おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2章 彷徨う森

知恵の実

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今や失われた伝承。

神は自らの楽園にふたつの果実を樹を植えた。
ひとつは知恵の実が成る樹。
ひとつは生命の実が成る樹。

御使いのひとりが誤ってふたつの実を地上へと落としてしまった。

神は激怒した。
御使いの体をふたつに裂き、二匹の獣へと変化させた。
そして地上に落ちた二つの実を永遠に守護しよと命じた。

人の手に渡ってはならぬもの。

そのふたつの実を手に入れた者は『真理の扉』を開くだろう。
そのふたつの実を手に入れた者は、神にも届かん存在となるだろう。

だが、決して手を出してはならぬ。
それは神への反逆。
怒りを買い、裁きが下ることであろう。



「…といった、言い伝えがあるのだ。
 古すぎて失伝してしまっているがな。」

ちーちゃんは話を聞いていたが、やはり首をコクリと傾げた。

「わかんなーーい。
 アリスお姉ちゃん、難しいね」
「そうだぞ、もっとかみ砕いてくれ。
 結局その真理の扉とは何なんだ?
 神様になれるかもしれないって、強くなれるってことか?」

アリスはその質問を聞くと、目を閉じた。

「それは分からん。
 誰も達していないのだから、わかるはずもなかろう」
「なんだよそれ、そんな曖昧なもの探してどうするんだよ」
「仕方なかろう、古すぎて情報がないのだ。
 いや、何かわからぬからこそ希望があるんだ。」
「貴公等、落ち着きなさい。
 確かに知恵の実は存在すら確認されておらぬ、おとぎ話のようなもの。
 しかし現実にあの獣は存在しておる。
 真理の扉と言うのじゃから、何かしらの知識が得られるのじゃと儂は考える。」

ツラツラと自らの仮説を話し始めるガイランド。
三人は何となくガイランドのことが分かりはじめ、しばらくの間放っておくことにした。



「そういえば儂の要件を伝えるのをわすれていたな。」

三人は食事を終え一服していたところであった。
話が散乱しすぎて、みんな忘れていた。

「そういえば何か用があったんだったな」
「ガイランド殿聞こうではないか。
 いや、大体は予想がついているが」
「うむ、アリス殿。
 貴公の想像通りであろう。
 儂は貴公等に、聖獣討伐の協力を仰ぎたい!!」



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