んで置いたの」
(それ、もう犯罪だから。はっきり言って怖いレベル)
「再会したのが公道だったんだけど彼は直ぐに土下座
して別れて下さいって言ったわ」
(それは大正解です)
「そして私は彼にこう言ったの。別れるのは納得すると
して誰か紹介してくれないと別れないよってね」
(何、ご都合主義な。その紹介システムは……)
「どう、理解できた?」
「何となくではありますが」
「ヤンチャ系も好きだったんだけどサンドバッグを叩く
と全員引いちゃうから走り屋系の彼氏にしたのっ」
「それは良い考え方かもです!」
(全くの別ジャンルだから感動してくれる人が居るかも
って現実はそんなに甘くない。俺はこの人とは、先生と
生徒の関係以上の事を望まない事を心に誓って現状維持げんじょういじ
つまりは”STAYステイ”と力強くとなえた)
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