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第2章 彷徨う森
魔王軍参謀ガイランド
しおりを挟む「はーっはっはっは!
冗談が上手いな貴公等は!
儂の名を知らぬなんて、そんなことあるはずなかろう」
三人の反応を冗談と取ったガイランド。
しかし三人は首をひねるばかり。
いくら思い出してもその名前に聞き覚えはなかった。
「……え、ほんとに?」
コクコク。
「いや、確かに時間はそこそこ経ってるかも知れないけど、ひと大陸を落とした大魔族だよ?」
「すまないが、知らない。
ラックは知ってるか?」
「いや、しるかよ!
大体、魔王軍の参謀はナイランってやつだろう。
少なくともガイランドなんて名前の魔族、魔王軍の将にはいないはずだぞ。」
「ホワーーイッ!!
儂がいない間に魔王様は儂を解雇なされたのだな!!
確かにこの森に取り込まれて約300年も経ったかも知れぬ。
しかし世界の覇権を握るまでもう一歩だったではないですか魔王様!!」
おーいおいと泣き出すガイランド。
そんな彼に追い討ちをかけるようにアリスが告げる。
「あー、すまないがガイランド殿。
もしやあなたが言っている魔王とは、金鎧の魔王アルフのことか?」
「当たり前であろう、魔王と言えば御方しかおるまい!」
「おっさん、その魔王は120年前に倒されてるよ」
「ショッキング!!」
ガイランドはショックのあまりのけぞり後頭部を地面へ突き刺した。
「なんたること!
儂がこのような森の中で手間取っている間に、そのようなことがあったとは!」
「いや、よく300年この森で生きてられたな」
地面に頭を串刺した状態で、ガイランドは目線だけをラックにむける。
「ふむ、儂は高性能でな。
基本は水さえあれば生きていける。
それに鳥などの空から飛来する動物はここにも存在するからの。
300年か。
決して短くはない時間であった。
して、今の世界はどうなっておるのだ?」
「ん、ああ。
120年前に先代魔王が勇者に倒された後しばらくは平和だったが、100年くらい前に今の魔王が現れて、それからは膠着状態だ。
魔王軍の侵攻度は全体の2パーセントくらいだろう。」
「なんと、そこまで!?
かつては世界の半分を手中に治めたというのに!
やはり儂がおらんことには」
ぶつぶつと独り言を繰り出し始めるガイランド。
「なあ、本当にこのじいさんは元・魔王軍参謀なのか?
俺にはどうにも信じられないぜ」
「確かに別大陸だが、魔王軍に制覇されたという歴史はある。
しかし詳細は残っていなくてな。
一概に嘘とも言えんだろう」
いつまでも地面に突き刺さる魔族のじいさんを見ながら、「いや、やはり考えすぎかも知れんな」と思い直すアリスであった。
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