おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2章 彷徨う森

アリスの求めるもの

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「じいさん、それで俺たちの食料食ってまで待っていた理由は何なんだよ。」
「うむ、久々にまともな食事をした。
 礼を言うぞ若者たちよ」

態勢を元に戻し、横柄な態度で礼を言うガイランド。

「貴公等もみたであろう、聖獣を。」
「ああ、ってことはあんたもしってるのか」
「勿論だとも。
 300年もいるのだぞ、しらぬわけがなかろう。」
「じいさんは何か知ってるのか、あいつのことを?」
「うむ、まあな。
 こう見えて儂は読書家でな。
 ここに捕らわれる前は一日五冊は本を読んどった。
 中でもおすすめなのはチュルシー・ベルバの著書『ルリカ哲学』でな、冒頭の文言が実にいい。たった一行込められたあの…」
「おっさん。
 おっさんの読書自慢はいいから、あいつのこと…聖獣のことを教えてくれよ」

話を途中で止められ少し不機嫌な顔をするガイランド。

「うむ、儂が『大陸落とし』として名を馳せていた頃。
 とある一国を落としたのだが、王家というのはどこでも独自の伝承というか、古い情報を隠し持っておるものでな。
 その国にも古い書物が多く隠されていたのだよ。
 そのなかのひとつに、こんな記述があった。」


その獣、神の御使いなり。
地上に実る神の果実を守りし聖獣。

白の獣は知恵の実を。
黒の獣は生命の実を。

何人たりとも、彼の地へ足を踏み入れてはならぬ。

聖獣は理より外れし生命。
我らの力は決して及ばぬ。
我らの理解ら決して及ばぬ。

怒りに触れれば、我らに災厄が降りかかるであろう。



「とな。」

その言葉を聞き、アリスは目を見開いた。

「…ガイランド殿、その話は真であるか?
 聖獣が守っているあの樹こそ、知恵の実の大樹だというのか?」

アリスの驚き方にガイランドは目を細めた。

「そうじゃ、あの樹こそ神葉樹。
 そしてあの聖獣は知恵の実を守っておる、これは確実じゃ。
 貴公もしや知恵の実を探しておる口か?」

アリスは少し俯き、意を決するようにガイランドを見つめる。

「ああ、確かに。
 私は神の果実を探している!」
「言っても無駄だとは思うが、人の手に余る代物ぞ、あれは。
 過去の王達が誰しも望み、誰もが例外なく死んだ。
 神の果実と聞こえはいいが、その実あれは悪魔の実だ。
 それ故、歴史は彼の存在を抹消した。」
「わかっている、そんなことは百も承知だ。
 だが他に縋るものがないのだ。
 奇跡に賭けるしか、私にはないのだ!」

悔しそうに拳を握るアリス。
それをみてガイランドは、諦めたようにふっと笑う。

「好きにするがいい」



「あのー、お話の途中わるいんだけど、知恵の実ってなに?」
「なあに?」

ラックとちーちゃんは首をコテンと傾げた。

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