おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第1章 最果ての少女

その時みんなは1

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勝利を確信していた狼魔族ラルは、突如としてトトリに現れた巨大な蛇を見て顔面蒼白となっていた。
あれが何かは分からない。
しかし魔族特有の魔素を感知する第六感が、あれが神話級の化け物だと警笛を鳴らしている。

「な………な…んだ、あれは」

魔繰玉で操っていた魔物たちも、その歩みを止めていた。
分かるのだ直感で。
あれに近づいてはならないと。
洗脳も解けるほどの異常なまでの圧力。

誰もがその踵を返したいというのに、足が動かない。

「なんだってんだよ!
 あんな化け物が眠ってるなんて聞いたことも無いぞ!!」

それはそうである、実際にウロボロスはあそこに住んでいるわけではない。
水があればどこにでも出現可能で、ちーちゃんに呼ばれて顔を出しただけなのだから。

「「「「!!!」」」」

魔物たちは大きな魔力の流れを感じる。
世界中に満ちている魔素。
それが大量にあの蛇の魔物に集まっていっている。

「俺があんたに何かしたっていうのか…」

与えられる天罰に対して為す術もないラルは、呆けた顔で街を眺めていた。



カッ!!!!



一筋の閃光がラル達に向かって放たれる。

(終わった)

轟音とともに砂が巻き上げられ、自分の体がどうなっているのか分からない。
体の表面をいろんな感覚が襲う。

目を開けると地面が上に見えた。
魔物たちも同様に宙に巻き上げられている。

自分たちいた前方100m程のところには、どんな攻撃を放てばそうなるのか、深さ5m以上、長さ1kmにわたる窪みが出来ていた。

直撃していれば、塵ひとつ残らなかっただろう。

体は重力に引かれ地面へと打ち付けられる。
砂の地面と言えど、高所から落ちれば衝撃はすさまじい。

頑強な魔族の体といえど、骨が数本折れている。

(ぐっ…か……。
 生きている。
 あの蛇の化け物は攻撃を外したのか?)

いや、あの化け物がそんなミスをするわけない。
自分たちは見逃されたのだ。

まるで母親に、悪い事は駄目だと諭されるように、慈悲をもって。





ドスンドスンと、次々に落ちてくる魔物。
体が動けるようになると、急いで自分たちの巣へ駆け戻っていく。

数分後には砂まみれになったラルだけがそこにいた。

「ははは、無理だろあんなの。
 魔王様だって敵わないようなやつ、どうしろってんだ」


砂の上に倒れ込み、ラルは意識を手放した。


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